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主な新興国/米国経済ニュース(7月17日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

フィッチ、ブルガリアのソブリン債格付けとアウトルックを据え置き

米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスは先週末、ブルガリアの外国通貨建てと自国通貨建ての長期発行体デフォルト格付け(IDR)の格付け(それぞれ「BBB-」と「BBB」)をいずれも現行のまま据え置いた。また、格付けに対する見通し(アウトルック)についてもいずれも「ポジティブ」のまま据え置いた。

このほか、短期IDRも「F3」に、また、カントリー・シーリング(送金・交換性リスク)も「BBB+」のまま据え置いた。フィッチは同国の2012年の一般政府財政赤字(国と地方、社会保障基金の合計)は対GDP(国内総生産)比18.5%と、これはEU(欧州連合)域内では2番目に低く、2013-2015年は20%を下回り、満期を迎える国債償還が困難になることは予想されないとしている。ただ、経済成長率は、今年は1%増、来年は1.7%増、2015年は2.3%増に回復するものの、国民間の所得格差は目立って低下する可能性はないと指摘している。

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ロシア自動車大手ガスグループ、メルセデスのミニバンの組み立てを開始

ロシア自動車大手ガス(GAZ)グループは16日からロシア・ヤロスラブリ州で、独自動車大手ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツのミニバン「スプリンター・クラシック」の組み立て生産を開始した。モスクワ・タイムズ(電子版)が伝えた。

ガスとダイムラーの両社は、同プロジェクトに対し、合計で1億9000万ユーロ(約250億円)を投資している。投資は塗装工場の建設とアルゼンチンからのメルセデス・ベンツの組み立て生産ラインの移転費用と設備更新に使われている。

メルセデス・ベンツは組み立て生産の能力については明らかにしていないが、今年末までに5000台を組み立てるとしている。組み立てはコンプリート・ノックダウン(部品単位で輸送して現地で組み立てる)方式を採用している。

また、ガスは同工場の塗装設備を利用して、独自の低価格商用バン「ガゼレ(GAZelle)」の生産も開始する計画だ。

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インドネシア国営建設大手、1-6月期受注高が年間目標の半分に届かず

インドネシアのウィジャヤ・カルヤとワスキタ・カルヤの国営建設大手2社の今年上期(1-6月)の建設受注高が年間目標額の半分にも達せず、低調となっている。ジャカルタ・グローブ(電子版)が16日に伝えた。

ウィジャヤ・カルヤの1-6月期の建設受注高は9兆ルピア(約900億円)となり、年間目標額20兆7600億ルピア(約2080億円)の43%となる一方で、ワスキタ・カルヤも4兆7000億ルピア(約470億円)と、目標額17兆9000億ルピア(約1790億円)のわずか26%にとどまった。こうした低調な建設受注は他の国営建設会社アディ・カルヤでも4兆6700億ルピア(約470億円)と、目標額14兆ルピア(約1400億円)の15%という惨憺たる状況となっている。

しかし、ウィジャヤ・カルヤとワスキタ・カルヤの2社は下期(7-12月)には上期以上の契約が見込めるので、年間目標額の達成に自信があると楽観的に見ている。インドネシアでは国のインフラ整備などの公共工事は下期に集中する傾向があるためだ。

インドネシアの上場建設会社は今月末に中間決算を公表する予定だが、ワスキタ・カルヤでは上期の売上高は前年の2兆7000億ルピア(約270億円)を上回る2兆8000億-3兆ルピア(約280億-300億円)、最終利益も前年比35.5%増の500億ルピア(約5億円)の増収増益になったと見られるとしている。

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三菱重工業、ベトナム・ダナンに米ボーイング向け部品生産の第2工場建設へ

三菱重工業<7011.T>傘下のMHIアエロスペースシステムズは、来年夏にもベトナム中央部ダナンのタンロン工業団地に2番目となる新工場を既存工場に隣接する形で建設し、米航空・宇宙大手ボーイング向け航空機部品(動翼部分)の増産体制に入る計画だ。地元オンライン・ニュースメディアのベトナム・インベストメント・レビューが15日に伝えた。

新工場では、現在、三菱重工業の名古屋航空宇宙システム製作所で作っているジャンボジェット機「ボーイング777」のコンポーネント(構造部材)を生産するとしている。第1工場は2009年から操業を開始しており、現在はボーイング737のフラップ(小翼)を生産している。当時の投資額は700万ドル(約7億円)だった。

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米石油オキシデンタル、カタール石油と海底油田鉱区の第5期開発計画で合意

米石油大手オキシデンタル・ペトロリアムは15日、国営カタール石油の海底油田鉱区イッド・アルシャルギー・ノース・ドーム(ISND)の第5期開発計画(フェーズ5)を開始することで合意した。投資額は30億ドル(約3000億円)超。

今回のフェーズ5は、オキシデンタル石油とカタール政府が1994年に締結した開発・生産分与契約(DPSA)に基づくISND鉱区開発の一環として行われるもの。同社はすでにフェーズ5の開発に着手しており、今後6年間で日量10万バレルの原油生産を目指している。計画では新たに200本の井戸を追加掘削するとしている。

また、米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスは12日、オキシデンタルの格付けに対する見通し(アウトルック)を「ポジティブ」から「安定的に」に引き下げた。引き下げたのは株主リターンの改善のための経営改革が資産売却になるのか、事業部門の分社化になるのか先行き不透明なためとしている。ただ、長期発行体デフォルト格付け(IDR)は現行の「A」、短期IDRも「F1」のまま据え置いている。

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米金融大手シティグループ、4‐6月期は42%増益-予想上回る

米金融大手シティグループが15日に発表した第2四半期(4-6月)決算は、最終利益が前年比42%増の42億ドル(約4200億円)、1株利益は希薄化ベースで前年同期の1ドルから1.34ドルに増加した。一方、デリバティブの時価評価に対する信用評価調整(CVA)と金融負債の時価評価に対する債務評価調整(DVA)の影響と、トルコ国際金融大手アクバンクの売却損を除いた後の実質最終利益は前年比26%増の39億ドル(約3900億円)、1株利益は1.25ドルとなり、アナリスト予想の1.18ドルを上回った。

また、売上高に相当する経常収益は前年比11%増の205億ドル(約2兆0500億円)となり、アナリスト予想の197億3000万ドル(約1兆9730億円)も上回った。増収増益となったのは、投資銀行部門の収入が前年比25%増の68億4000万ドル(約6840億円)となったほか、貸倒引当金の戻し入れ額は前年同期の10億ドル(約1000億円)から7億8400万ドル(約780億円)に縮小したものの、貸し倒れ損失額が前年比25%減の26億ドル(約2600億円)に改善したことが奏功したとしている。

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ブラジル中銀週報:今年のGDP伸び率見通しを下方修正-9週連続

ブラジル中央銀行が15日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想した2013年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の前年比2.34%増から同2.31%増に下方修正された。下方修正は9週連続。1カ月前の見通し予想は2.49%増だった。一方、2014年のGDP伸び率見通しは前週予想の同2.8%増のまま据え置かれた。1カ月前の見通し予想は3.2%増だった。

また、2013年末時点の政策金利の見通しは、前週予想の9.25%のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は9%だった。2014年末時点の政策金利は前週予想の9.25%から9.5%に引き上げられた。1カ月前の予想は9%だった。次回8月27‐28日の金融政策決定会合時の政策金利(翌日物金利誘導目標)の見通しは、前週予想の9%のまま据え置かれた。据え置きは3週連続。

IPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しについては、2013年は前週予想の前年比5.81%上昇から5.8%上昇へ上方修正(改善)された。1カ月前の予想は5.83%上昇だった。また、2014年の見通しは前週予想の5.9%上昇のまま据え置かれた。1カ月前の予想は5.8%上昇だった。

一方、為替レートの見通しについては、2013年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、前週予想の1ドル=2.2レアルのまま据え置かれた。2014年末時点の見通しは前週予想の2.22レアルから2.3レアルに引き上げられた。引き上げは2週連続。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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