「大人の発達障害」当事者会の国内初の調査報告 参加者は30~40代男性が突出

当事者支援についてヒアリングを受ける山梨英和大学の小林真理子教授(左端)

「大人の発達障害当事者会」に関する日本で初めての調査報告書がまとめられ、当事者活動の参加者には、30~40代の男性が突出して多い実態が明らかになった。その概要は、7月17日に東京都北区で当事者団体が主催する「発達障害当事者会フォーラム」において公表される。

調査内容は、全国に成人の発達障害当事者会がどのくらい存在し、どういった活動をしているかを把握。また、昨年8月の発達障害者支援法の改正で、基本理念が「成人期・高齢期に至るまで切れ目のない社会的障壁をなくす」ことに変わったことを受け、成人当事者がどのような問題を抱え、当事者会は数少ない社会的資源のリソースになっているのかどうかを立証するのが目的だ。

調査を行ったのは、都内で大人の発達障害者のための「ネッコカフェ」などを運営している一般社団法人「発達・精神サポートネットワーク」(川島美由紀代表理事)。厚労省障害者総合福祉推進事業として行われ、昨年9月から11月にかけ、全国の発達障害支援センター86カ所(当時)に調査票を送付。78ヵ所(90・7%)から回答を得た。

それによると、全国の同センターの管轄内に当事者会があると答えたのは、7割超に上る55センター。さらに、同年11月から今年1月にかけ、連絡の取れた当事者会96団体のうち、親の会や行政主導を除いた純粋な当事者会66団体に調査をかけた。

中でも興味深いのは、参加者のデータから見た当事者会で、30代~40代の利用者が突出して多いことがわかる。また、男性が過半数を占める団体が多く、約4割の団体では、女性の比率が20%以下だった。

当事者会を始めようと思ったきっかけについては、「苦労や悩みの共有」(86%)、「当事者同士のつながり」(64%)、「社会資源の不足」(58%)の順に多い。

行き場がなく困っている人が多い

こうした背景について、報告書では<「ロストジェネレーション」と呼ばれる、バブル崩壊後の長期不況の影響を強く受けた世代にあたることが無関係でないように思われる>と指摘。非正規労働者になったり、リストラされたり、就職がまったくできない厳しい雇用環境の現実があると考察する。

「発達障害の当事者は、コミュニケーションが苦手な人が多い。広汎性発達障害の方は空気が読めないとか、ADHDの人はミスが多く、衝動的で対人トラブルを起こしやすいとか、学習障害の人は読み書きが苦手で書類作成に手間取るとか、仕事上問題を抱えたり、就職戦線に敗れて行き場がなく困っている人が多いのに、支援する社会資源も非常に少ない。だから、当事者会や居場所に来て、自分たちで打開しようと、必死に社会とのつながりや疾患への悩み、就労の情報共有を持とうとしているのではないか」(調査に携わった発達障害当事者協会スタッフの嘉津山具子さん)

また、大人の発達障害者に必要な支援の問いに、85%の団体は「就労支援」、82%が「当事者会」の必要性を挙げた。

仕事が上手くいかず、転職を繰り返すなど、働きたくても働けない人たちにとって、就労は切実な問題になっていることがわかる。当事者会についてはセルフヘルプのため、運営していくための支援が、継続するうえでのカギとなっていることも明るみになった。

「女性が表面化しにくいのは、社会性やコミュニケーションの問題として就労がクローズアップされる診断基準になっているため、男性のデータが多くなる。20代は、10年前に支援法ができて早期にサポートが受けられるようになった。50代以上が少ないのは、変わり者でも生きて来れた時代だった。30~40代は、発達障害を診断できる医師も少なく、見過ごされてきたのではないか」(前出・嘉津山さん)

17日に開かれる発達障害当事者会フォーラムは、同サポートネットワークと「発達障害当事者協会」(新孝彦代表)の共催で、関東地区の当事者会12団体や、山梨英和大学人間文化学部の小林真理子教授(元厚労省・発達障害対策専門官)らゲスト講師がパネルディスカッションを行い、調査で見えてきた課題などを一緒に考える。