築地市場の豊洲移転問題 石原元都知事らの参考人招致の焦点

メディア向けに公開された豊洲新市場の施設内

ついに、石原慎太郎元都知事の参考人招致が始まる。

豊洲市場(東京都江東区)用地取得の経緯等に関して、石原元都知事、濱渦武生元副知事などの当時の関係者や、これまで地下水モニタリング調査の採水、分析に関わった事業者、専門家会議のメンバーらの参考人招致を行うことが、2月7日の東京都議会豊洲市場移転問題特別委員会で決まったのだ。

この参考人招致の最大の焦点は、なぜ汚染の残る土地に生鮮食料品市場を移転しようと決定したのか。また、なぜ汚染対策費用を考慮しない高い価格で土地を購入することになったのか。当時、計画の見直しを指示できるトップの立場にあった石原都知事の責任の所在である。

2年間の交渉記録がない

今年1月14日に公表された豊洲市場の第9回目の地下水モニタリング調査では、環境基準の最大79倍となるベンゼンなどが検出されたのを受けて、これまでの地下水モニタリング調査の検証や、そもそもこうしたリスクのある土地をなぜ取得することになったのか、その経緯を責任者から説明してもらう必要性が指摘されていた。

市場の持続可能性についても、豊洲新市場開場後の収支は年間100億円弱の赤字になるとの試算が都から初めて算出され、1月31日には、市場内では業界最大の水産仲卸組合(東卸)の理事長選で、これまでの「豊洲移転推進派」を大差で破って「移転慎重派」の理事長が誕生するなど、豊洲移転に前向きだった業者たちの間でも「もう豊洲に行ってはいけない」という空気が大勢を占めている。

市場の移転を巡っては、1999年4月に就任した石原都知事が2000年3月に「都は地権者(東京ガス)に対し、誠意ある対処をすべきと考えている」と語るなど、青島都政時代から候補地に挙がっていた東京ガス工場跡地の豊洲埠頭への移転方針を改めて示した。

02年7月には、都は東京ガスなどの各事業者間で、土壌汚染対策については、都の環境確保条例に基づき対応すれば、汚染を除去しなくてもいいという趣旨の「豊洲地区開発整備に係る合意」を結んだ。

東京ガスとの土地取得交渉に当たっては、当時、都の副知事に就いた濱渦氏が、前任者の福永正通副知事から引き継いで、2000年10月4日、同社を訪問。東京ガス側から土地価格を尋ねられて、「そのことは、水面下でやりましょう」とやりとりしている記録が、小池百合子都知事の改革で、“のり弁”から剥がされた開示資料によって明らかになっている。

ところが、濱渦元副知事の「水面下でやりましょう」というやりとりから、事業者に汚染対策費の負担の免責を約束した02年の合意に至るまでの2年間の交渉記録は、都庁サイドには残されていない。

また、この合意文書に都側で判を押しているのは、当時の知事本部長や港湾局長ら幹部クラスだけだ。東京ガスなどの事業者はすべて社長が判を押している重要な合意だったにもかかわらず、都知事や副知事の判がない。

交渉を担当した当時の濱渦副知事は、最近メディアで「01年7月に担当から外れたのでわからない」などと証言しているものの、現在までのところ、その根拠は示されていない。02年7月当時、知事や副知事の職にあった両氏がこの交渉や合意に関わっていたのかどうか、権限や責任などついてはどうだったのか、誰が合意を結ぶよう指示したのか、説明が求められることになるだろう。

こうして条例通りの対応を合意しただけだったのに、都は「汚染は処理された」として市場などに説明し続けた。

汚染処理費用は都だけが負担

それでも05年、都は東京ガスとの間で、02年合意に加え、基準を超える操業由来の汚染についてはAP+2mより上を除去または環境基準以下になる対策のみをとるよう求めた確認書を交わした。

つまり、2mより下に汚染の残ることが、より明確に書面化されたものだった。

結果的に、東京ガスの工事完了後の08年、都の専門家会議の再調査で、基準の最高4万3千倍のベンゼンなどが検出された。

しかし、都は06年と11年、汚染を考慮しない価格で土地を購入する。

現在起こされている住民訴訟は、全体の用地取得費のうち、11年購入分の約578億円について、「重大な汚染の残存を知っていながら、汚染対策費を負担させず、都民に損害を与えた」として、石原元都知事に請求するよう都を訴えているものだ。

土地売買契約を交わした責任

結果的に、都は土壌汚染対策工事費についても約858億円を費やした。

石原元都知事に対しては、11年に土地売買契約を交わした責任ついても問われることになる。

豊洲市場の施設を巡っては、当初、民間活用のPFI方式によって約1300億円(都の負担は約960億円)で建設するはずだった計画が頓挫し、その後、土壌汚染対策費も含めた総事業費は、6000億円近くに膨らんでいくことになる。

しかも、地下空間のたまり水問題や地下水モニタリング調査で明らかになった汚染の残存に対する専門家会議の方針を含めた追加対策工事費用について、今後、いったいいくらかかるのかもわからない。

この間、ここまで膨大な費用が膨れ上がる前に見直すことのできた計画でありながら、誰も歯止めをかけられなかったのはなぜなのか。

石原氏、濱渦氏以外にも、土地取得の経緯や地下水モニタリングの調査にかかわった関係者が参考人招致に応じた場合、何を語るのかも注目される。