築地市場・水産仲卸の理事長選情勢は「豊洲移転慎重」派が優勢

すでに2015年11月、約140人の仲卸から新市場への問題が次々に指摘されていた

豊洲用地(東京都江東区)への移転の可否に揺れる築地市場(東京都中央区)の業界最大の水産仲卸団体・東京魚市場卸協同組合(東卸=伊藤淳一理事長)で、1月31日に行われる理事長選挙の行方が注目されている。

理事長を投票する新理事は30日に選出されるが、新理事候補の意向などを取材したところ、現段階では「豊洲移転慎重」派の支持を幅広く受けた候補者が優勢で、これまでの「移転推進」路線をとってきた現職理事長に代わって、新たな理事長が誕生する情勢だ。

市場の空気は「豊洲に行ってはいけない」が大勢

理事長は、まず1月30日に、組合員を代表する総代会(定数86人)が開催され、総代3人が1人の理事を推薦する方法で新理事29人を選出する。理事には31人が立候補しているため、2人が落選することになり、翌31日の新理事会で、多数決によって新しい理事長が生まれる。

豊洲市場の第9回目の地下水モニタリング調査では、環境基準の最大79倍となるベンゼンなどが検出され、豊洲新市場開場後の収支は年間100億円弱の赤字になるとの試算も都から初めて算出されるなど、市場内では現在、これまで豊洲移転に前向きだった業者たちの間でも「もう豊洲に行ってはいけない」という空気が大勢を占めている。

地下水モニタリング調査のデータを検証してきた都の専門家会議の平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は、「調査は白紙の状態に戻った」として、30日から再調査を開始。少なくとも3月と4月に出る調査結果を確認する予定で、その後も「市場のみなさんが納得するまで、毎月調査を続けていく」という市場ファーストの方針を重視している。

それだけに、豊洲移転をこのまま進めるのかどうか、築地の水産仲卸業者の総意を示す象徴的なポストである理事長選挙の行方には、市場内の関係者ばかりか、小池百合子都知事も関心を寄せているという。

現職理事長と移転慎重派の一騎打ちか

現在までのところ、理事長選に立候補を表明しているのは、都の方針にのっとって豊洲移転路線を進めてきた現理事長の「オオハシ商店」の伊藤氏のほかに、移転慎重派に担がれた「大作早山商店」の早山豊氏の2人が出馬を表明していて、一騎打ちになる見通しだ。

「東京都があまりにも我々に説明してきたことと違うことばかり言ってて、誰も信じていない。盛り土も汚染も年間100億の赤字のことも、僕らはまったく聞かされてこなかった。これ以上、一般の消費者には迷惑をかけられない。移転反対とかよりも、移転はしてはいけないということだ」

そんな市場内の仲卸たちの厳しい空気に押される形で、「赤字の試算を出して会社を立ち上げることはあり得ない。移転というシナリオをつくるのは客観的に難しくなった」と言葉を選びつつ「皆の総意で決めていく」立場をとる早山氏は、現在までのところ、所属する最大業会の大物や特種物などの各業会から万遍なく支持を集めていて、圧倒的に優位な情勢となっている。

一方、現理事長の伊藤氏は、「築地再整備は困難であり、これまでの移転路線は変わっていない」としながらも、9回目の地下水モニタリングの結果を受け、専門家会議の議論などで「安全性が担保され、小池都知事から安全宣言を出して頂かないと、私たちは豊洲市場に移転できません。知事が延期を表明される前から申し上げていることです」とも説明する。

しかし、伊藤氏は現在までのところ、所属する塩干魚や鮮魚といった業会の一部しか支持をまとめきれていない模様で、厳しい選挙情勢となっている。

とはいえ、前回の理事長選では、有力とみられていた候補が選挙の直前になって突然出馬を辞退。結果的に伊藤氏が理事長に就くことになった。そんな過去の経緯から何が起こるかわからず、31日の理事長選出には、まだ流動的な要素も残されている。

もし選挙結果が情勢通りになり、現在の水産仲卸組合員の総意が理事長選という形で示されることになれば、今後の小池百合子都知事の「豊洲移転可否」に関する総合的判断や、その判断時期が早まるなどといった影響にも少なからず左右する可能性がある。