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主な新興国経済ニュース(6月3日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

5月27-31日のロシアRTS指数、1331.43―4週続落=BRICs市況

前週(5月27-31日)のロシア株式市場で、RTS指数(ドル建て)は5月27日終値が前週比4.1%低下の1331.43と、4週連続で低下し、4月22日以来、約1カ月ぶりの低水準となった。

週明け27日のRTS指数は、英米の株式市場が祝日で休場となったため、外国人投資家が不在の中、前週末(24日)の2営業日続落の流れを受けて一段安となった。翌28日は米国の住宅価格統計が堅調となる一方で、OPEC(石油輸出国機構)総会で原油供給量は据え置かれるとの観測で原油高となったことからRTS指数は反発した。

しかし、反発は長続きしなかった。29日以降は米コンファレンス・ボードの5月消費者信頼感指数が予想を上回るなどの支援材料があった一方で、原油先物が下落に転じたことや米FRB(連邦準備制度理事会)が景気回復を理由に量的金融緩和(QE3)から脱却に転じる可能性があるとの懸念が広がったため、RTS指数は週末にかけて3日続落した。

この結果、RTS指数は4月18日の直近安値(1327.55)に再び急接近し、2月1日の年初来高値1628.31からは18%も値を下げている。また、5月単月のRTS指数は5.4%低下となり、年初来では12.8%の低下となった。

今週(6月3-7日)のロシア市場は、引き続き米FRBのQE3脱却を念頭に置きながら、3日の5月ISM(サプライマネジメント協会)製造業景況感指数や5日のベージュブック(地区連銀経済報告)、そして7日に発表される6月雇用統計など米国の主要統計の動向に注目が集まると見られている。FRBの次回会合は6月18-19日に開かれる予定。

このほか、相場に影響を与える今週の主な統計としては、アジアでは、3日に日本の1-3月期法人企業統計、7日に4月景気先行指数が発表される。欧州では5日にユーロ圏1-3月期GDP伸び率(改定値)、8日には英中銀とECB(欧州中央銀行)の金融政策決定会合などが予定されている。

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ポーランド1-3月期GDP伸び率、改定値は0.5%増―速報値上回る

ポーランド中央統計局が先週、発表した1-3月期GDP(国内総生産)伸び率の改定値(季節調整前)は、前年比0.5%増(前期比0.1%増)となり、速報値の同0.4%増をやや上回った。しかし、昨年10-12月期の同0.7%増からは伸びが鈍化している。ワルシャワ・ビジネス・ジャーナル(電子版)が5月31日に伝えた。

1-3月期GDPは、民間と政府の投資を示す総固定資本形成が同2%減、内需も同0.9%減となり、景気の足を引っ張ったが、GDP押し上げ要因の純輸出(輸出と輸入の差)が増加し、全体を下支えた。OECD(経済協力開発機構)の最新調査では、ポーランドの今年のGDP伸び率は0.9%増に鈍化するものの、2014年は2.2%増に回復する見通しとなっている。

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ロシア中銀副総裁、7‐9月期前の利下げ転換に含み持たせる

ロシア中央銀行のアレクセイ・ウリュカエフ第1副総裁は先週末、記者団に対し、今後の金融政策の見通しについて、早ければインフレ率が中銀の物価目標(5-6%上昇)に到達する7‐9月期前にも主要政策金利を引き下げる可能性があることを明らかにした。ロシアのプライム通信(電子版)が伝えた。

同副総裁は、「中銀の金融政策はインフレ見通しに従って決定されるので、理論的にはそう(物価目標達成前の利下げ)する可能性はある」と述べている。インフレの見通しについて、同副総裁は、「これまでにインフレ率は7.3%上昇のピークに達したが、10-12月期には物価目標にまで低下する。場合によってはもっと早い7‐9月期に達成される可能性もある」と指摘している。また、アンドレイ・ベロウソフ経済発展相は今年のインフレ率はおよそ5.8%上昇になるとの見通しを示している。

ロシア中銀は5月15日に、主要政策金利であるリファイナンス金利を現行の8.25%のまま据え置いたほか、資金吸収のための預金金利(翌日物、1週間物、1カ月物)も現行の4.50%、資金供給のための翌日物通貨(ルーブル)スワップ金利やロンバードローン金利も6.50%のまま据え置いている。

他方、それ以外の資金供給のための3‐12カ月の長めの公開市場操作(オペ)金利と90‐365日の市中銀行への有担保貸付金利は、前回に続いて再び、各0.25%ポイント引き下げている。

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英HSBC、インドネシアの中堅行エコノミ・ラハルジャの身売りを検討中

英金融大手HSBCは、2008年に買収したインドネシアの中堅銀行バンク・エコノミ・ラハルジャを売却することを検討している。ジャカルタ・グローブ(電子版)が1日に伝えた。現在、HSBCは同行の持ち株98.94%を保有している。これは同行の株価から換算すると6兆6000億ルピア(約660億円)に相当する。

HSBCのアジア・太平洋部門の責任者、ピーター・ロング氏は、ロンドン証取に宛てた声明文で、「インドネシア戦略の見直しの結果、(エコノミ・ラハルジャの)売却となった場合には、売却で得た資金はインドネシアに再投資されるだろう」と述べている。

HSBCはユーロ圏債務危機で悪化した業績を回復するため、資産売却やコスト削減、急成長国での事業拡大に取り組んでおり、スチュアート・ガリバーCFO(最高財務責任者)は、3月末までに52事業部門を閉鎖するか売却する方針を明らかにしていた。

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インドネシア中銀総裁、ルピアの一段安阻止で市場介入を示唆

インドネシア中央銀行のアグス・マルトワルドヨ中銀総裁は先週末、自国通貨ルピアの対ドルでの一段安を阻止するため、必要に応じてルピア買い・ドル売りの市場介入を引き続き行っていく考えを明らかにした。ジャカルタ・グローブ(電子版)が1日に伝えた。

ルピアの対ドル相場は、米FRB(連邦準備制度理事会)が今後、量的金融緩和(QE3)を大幅に縮小するとの思惑で急低下しており、先週だけでルピアは0.1%低下し、年初来では1.4%低下している。中銀データによると、過去の市場介入で、同国の外貨準備高は2011年8月の過去最高となった1240億ドル(約12.5兆円)から今年4月末時点では1073億ドル(約10.8兆円)にまで減少している。

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ベトナムの不良債権、一掃するのに7-10年かかる―最新調査

ベトナム国家大学ハノイ校経済経営大学は最新調査で、同国の金融機関が保有する不良債権を一掃するには、不良債権額の規模にもよるがおおよそ7-10年の長期間を要すると指摘している。ベトナムのオンラインメディア、ベトナムネットが1日に伝えた。

同調査をまとめたグエン・ドゥック・タイン教授によると、不良債権比率(貸し出し債権に占める不良債権の比率)は中銀などのデータに基づくと、2月時点で6%となり、金融機関の不良債権額は180兆‐300兆ドン(約0.9兆‐1.5兆円)になるとしている。しかし、同教授は「金融機関の調査では2012年3月時点の不良債権比率は3.57%、その後、中銀調査で8.6%に引上げられ、同年9月時点で9.53%となっているが、正確な数字はつかめない」としている。

他方、中銀の銀行監督庁(BSIA)のデータに基づいて政府が発表した2012年末時点の不良債権比率は7.8%に低下し、今年3月末時点の数値は金融機関の報告に基づくと4.51%に低下している。

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ブラジル中銀総裁、2014年にインフレ率は5%を下回ると予想

ブラジル中央銀行アレシャンドレ・トンビニ総裁は5月31日付の地元有力紙フォリャ・ジ・サンパウロのインタビューで、5月29日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%ポイント引き上げたことに関し、「インフレを低くすれば実質賃金の目減りを防ぐことができる。また、インフレを低く抑制することは、企業の将来計画を実行するうえで、また、投資家にとっても必要な条件だ」と述べ、経済成長を犠牲にせずにインフレの加速を容認するという考えを否定した。

また、多くのアナリストは、中銀の利上げキャンペーンによって、インフレ率が物価目標のレンジ(2.5-6.5%)内の5.5%に低下するとの見通しには否定的だが、この点について、同総裁は、「インフレ率は物価目標の中央値4.5%に向かう兆しが見えている。2014年にインフレ率が5%を下回ることは可能だ」との認識を示している。

さらに、同総裁はブラジル経済がスタグフレーション(景気後退にもかかわらず、インフレ率が上昇する状態)に向かっているという懸念については、「インフレは抑制されており、今後低下していく。ブラジル経済は現在、緩やかに回復し始めている。スタグフレーションの状況にはない」と述べ、スタグフレーションの懸念を否定した。また、同総裁は、「我々は、今の経済政策を取り続けることで、今年のブラジル経済の成長率は3%程度になるとみている」としている。

このところドル高・レアル安となっていることについて、トンビニ総裁は、「為替相場は経済ファンダメンタルズを反映すべきで、急激な為替相場の変動を抑えるために必要に応じて市場介入する」とも述べている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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