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主な新興国/米国経済ニュース(10月8日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

EU、ロシア天然ガス大手ガスプロムに制裁金か―競争法違反容疑で

EU(欧州連合)のホアキン・アルムニア欧州副委員長兼競争担当委員は先週、リトアニアで開かれた独禁法関連の会合で、ロシア国営天然ガス生産・供給大手ガスプロムが中東欧で、天然ガス供給上の同社の独占的地位を利用して、不等な価格設定や天然ガスの再販売を禁じるなど欧州競争法に違反している疑いがあることから、制裁金の支払いを含めた異議告知書(競争法違反の疑いに関する欧州委員会の暫定的な見解)の準備を開始したことを明らかにした。モスクワ・タイムズ(電子版)などが伝えた。

同委員によると、昨年9月から1年間にわたって、ガスプロムがロシア産天然ガスを供給しているエストニアやラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリアを対象に競争法違反の疑いで調査を行ってきたとしている。最近でもリトアニアはスウェーデンのストックホルム商業会議所仲裁裁判所に対し、ガスプロムが天然ガスの価格を不当に設定したとして、20億ドル(約1940億円)の損害賠償金の支払いを求めている。

EUは異議告知書で、ガスプロムに対し、全世界の売上高の10%に相当する109億ユーロ(約1.4兆円)の支払いを求めると見られているが、チェコの日刊紙プラハ・デイリー・モニター(電子版)によると、アナリストは、EUとロシア政府がガスプロムの商慣習を改めることで合意する可能性が高く、その場合、ガスプロムに対する制裁金はそれほど多額にならない可能性があると指摘している。

ガスプロムの天然ガス輸出は、欧州全体では市場全体の25%を占めるが、中東欧のチェコでは69%と極めて高く、ガスプロムの市場の寡占化が進んでいるのが実態だ。

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ポーランド中銀、金融政策委員会のギロフスカ委員が辞任―健康上の理由か

ポーランド中央銀行の金融政策委員会のズィタ・ギロフスカ委員が辞任した。これは、先週末にブロニスワフ・コモロフスキ大統領のウェブサイトで明らかにされたもので、すでに同委員の辞表は受理されている。

地元週刊紙ワルシャワ・ボイス(電子版)が7日に伝えたところによると、辞任の理由については明らかにされていないが、地元ラジオ局は同委員の辞任は健康上の理由によるものだと報じている。同委員は2013年初めや2012年半ばにも健康上の理由で、金融委員会を欠席していた。

ギロフスカ委員はタカ派(インフレ重視の強硬派)で知られ、これまで、2012年12月の利下げだけは賛成したが、2013年に入ってからは利下げに反対し続けている。同委員の後任は3カ月以内に決められなければならないが、大統領報道官は近いうちに後任が発表されると述べている。

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住友商事、インドネシアの地熱発電所の土木工事を受注

住友商事<8053.T>は7日、インドネシア国営石油大手プルタミナの地熱発電子会社、プルタミナ地熱エネルギー(PGE)から発電出力3万5000キロワットのカモジャン地熱発電所5号機の土木工事の契約を受注したことを明らかにした。

同発電所は西ジャワ州ガルットにあり、インドネシア大手エンジニアリング会社のレカヤサ・インダストリと共同で工事を請け負うほか、熱蒸気タービンや発電機は富士電機<6504.T>が製造・納入し、発電所と集蒸気配管の土木・据え付けはレカヤサが担当する。工期は23カ月で、2015年7月の完工予定。

インドネシアは世界最大の地熱エネルギー保有国で、発電出力換算で2900万キロワットの資源賦存量に達すると推定されている。現在、地熱エネルギーの発電への利用率は約5%、発電出力で約134万キロワットにとどまっているが、インドネシア政府は2010年に発表した第2次電源開発計画で400万キロワット規模の新規地熱発電プロジェクトを計画している。

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ベトナムIT最大手FPT、ホーチミンに先端技術研究開発センター建設へ

ベトナムIT(情報技術)最大手FPTコーポレーションは傘下のソフトウエア・テクノロジー・センターを通じて、ホーチミンに有望なIT技術者を集めて、先端技術の習得や開発を目指すITセンターを建設する計画だ。ベトナム通信(電子版)が7日に伝えた。

すでに、ホーチミンのハイテク地区の管理委員会から先週末にITセンターの建設許可を得ている。FPTでは、このITセンター建設プロジェクトで、ロボットや人工知能、インテリジェントソフトウエア、インターネットを使って様々な機能を提供するクラウド・コンピューティング、ネットワークインフラ、情報セキュリティなどの分野に投資を集中したい、としている。ホーチミンのハイテク地区にはすでに今年5月に、ソフト世界最大手マイクロソフト<MSFT>が研究センターの立地を決めている。

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米百貨店メーシーズ、中国でのオンラインショッピング事業拡大計画を一時凍結

米百貨店チェーン大手メーシーズ<M>は、今年春に予定していた中国でのインターネットを使ったオンラインショッピング事業の拡大計画を一時凍結する方針を決めた。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が6日に伝えた。

同社はオンラインショッピング事業の拡大に備えて、昨年5月に、中国の小売り会社ビップストアと資本・業務提携し、少数株主となっている。メーシーズの広報担当者は、一時凍結決定は、中国の最近の経済成長率の鈍化やぜいたく品に対する中国の消費者需要に対する懸念ではなく、あくまでも中国でのイーコマース(電子商取引)事業についてよく検討する必要があるためとしている。

メーシーズは現在、中国でオンラインショッピングをすでに行っているが、対象品目が限定されている。同社の広報担当者は、現時点で中国市場でのシェアを拡大する計画はない、と指摘している。

中国でのイーコマース事業は競争が激しく、最近でも米百貨店チェーン大手ニーマン・マーカス・グループは昨年12月に中国本土に商品の保管・発送倉庫を建設しオンラインショッピング事業を開始したものの、今年に入って倉庫を閉鎖している。また、中国ポータルサイト大手ワンイ(NetEase)も1月にぜいたく品を販売するショッピングサイト「ワンイ・プレミア(NetEase Premier)」を1年足らずで閉鎖している。

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米ジェフリーズ、アップルの投資判断と目標株価を引き上げ―業績期待で

米投資銀行ジェフリーズは7日、米IT大手アップル<AAPL>の投資判断を「ホールド(待ち)」から「買い推奨」に引き上げるとともに、目標株価も425ドル(4万1200円)から600ドル(約5万8200円)へ1.4倍も引き上げた。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチが伝えた。

ジェフリーズのアナリスト、ピーター・ミセク氏は、投資判断を引き上げた理由に関し、「先週、アップルのアジアの代理店を訪問して聞き取り調査した結果、アップル製品への乗り換えがかなりあったことが分かった」とした上で、「アップルは10-12月期と2013年度の決算で売り上げが低下するリスクがあるものの、粗利益率が高いので、4.8型スクリーンの次世代「アイフォン6」が導入されるまで、アップルの業績には問題は生じない」と述べている。また、同氏は、「アイフォン6に対する需要が盛り上がるのは必至なので、導入前にアップルの株価は上昇する可能性が高い」と指摘する。

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ブラジル中銀週報:2013年GDP伸び率見通し、2.47%増に上方修正

ブラジル中央銀行が7日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想した2013年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の前年比2.4%増から2.47%増に上方修正された。1カ月前の予想は2.35%増だった。2014年のGDP伸び率見通しは前週予想の同2.2%増のまま据え置かれた。1カ月前の予想は2.28%増だった。

また、IPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2013年は前週予想の前年比5.82%上昇のまま据え置かれた。1カ月前の予想は5.82%上昇だった。しかし、2014年の見通しは前週予想の5.97%上昇から5.95%上昇に上方修正(改善)された。1カ月前の予想は5.85%上昇だった。

今週8-9日の金融政策決定会合時の政策金利は前週予想の9.5%のまま据え置かれた。据え置きは6週連続。1カ月前の予想は9.5%だった。2013年末時点の政策金利の見通しも前週予想の9.75%のまま据え置かれた。据え置きは4週連続。1カ月前の予想は9.75%だった。2014年末時点の政策金利も前週予想の9.75%のまま据え置かれた。据え置きは5週連続。1カ月前の予想は9.75%だった。

一方、為替レートの見通しについては、2013年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、前週予想の1ドル=2.3レアルのまま据え置かれた。2014年末時点の見通しは前週予想の2.4レアルのまま据え置かれた。据え置きは5週連続。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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