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「なぜ殺す」「かわいそう」クマ駆除に抗議殺到 法的問題は? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

北海道や東北などで野生のクマが増え、彼らに襲われて死傷する人的被害のほか、畑や民家が荒らされる財産的被害が相次いでいます。前者に限っても、10月末時点ですでに180人と過去最悪のペースです。

被害におびえる住民からは「クマを何とかしてほしい」といった切実な要望が出ており、鳥獣保護管理法などの法令に基づき、自治体がやむなく駆除する例もあります。

一方で、そうした自治体には「なぜ殺す」「かわいそう」といった抗議の電話が殺到し、通常の業務に支障をきたすほどになっています。クマが生息していない地域からのものが多く、氏名を名乗らず一方的に意見を述べるほか、同一とみられる人物が何度も抗議するケースもあるとのことです。

人間と野生動物との共生や彼らの駆除を巡り、さまざまな法的問題が浮き彫りになっていることから、参考となる記事をまとめました。

▼野生動物の狩猟を可能とする鳥獣保護管理法と現代的な価値観に基づく動物愛護管理法との間の「ねじれ」が背景に

▼麻酔銃を撃てるのは獣医師らに限られる上、射程距離が短く、連発できず、クマを興奮させるリスクもあるなど、捕獲は非現実的

▼苦情で不満を発散し、勢い任せで怒りをぶつけても何も解決せず、気持ちも晴れず、誰も得しないと犯罪心理学者は指摘

▼着信回数やその内容、時間帯などから悪質な迷惑電話だと認められれば、偽計業務妨害罪に問われる可能性も

専門家によると、20世紀末と比べてクマの個体数が4~5倍に増えている上、エサとなるドングリ類の凶作やこれを食い合う他の野生動物の増加、温暖化などの影響でクマが人里まで下りてきており、2年後には今年以上の大出没が予想されるとのことです。被害に悩む自治体からは、国に法改正や財政的な支援を求める声が上がっています。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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