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主な新興国経済ニュース(4月3日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

【ロシア‐4月3日】首相府報道官:対キプロス支援決定はVTB現地法人への影響次第

ロシア首相府のナターリャ・ティマコワ報道官は1日、債務・金融危機に直面しているキプロス情勢に関し、政府は国営金融大手VTB(対外貿易銀行)のキプロス現地法人であるロシア・コマーシャル・バンク(キプロス)にどんな悪影響が及ぶかを注視しながら対キプロス支援を決定することになる、との見通しを明らかにした。ノーボスチ通信(電子版)が伝えた。

また、同報道官はロシアのドミトリー・メドベージェフ首相が3月30日に、中銀総裁ら金融当局の幹部を集め、2011年に実施した25億ユーロ(約3000億円)の対キプロス融資の債務再構築問題に加え、ロシア・コマーシャル・バンクの安全確保についても検討したことを明らかにした。

VTBはロシア・コマーシャル・バンクを通じてキプロスで銀行業務を展開しており、同行はキプロスでは140億ユーロ(約1.7兆円)の資産を保有する3位の大手行となっている。また、預金額も約20億ユーロ(約2400億円)に達している。現時点では、VTBはキプロスでの損失額は最悪シナリオで数百万ユーロ(数億円)になると予想している。他方、イゴール・シュワロフ第1副首相は、ロシア・コマーシャル・バンクにはまったく影響が及ばないか、あるいは、軽微な損失にとどまることを期待している、と述べている。

米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、ロシアの銀行はキプロスの銀行に120億ユーロ(約1.4兆円)の預金、また、ロシアの企業は190億ユーロ(約2.3兆円)の預金を保有しているといわれる。

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【ポーランド‐4月3日】石油化学大手PKNオルレン、5年ぶり復配へ

ポーランドの石油化学大手PKNオルレンは、2012年度決算で大幅増益となったことから、2007年以来5年ぶりに復配する方針。地元週刊紙ワルシャワ・ボイス(電子版)が2日に伝えた。

これは同社の決算発表で明らかにされたもので、昨年度の最終利益は前年比53%増の21億3000万(約620億円)ズロチとなった。ジャチェック・クラビエツCEO(最高経営責任者)は、配当金は1株当たり1.5ズロチ(約43.5円)を提案しており、配当金支払い後の利益14億9000万ズロチ(約430億円)は資本準備金となる。同社では配当金の水準を徐々に引き上げていきたい考えで、最終的には5%の配当利回りを目指すとしている。

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【インドネシア‐4月3日】中銀、11日の金融政策決定会合で金利据え置きか

エコノミストは、インドネシア中央銀行(BI)は最近、インフレ率の上昇が加速しているものの、来週11日に開かれる金融政策決定会合で、政策金利である翌日物BI金利を現行の5.75%のまま据え置く可能性が高い、と見ている。ジャカルタ・グローブ(電子版)が2日に伝えた。

インドネシア中央統計局(BPS)は1日に発表した3月のCPI(消費者物価指数)は前年比5.9%上昇と、2月の5.31%上昇を上回った。ただ、コアCPI指数(値動きが激しいエネルギーや食品を除く)は4.21%上昇と、2月の4.29%上昇を下回っており、中銀の物価目標3.5‐5.5%上昇の範囲内に収まっていることから、中銀が直ちにインフレ抑制のため利上げに転じるほどには至っていないと見られている。

シティバンクのインドネシア法人であるシティバンク・インドネシアのエコノミスト、ヘルミン・アーマン氏は、「インフレに関する限りでは、我々は中銀が直ちに金融政策を大幅に変更する必要性があるとは思わない」とし、金利据え置きを予想している。

また、インドネシア6位の中堅銀行バンク・ダナモンのエコノミスト、アントン・グナワン氏も「燃料補助金の削減(その結果、燃料コストの上昇)というインフレ要因を別にしても、今年のインフレ率は5.47%上昇にとどまる可能性があり、年内は、中銀は政策金利を現状の5.75%の水準で維持することができる」と指摘している。

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【インドネシア‐4月3日】国営石油プルタミナ、タイの石化大手とナフサ分解工場建設へ

インドネシア国営石油大手プルタミナは、国内の石油製品需要に対応するため、タイの石油化学大手グローバル・ケミカルと共同で、インドネシア国内にナフサを原料にエチレンやプロピレンなどの石化製品を生産するナフサ分解工場を建設する。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)が1日に伝えた。

両社は1日に基本合意書(HOA)を締結し、まず、フィージビリティ(実現可能性)調査を実施、来年早々にも工場の建設に着手する計画。石化製品の生産能力は年間100万トンで、投資額は40億ドル(約3720億円)。グローバル・ケミカルはタイ石油公社(PTT)グループの子会社で、生産能力は年間845万トン、また、原油精製能力は日量28万バレル。

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【ベトナム‐4月3日】国家金融監督委員会、中銀による一段の利下げを提言

ベトナム国家金融監督委員会(NFSC)は最近まとめた今年1‐3月期マクロ経済動向調査で、中央銀行は主要政策金利の一つで商業銀行への貸出金利となっているリファイナス金利(再割引金利)を現在の8%から7%まで引き下げる余地があるとの見解を示している。ベトナム通信(電子版)が2日に伝えた。

中銀は先月25日の金融政策決定会合で、インフレを抑制し経済成長率の目標を達成するため、リファイナス金利を1%ポイント引き下げて8%としたほか、銀行からの債券買い入れ金利である公定歩合と銀行間電子決済で適用されるオーバーナイト金利もいずれも1%ポイント引き下げ、それぞれ6%と9%とすることを決めたばかり。

NFSCは調査で、1‐3月期の銀行の資金流動性は安定しており、金利はインフレの動きに合わせて低下する傾向が見られたとしている。また、国内消費と銀行借り入れ需要は依然弱い一方で、今年のインフレ率は7%を下回る可能性が高いとしている。その上で、NFSCは政府に対し、利下げや法人税税率の20%への引き下げ、さらにはVAT(付加価値税)減税によって、企業の生産・サービス活動の拡大を支援していく必要があると提言している。

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【ロシア‐4月3日】中銀、主要政策金利を据え置き―長めのオペ金利は引き下げ

ロシア中銀は2日の理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を現行の8.25%のまま据え置いた。市場の予想通りだった。

また、資金吸収のための預金金利(翌日物、1週間物、1カ月物)も現行の4.50%、資金供給のための翌日物通貨(ルーブル)スワップ金利やロンバードローン金利も6.50%のままに据え置いた。しかし、それ以外の資金供給のための90-365日の市中銀行への有担保貸付金利と3‐12カ月の長期の公開市場操作(オペ)金利はいずれも0.25%ポイント引き下げられた。引き下げは3日から実施される。

同中銀は声明文で、据え置きについて、「インフレと景気の両方のリスクを検討した結果だ」としている。ただ、資金供給のための長期の公開市場操作(オペ)金利の引き下げについては、「マネーマーケットの金利水準に及ぼす影響は大きくはないにしても、金融機関が中銀から調達する資金のコストを主要な資金供給のためのオペ金利の水準にまで引き下げ、金融政策の効果を強めるのに役立つ」と述べている。

インフレリスクについては、同中銀は声明文で、「3月のインフレ率は前年比7.2%上昇と、依然、物価目標(5-6%上昇)の上限を大幅に上回っている。これは食料品などの物価上昇によるものだが、長期にわたって物価目標を上回ればインフレ期待に影響を及ぼしインフレリスクとなる」と、前回3月会合と同様にインフレ懸念を示した。

しかし、前回会合時との違いは、「上期のインフレ率は物価目標を上回るとの中銀予想と一致した動き」の文言が削除され、その代わりに、「中銀は、現在の金融政策のスタンスが維持され、インフレ期待も安定し、食料品物価に急激な変化も起きないことを前提条件として、インフレ率は今年下期(7‐12月)に物価目標に戻ると予想している」との文言が使われている点だ。

一方、景気リスクについては、声明文では、「依然として経済成長の伸びが鈍化しており、景気に対する懸念は一段と強まっている」としている。

その上で、中銀は前回3月の会合で使われた「現在の政策金利はインフレと経済成長の両リスクのバランスを維持する上で適切な水準」との文言を削除している。ただ、「インフレリスクと景気後退リスクを引き続き注視し、金融政策決定はインフレ目標と経済成長見通しの両面で判断して行われる」と、前回会合と同じ文言を使っている。

また、次回の金融政策会合の開催時期については、5月中旬に開かれるとしている。

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【ブラジル‐4月3日】白物家電業界、政府に工業製品税の減税延長要請へ

ブラジルの全国電気電子機器製造業協会(ELETROS)のロウリバル・キスラ会長は1日、冷蔵庫や洗濯機など白物家電の工業製品税(IPI)の減税措置の延長を政府に要請する意向を明らかにした。国営通信アジェンシア・ブラジル(電子版)が伝えた。

これより先、財務省は先週末、昨年5月に導入された自動車取得時に支払うIPIの減税措置を今年12月まで1年間延長する方針を明らかにしている。もともと、白物家電のIPI減税は2011年12月に初めて導入され、台所用コンロの税率は4%から0%へ、電気冷蔵庫は15%から5%へ、大型洗濯機は20%から10%へ、半自動洗濯機は10%から0%へ引き下げられた。その後、数回延長されあと、今年2月1日から6‐7月までに段階的に元の税率に引き上げられている。

キスラ会長は自動車のIPI減税が延長されたことから、白物家電についても4‐5月の販売動向を見た上で、6月にも減税延長の承認を得たいとしている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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