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主な新興国/米国経済ニュース(6月24日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

6月17-21日のロシアRTS指数、1245.72―7週続落=BRICs市況

前週(6月17-21日)のロシア株式市場は、外国人投資家の資金流出が依然止まらない中、ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長が19日の金融政策決定会合後の会見で、年内に第3弾の量的金融緩和(QE3)の規模を縮小するとの見通しを明らかにしたことから、世界の株式市場や原油先物市場が下落し、RTS指数(ドル建て)も軟調となった。

RTS指数の21日終値は前週比3.7%安の1245.72となり、1週間の値動きとしては、前週に続いて再び年初来安値を更新した。また、昨年6月3日の1227.65以来、約1年ぶりの低水準。同指数の下落はこれで7週連続となる。

週明け17日のRTS指数はロシア2位の天然ガス生産大手ノバテクがシベリア地方ヤマル半島の天然ガス開発で中国石油天然気集団(CNPC)と提携するとの憶測で相場が押し上げられ2営業日続伸となった。18日もマリオ・ドラギECB(欧州中央銀行)総裁が欧州経済を刺激するため非伝統的な対策を取ると発言したことから相場の下落に歯止めがかかった。

しかし、週半ばの19-20日は、市場が注目していたバーナンキ発言で利益確定売りが広がり、RTS指数は1291.72と、昨年6月の水準(6月3日は1227.65を記録)にまで低下した。ただ、週末の21日は、ウラジーミル・プーチン大統領が景気刺激のため、インフラ建設プロジェクトに4500億ルーブル(約1.4兆円)の財政資金を投資するとの発言や国営石油大手ロスネフチが中国石油天然気集団(CNPC)と3億6500万トンの原油供給契約を締結したとのニュースで、ショートポジションを取っていた投資家が裁定解消の買い戻しに向かったため、反発した。しかし、原油先物の下落で上値は抑えられた。

今週(24-28日)のロシア市場は、米国の株式市場の動向に引き続き左右される見通し。特にFRBのQE3の規模縮小は、景気刺激の緩和を意味し、リスク資産への投資が手控えられることが予想されるため、RTS指数も下落する恐れがある。今週の相場に影響を与える主な統計は、米国では25日の5月新築住宅販売件数や26日の1‐3月期GDP(国内総生産)伸び率の確定値、さらに27日の5月個人所得・支出統計がある。欧州では24日のドイツの6月IFO企業景況感指数と26日の7月GFK消費者信頼感調査、アジアでは28日の日本の5月消費者物価指数(CPI)と5月失業率などが予定されている。

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ロシア大統領、道路・鉄道建設に1.4兆円投資を表明―景気刺激目指し

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先週末、サンクトペテルブルクで開かれた経済フォーラムで講演し、景気回復を刺激するため、4500億ルーブル(約1.4兆円)の財政資金をインフラ建設プロジェクトに投資する方針を明らかにした。ノーボスチ通信(電子版)が伝えた。

また、この投資額の半分は運用資産額870億ドル(約8.5兆円)のロシアの年金制度を支えるための国民福祉基金(NWF)から支出されるとしている。NWFはロシアの原油輸出の収入で運用されている。同大統領は、「投資は民間セクターが有望と考えている、投資効果が高いプロジェクトに行われ、民間セクターとの共同投資になる」と述べ、具体的にはモスクワとロシア連邦タタールスタン共和国の首都カザンを結ぶ高速道路やモスクワの大規模環状線道路、シベリア鉄道の3件の建設プロジェクトを挙げた。

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ファーストリテイリング、ユニクロのインドネシア第1号店をオープン

衣料小売り大手ファーストリテイリング<9983.T>は22日、ユニクロのインドネシア第1号店を首都ジャカルタの繁華街クニンガン地区に新設された巨大ショッピングセンター「ロッテ ショッピング アベニュー」内にオープンした。

ユニクロのインドネシア第1号店は総売り場面積2680平米、2階建てで、東南アジア最大のメガストアとなる。運営はファーストリテイリング・インドネシア(大笘直樹社長)が行う。同社の資本金は10億円で、ファーストリテイリングが全体の75%、残りの25%は三菱商事<8058.T>が出資している。

ユニクロは、アジアを最大の成長機会と捉え、今後出店を加速させる計画。2013年5月末現在で、13カ国・地域に1254店舗を展開しており、そのうち東南アジアではシンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンの4カ国で計23店舗を展開している。ユニクロは、発表文で、東南アジア市場での基盤を固める上でも、世界第4位の人口を有し、堅調な経済成長を続けるインドネシアを非常に重要な市場と考えている。首都ジャカルタに出店することで、東南アジア市場でのさらなる飛躍、拡大を目指す」としている。

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ベトナム中銀、ドン安阻止で為替相場と経常収支の動向注視へ

ベトナム中銀は21日に発表した声明文で、ドン安の進行を阻止するため、ドンの対ドル相場と経常収支の動向を注視し、自国通貨ドンの国内保有高を高めていく方針を明らかにした。ベトナム通信(電子版)が伝えた。

この中銀の声明文は、先週、ドン相場が民間銀行の仲値で1ドル=2万1035ドンまでドン安が進行したことを受けたもの。また、非公認の為替市場取引では、1ドル=2万1300ドンと、公式為替レートの2万1000ドンを上回り、ドンは対ドルで今年に入って3回目の年初来安値を付けている。

中銀によると、仲値のドンの平均レートは年初来で0.9%安となっている。特に、4月以降、経常赤字の拡大や中銀の大量の金輸入で為替相場の見直しがあるのではないかという憶測が原因となって、ドル高・ドン安が続いている。

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ブラジル大統領、市民との対話と社会改革を提案―抗議デモ収拾で

ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は先週末のテレビ演説で、今月初めに起きたバス料金の値上げ反対に端を発した市民抗議デモが全国的に波及して一部地域で暴動が発生している事態の早期収拾を図るため、数日中に抗議デモを組織している市民グループとの対話集会の開催を呼び掛けると同時に、抗議デモのテーマとなっている公共輸送や教育、健康医療などの分野の改革に取り組む考えを示した。中南米専門の通信社メルコプレス(電子版)などが伝えた。

同大統領は演説で、石油収入を教育に投資することや海外から数千人規模で医師を招へいして健康・医療サービスを改善するとしている。公共交通サービスの改善については各都市の市長と州知事との間で相互理解を深めることが必要との認識を示すのにとどめた。

英BBC放送によると、現地時間の20日夜時点で100万人以上の市民が屋外の抗議デモに参加し、各都市で暴動が発生し、数十人が負傷し、2人の死亡が確認された。抗議デモは週末21日も続き、リオデジャネイロでは推定1000人がデモ行進し、サンパウロでは暴動は起きなかったが交通がマヒ状態となった。

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米クライスラー、年間490億円の金利負担減へ―既存借入金の見直しなどで

伊自動車大手フィアット傘下の米自動車大手クライスラー・グループは先週末、融資先との29億ドル(約2800億円)の既存借入金と13億ドル(約1270億円)のリボルビングローン(回転信用枠)のリファイナンス(借り換え)協議の結果、年間およそ5億ドル(約490億円)の金利負担の軽減が可能になる見通しになったことを明らかにした。また、同社は20億ユーロ(約2600億円)の新規融資(返済期間3年)も獲得した。

クライスラーが既存借入金の金利負担の軽減や新規融資の獲得に向かった背景には、FRB(米連邦準備制度理事会)による第3弾の量的金融緩和(QE3)の規模縮小が年内に実施される懸念があったようだ。QE3は月850億ドル(約8.3兆円)のツイストオペ(短期債を売却して長期債を購入し保有債券の期間を長期化させるオペ)による長期国債とMBS(不動産担保証券)の買い取り規模が縮小すれば、金利上昇圧力が高まり債務負担も増える恐れがあるからだ。

また、親会社のフィアットは欧州の自動車市場の低迷による損失をクライスラーの売り上げに依存する傾向が高まっているだけに、クライスラーの既存借入金の借り換えや新規融資の獲得によってクライスラーのフィアットへの支払い余力が高まれが、フィアットにとってもバランスシートの改善に寄与すると見られている。

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米スプリント、米携帯ブロードバンド大手クリアワイヤの完全買収で前進

米携帯電話サービス3位のスプリント・ネクステルは、米携帯電話向けブロードバンドサービス大手クリアワイヤの完全買収協議で1株当たりの買収提示額を5ドル(約490円)に引き上げたことで、クリアワイヤの役員会や株主がスプリント指示に傾き、対抗買収を仕掛けていた米衛星放送大手ディッシュネットワークに競り勝つ見通しとなった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が21日に伝えた。

スプリントはすでにクリアワイヤの株式50%を取得しており、今回は残りの50%の取得による完全買収を目指している。スプリントの今回の買収提示額はディッシュネットワークの買収提示額4.4ドルを約14%上回る。

一方、ソフトバンクはすでにスプリントを216億ドル(約2.1兆円)で買収することで合意しているが、ディッシュネットワークがクリアワイヤの買収に失敗したことから、再びスプリントの買収に戻る可能性がある。しかし、ディッシュネットワークは先週、ソフトバンクを超えるスプリントの買収額の提示を期限までに提示できないことを明らかにしているため、ソフトバンクによるスプリント買収は大きく前進した。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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