楽天の不正二重表示価格再び。”楽天自身が不正表示を推奨したのか”が争点に

楽天、元値つり上げ割引装い指示 ネット出店業者が証言」というニュースが3月20日に伝わったが、この報道に少しばかり違和感を感じている方もいるかもしれない。

なぜなら楽天は昨年11月、二重価格(正確には不正二重表示価格)が問題視され、代表取締役会長 兼 社長の三木谷浩史氏が事情説明の記者会見を行う事態へと発展。二重表示価格への対策を約束していたからだ。

このときの問題は、楽天球団がプロ野球で日本一のタイトルを獲得した際に行われた楽天日本一セールで、元の値段を引き上げることで不正に割引率が高く見えるよう掲示した業者がいたというもの。このニュースリリースにあるように一部のネット出店業者が、楽天日本一セールに出店するために不正な二重価格を入力したという説明で、同社の対応に不備があったことは認めたものの、不正表示への関与は否定していた。

楽天の説明は「ネット出店業者の暴走」だったが……

実際、この会見の直後から楽天はシステムに変更を加え、不正か否かにかかわらず二重価格が表示されないよう対策を施した。メーカー希望小売価格など正価が確認できる商品に関しては、その証拠を提示することで、現在も二重価格も表示可能になっている。しかし、ネット出店業者が自由に入力・表示させることはできない。

したがって、共同通信が伝えた「楽天、元値つり上げ割引装い指示」というニュースが正しいのであれば、おそらく11月に対策が施される前にあった事象だと考えられる。11月の会見内容も「不正な二重価格にはなっていたが、ネット出店業者側による不正な価格入力と二重価格チェック体制の不備が原因であり、楽天自身が意図したものではない」という、ニュースリリースの内容をなぞったものだった。

しかし、冒頭に挙げた報道が真実なのであれば、11月の釈明会見の整合性にも疑いがかかってくる。

記者会見については、マイナビニュースの「楽天、二重価格表示問題を説明 - 三木谷社長が謝罪」に、楽天が謝罪会見で使ったプレゼンテーションスライドが掲載されている。さらに、こちらには出店者側の視点で書かれた当時のブログが、そしてSNS上で話題になった様子のまとめもあるので、参考に読んでみると当時の事情がよくわかるだろう。

当時からネット出店業者からは「二重価格は、ここ数ヶ月だけにとどまる問題ではなく、長年に渡ってネット出店業者から不満の出ていた問題だった」という声があり、筆者も一時、何人かに話を聞いたことがある。しかし、いずれも楽天を使ってビジネスをするネット出店業者であり、報復を恐れてか店舗名を明かしての証言を取ることはできなかった。

今回の記事でも、楽天のECコンサルタント(ネット店舗の売上げを高めるアドバイスを行うエキスパートで、他のECサイトに比べ楽天が充実している理由の一つとして挙げている職種である)からの指示で二重価格を使ったと複数の証言があると伝えたものの、実店舗や証言者の名前までは挙げられていない。

ではあくまで”グレー”であり、かつて問題はあったものの、すでに対策が施されているから追求すべき問題ではないのか。筆者はかなり濃いグレーだと感じているが、このコラムでは読者に材料を提示して判断は読者にお任せしたい。当時、筆者が得た証言などを、この機会に紹介したい。いずれも事実に足ると信じるだけの取材は行ったが、いずれも匿名での証言である。

システム改変前は不正二重価格が横行

不正な二重価格とは、メーカー希望小売価格や自店の過去における販売価格実績、いわゆる”市価”のような形で商品の価値を示した上で、店舗での実売価格を表示することだ。「この価格は、これだけ安い」という指標として行われているものだが、この際に旧価格や市価を意図的に高く見積もり、割引率を高く見せかける行為は禁止されている。直近に比較対象となる価格で販売された実績がないなど、現実的ではないと判断される場合、不当二重表示価格となり景品表示法に違反する。

前述したように、楽天日本一セールにおける二重価格問題のニュースリリースが出された直後から、楽天のショップでは売価以外の価格表示が一斉に消え、システム側で登録してある旧価格/市価が表示されなくなった。改善はこれにとどまらず、高割引率の商品しか並べることができなかった楽天スーパーセールなどのイベント特設ページやダイレクトメールの書式も作り直し、画一的な割引率で縛ったセールス手法を控えるようになっている。

しかし、問題とされているのは今ではなく、それ以前に行われていたECコンサルタントによる不正二重価格の推奨だ。確かにかつての楽天市場は、探さなくとも不正二重価格を見つけられるほど、二重価格表示が常態化していた。楽天を普段から利用している消費者ならば、二重価格対策を行う前の楽天出店者が不正な二重価格を表示するのは”いつものことだった”と感じているのではないだろうか。

たとえば輸入ワイン。おおよその相場が決まっている名の知れたワイン以外にも、特定のショップだけが仕入れていたり、あるいはラベルを打ち替えてオリジナル商品としたり、あるいは樽ごと仕入れてオリジナルラベルで販売しているものなど、相場となる価格がないワインに、販売実績のない価格を表示して割引率を水増ししていると思われる店舗が、楽天には極めて多かった。

これは筆者が普段から輸入ワインのまとめ購入をしているから気付いたことだが、たとえばライバルのYahoo!ショッピングのワインショップを見ると、輸入代理店の定価設定がないものやオリジナル商品は、比較すべき元値が存在しない「オープン価格」と表示されていた。他の大手ネットショッピングモールにも、二重価格と疑われても致し方ない例はゼロではない。しかし、その目立ち度において(かつての)楽天市場は他の追従を許さないほど多かったように思う。

それもそのはずで、筆者が話を聞いた10年以上も楽天市場で出店しているという業者も、何度もECコンサルタントから「売上げを拡大のためのノウハウ」として、不正な二重価格を設定するよう勧められたと話した。その背景には、割引率の高さが商品の目立ち度や売上げにつながるよう作られていた、楽天市場のシステム的特徴があると、その業者は話した。

”割引率縛り”のセールス枠への不正出品を推奨?

現在は見直されたため見なくなったが、楽天市場の利用者ならば、楽天スーパーセールや上級会員向けの特別セールを行うプライベートセール、ダイレクトメールなどで、25%以上の割引率だけの商品が並べられていたことを憶えているだろうか。

プライベートセールに出品するには25%以上の割引率が必要というルールが、かつては設定されていた(楽天日本一セールの際には、これが77%になっていた)。ECコンサルタントから、担当店舗の売上げ実績を引き上げるため「今回は御社の製品をセールで前面に掲示したいと思いますので、この商品の定価設定を○○円にできませんか?」と直接言われることもあったという。

なぜ(一部の)ECコンサルタントは、このような不正なアドバイスを行っていたのか。その背景には次のような事情があった。

上記プライベートセールは、(二重価格を許していた当時)25%以上の割引率の商品を掲示し、特設ページでセールを実施。このとき特設ページやダイレクトメールへの掲載料は不要だが、通常の手数料課金とは別に、売上げの10%を楽天が受け取る契約となる。ネット出店業者は売上げが発生しない限り料金は支払わなくてもいいが、売上げがあればアドオンの手数料がかかりECコンサルタントの売上げとなる。これが”一部の”ECコンサルタントが不正表示のアドバイスを行っていた理由だと推察される。

また、上記のような特設ページ以外でも、不正な二重価格が横行し、常態化していたため、ネット出店業者側もアクセス数を稼ぐために不正表示をせざるを得ない状況だった。顧客は似たような商品がある場合、より高い割引率の商品を好む傾向が強く、楽天市場のシステム上もそうした視点での検索/並べ替えが可能だったからだ。前出の10年以上楽天市場に出店してきた業者は「不正表示を行わないため、二重価格の取締りについてきちんと管理して欲しいと言い続けてきました。もう10年以上になります。しかし、決して改善されることはありませんでした」と話した。

さてこうした問題は、本当に”一部のECコンサルタント”による問題だったのだろうか。取材した昨年11月当時、腑に落ちなかったことは言うまでもない。これは楽天全体の問題なのではないか?

実は週刊通販新聞が、この問題を継続的に追っている。たとえば昨年6月に「楽天の「楽天スーパーSALE」、「二重価格表示」横行か、通常価格が機能せず、「注目商品」に違法疑いも」という記事を掲載。さらに、10月に掲載された次の記事では「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2012」の受賞店舗の中に、明らかな二重価格表示を行っている店舗が少なからず存在する」と伝えていた。

「 食品を扱うA店では、「10人前のうどんセット」を「通常価格2530円のところ価格1000円」として販売( 画像(1))。同じページの宣伝用画像では「60%オフ」と記載していた。ところが、調査期間中にこの商品が2530円で販売されていたことはなかった。また、先月行われたイーグルスの優勝セール時には「80%オフの500円」と宣伝し販売。」

出典:週刊通販新聞

直近、8週間から4週間以内に販売した実績がある価格でなければ”通常価格”という表記はしてはならない。ところが、”実際に安いんだからいいじゃないか”、"一度価格を下げてしまうと売上げが落ちるのが怖くて戻せない”などなど、様々な言い訳で継続販売し、最終的に不正表示へと至ってしまう。これらをECコンサルタントが把握していなかったとは考えにくく、結局のところ楽天自身がが不正な二重価格表示を野放しにしていたことが「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2012」で表彰される店舗までが不正表示にまみれてしまった原因だと推察される。

この記事中でも、売上げ急伸しているライバル店が不正な二重価格で仕掛けていることをECコンサルタントに相談、通報しても、なんら対策がされなかったという苦情が紹介されている。筆者の取材とピタリ符合しており、ここでもまた”二重価格戦略が止む気配がなかった”と伝えている。

モールの運営者である楽天が、二重価格を公認していると思わざるを得ない状況の中にあって売上げを出して行くには、自分たちも二重価格を打つしかない。もちろん、ネット出店業者側のモラルに問題がないとは言わないが、全体の構造を俯瞰した上で考えるとき、楽天の運営方針そのものに問題があると言えよう。

実はこの記事が掲載された後、楽天市場の契約者に向けて不正な二重価格表示を行わないよう連絡がされ、出店者向け管理画面にログインする直前に周知を行うための画面が表示されるようになっていた。しかし、不正表示そのものはその後も可能なまま放置され、ECコンサルタントのアドバイスも続き、日本一セールの会見まで改善はされなかった

”楽天ばかり”が批判を集めるのはなぜ?

ところで、今回この話題が楽天日本一セールの謝罪会見があってから約4ヶ月を経て、ふたたび注目を集めた理由は何なのだろうか。前述したように、楽天が二重価格の表示を行わなくなった後も、他のECサイトではでは不正な二重価格表示が疑われる商材が残っている。

たとえばフルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)を通じてAmazon.co.jpでスマートフォンアクセサリを販売するあるメーカーは自身がセラーとなり、Amazon.co.jpを通じて商品を販売する一方で他の店舗には一切製品を流通させていない。確かに売価を見れば充分にお買い得なのだが、割引率の元になっている価格はAmazon.co.jp以外で販売されていないため販売実績がない。すなわち不正な二重価格だと考えられたる。しかし、このセラーに価格表示の根拠について問い合わせても、回答は得られなかった。

このような事例もあるため「なぜ楽天ばかりが」という声も耳にする。しかし、今回の報道は事実上の不正な二重価格表示が放置されていた……といった話ではなく、ネット店舗の運営アドバイスを行うECコンサルタントが、顧客に不正表示をアドバイスしたというのだから、やはり別問題と考えるのが妥当だろう。

過去の問題に蓋をし、黙して語らず、沈静化を待つといった、後味のスッキリしない終わり方だけは避けて欲しいものだ。