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主な新興国/米国経済ニュース(8月12日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア中銀、リファイナンス金利やオペ金利を据え置き

ロシア中銀は先週末(9日)の理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を現行の8.25%のまま据え置いた。据え置きは11カ月連続。また、それ以外の資金吸収や資金供給のための各種の公開市場操作(オペ)金利も現行のまま据え置いた。

今回の金融政策決定会合は、エリビラ・ナビウリナ新総裁が主催する2回目の会合となった。市場では景気刺激のため、利下げに踏み切るとの見方の一方で、当面は大胆な政策変更は行わないとの見方がある中で、結局、今回も新総裁は金融政策の現状維持を選択した。

ただ、新総裁は前回7月の会合で新たに、銀行への流動性供給を潤沢にするため、期間12カ月で、最低入札金利(金融機関が入札可能な下限金利)を5.75%と低めに設定した、非流動性資産を担保にした貸し出しを7月15日から導入することを決めたが、今回の会合ではこの金利も据え置かれた。エコノミストはこの5.75%という貸出金利は、既存の非流動性資産を担保にした同様な有担保貸出金利7.5%を1.75%引き下げたのに等しく、景気刺激に寄与すると見ている。

中銀は政策決定会合後に発表した声明文で、インフレリスクについて、「7月と8月初めのインフレ率は低下したが、依然、物価目標(5-6%上昇)を上回っており、8月5日時点のインフレ率は推定6.5%上昇となっている。また、7月のコアインフレ率は5.6%上昇だった」としたが、「現在の金融政策のスタンスが維持され、インフレ期待も安定し、食料品物価に急激な変化も起きないことを前提条件として、インフレ率は今年下期(7‐12月)に物価目標に戻り、2014年に入っても低下し続ける」と述べ、インフレの先行きに楽観的な見方を示した。

この文言は前回会合時からはほぼ変わっていないが、唯一の違いは、「インフレ率は2014年に入っても低下し続ける」との文言が新たに追加されている点で、インフレ懸念は一段と後退した。

一方、景気リスクについては、中銀は声明文で、「経済成長は依然として減速している。工業生産の伸びは依然として弱く、増産投資も引き続き減少している」とした上で、「投資活動が弱く、外需の回復がゆっくりとしていることから、経済成長率が低下するリスクは、特に中期的には、依然として高い」と述べ、引き続き景気の先行きに対する懸念を示している。ただ、前回会合時との違いは「特に中期的には」という文言が追加されている点だ。

中銀は次回の金融政策会合の開催時期については、9月13日に開かれるとしている。

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5-9日のロシアRTS指数、1325.7―3週続落=BRICS市況

前週(5-9日)のロシア株式市場は月替わりとなったものの、RTS指数(ドル建て)の9日終値は前週比0.8%安の1325.7と、3週続落となり、依然、低迷している。RTS指数は7月12日終了週に5週ぶりに1300台に回復したものの、7月17日の1393.05をピークに下降局面に入り、依然、年初来16%安となっている。

RTS指数は週初(5日)から3日続落した。これは米国で5日に発表された7月のISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況感指数が予想を上回るなど景気回復の兆候が示されたことで、FRB(米連邦準備制度理事会)の第3弾量的金融緩和(QE3)の早期規模縮小の思惑が強まる一方で、FRB傘下のダラス地区連銀のリチャード・フィッシャー総裁ら複数のFRB幹部が9月にもQE3の規模が縮小される可能性を示唆したことに加え、原油安、さらには6日の米株の急落もロシア株の下落につながった。

ただ、週後半(8-9日)は原油先物価格が反発したことや世界の主要株式市場の上昇、また、中国の7月鉱工業生産指数が前年比9.7%上昇と予想を上回り、7月の貿易統計も輸出と輸入がいずれも予想より高い伸びを示したことから、セベルスタルやマグニトゴルスク・アイロン&スチール・ワークス(MMK)、メチェルなどの鉄鋼セクターの上昇を受けて、RTS指数は持ち直し、2日続伸となった。

今週(12‐16日)のロシア市場に影響を及ぼす大きなイベントとしては、米国は7月小売売上高(13日)や8月のニューヨーク・エンパイア・ステート製造業景況指数(15日)、7月の住宅着工件数(16日)、8月のミシガン大消費者信頼感指数(16日)、アジアでは、日本の4‐6月期GDP(国内総生産)伸び率速報値(12日)、欧州ではユーロ圏6月鉱工業生産指数(13日)や8月ZEW景気期待指数(13日)、4‐6月期GDP伸び率速報値(14日)、6月ユーロ圏経常収支(16日)などが予定されている。

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ベトナム航空、来年6月までに新規株式公開へ

国営ベトナム航空は来年6月までに新規株式公開(IPO)を計画していることを明らかにした。地元金融情報サイト、ストックスプラス(電子版)が9日に伝えた。また、同社のファム・ゴック・ミン社長は、公開価格は1万ドン(約50円)の額面を上回る見通しを明らかにしている。

同航空は今年4月に、IPOに関するコンサルティング契約を米証券大手モルガンスタンレーや米金融大手シティグループ、ベトナム投資開発銀行(BIDV)傘下のBIDV証券、企業価値算定サービス大手ベトナム・バリュエーション・ファイナンス・コンサルタンシーと結んでおり、同社長はIPOで3億8300万株を売却し、2億ドル(約190億円)の資金を調達するとしている。

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ベトナム公安省、アジア商銀の創業者キエン氏を経済犯罪容疑で起訴

ベトナム公安省の刑事警察局はこのほど、昨年8月に重大な経済犯罪に関わった容疑で逮捕されたベトナム銀行界の“ドン”として知られる、アジア商業銀行(ACB)の創業者、グエン・ドク・キエン氏(49)ら8人の同行幹部に対する捜査を完了し、キエン氏ら8人をACBに重大な損害を与えた罪や脱税の容疑で起訴した。ベトナム紙トイチェー(電子版)などが9日に伝えた。

キエン氏以外で起訴された7人は、同行のトラン・スアン・ギア前会長と、チン・キム・クアンやレ・ヴ・キー、ファム・トゥルン・カンの3人の前副会長、リ・スアン・ハ前CEO(最高経営責任者)、さらには、ACBインベストメント・ハノイのトラン・ゴック・タン取締役とACBインターナショナル・ハノイのグエン・テイ・ハイ・エンCAO(最高会計責任者)。

これら8人の被疑者は2010年5-10月に、ACBの従業員に対し、同行の資金を他の29行に預金させて利益を上げたほか、ACBの株式を取得するため、ACB証券ワンメンバーリミテッドにACBの資金を割り当てるなどして、ACBに1兆4000億ドン(約70億円)の損失を与えたとしている。また、キエン氏は2009年に夫人のダン・ゴック・ラン氏がCEOを務めるB&BとACBとの金取引で1000億ドン(約5億円)の利益を上げたものの、250億ドン(約1億2500万円)を脱税したとしている。

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米オンライン旅行代理店大手プライスライン、4‐6月期は大幅増収増益

米オンライン旅行代理店大手プライスライン・ドット・コム<PCLN>が8日に発表した2013年4‐6月期決算は、売り上げが好調となり、純利益が前年比24%増の4億3700万ドル(約420億円)、1株当たり利益(希薄化後)も同22%増の8.39ドルとなった。また、一時的項目を取り除いて前年との比較を可能にした調整後1株当たり利益は同24%増の9.7ドルとなり、アナリスト予想の9.38ドルを上回った。

一方、売上高は前年比27%増の16億8000万ドル(約1610億円)となり、アナリスト予想の16億5000万ドル(約1580億円)を上回った。また、今期(7‐9月)の業績見通しについては、売上高は前年比23‐30%増、調整後1株当たり利益は15.3-16.3ドルとし、当期を大幅に上回るとしている。

同社の株価は9日、一時、前日比6.6%高の日中高値で過去最高値となる994.98ドルを付け1000ドルの大台に急接近した。結局、この日は3.87%高の969.89ドルで引けている。

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米グルーポン、4‐6月期売上高7%増で予想上回る―最終赤字7億円超

米割引クーポン共同購入サイト大手のグルーポン<GRPN>が7日に発表した2013年4‐6月期決算は、売り上げは増加したものの、最終損益は前年同期の2840万ドル(約27億3000万円)の黒字から一転して、757万ドル(約7億3000万円)の赤字となり、アナリスト予想の1160万ドル(約11億1000万円)の黒字を大幅に下回った。

1株当たり損益(希薄化後)は前年同期の4セントの黒字から1セントの赤字となっている。ただ、一時的項目(従業員へのストックオプションの交付費用やM&A費用、税効果)を取り除いて前年との比較を可能にした調整後利益は黒字で、1株当たり利益は2セントとなったが、前年同期の5セントを下回った。

売上高は前年比7%増の6億0870万ドル(約584億円)となり、アナリスト予想の6億0620万ドル(約582億円)を上回った。売り上げは北米部門が前年比45%増の3億7720万ドル(約360億円)と、好調となったものの、米国以外での売り上げは低迷し、欧州とアジア、中東は合計で同24%減の1億5996万ドル(約150億円)だった。

同社は今期(7‐9月)の業績見通しについては、売上高は5億8500万‐6億3500万ドル(約560億‐610億円)、調整後1株当たり損益は赤字1セントと黒字1セントのレンジを予想している。これに対し、アナリスト予想は6億2160万ドル(約600億円)。

また、同社はトップ人事で、新CEO(最高経営責任者)に共同創業者のエリック・レフコフスキー会長を指名し、また、テッド・レオンシス副会長の会長昇格を決めた。同社の株価は7日の引け後の決算発表を受けて、売り上げがアナリスト予想を上回ったことから、時間外取引で終値比18%高となり、翌8日は前日比22%高の10.66ドル、週末9日も0.09%高の10.61ドルで引けている。

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ブラジル国営石油ペトロブラス、4‐6月期決算は最終黒字に転換

ブラジル国営石油大手ペトロブラスが9日に発表した2013年4‐6月期決算は、純損益が前年同期の13億4600万レアル(約570億円)の赤字から一転して62億レアル(約2600億円)の黒字に転換し、アナリスト予想の53億レアル(約2250億円)を上回った。1株当たり損益では前年同期の11セントの赤字から48セントの黒字となっている。

黒字に転換したのは、国内のガソリンやディーゼルなど燃料価格の上昇と5月の会計手法の変更で為替差損を半減させることができため。ただ、前期(1‐3月)の77億レアル(約3300億円)の黒字を19%下回っている。

同四半期中、レアルは対ドルで10%下落したため、為替差損は79億8000万レアル(約3400億円)となっていたが、会計手法の変更で、為替差損額は35億6000万レアル(約1500億円)と、半分以下に縮小している。一方、売上高は前年比8%増の736億3000万レアル(約3兆1300億円)となり、アナリスト予想の706億8000万レアル(約3兆円)を上回った。

また、調整後EBITDA(税や利払い、減価償却費、その他償却費、株式報酬費、のれんの減損損失、リストラ費用・収益などを控除)は同71%増の181億レアル(約7700億円)となり、これもアナリスト予想の164億3000万レアル(約7000億円)を上回る大幅増益となった。

同社の株価(PETR4)は9日のサンパウロ証券取引所(ボベスパ)で、前日比2.58%高の17.08レアルで引けている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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