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「水曜日のダウンタウン」シートベルト外して選挙カー箱乗りでもOK 本当か?

前田恒彦元特捜部主任検事
(提供:イメージマート)

 TBS「水曜日のダウンタウン」で鈴木宗男議員がシートベルトを外し、選挙カーの助手席から身体を乗り出し、箱乗りしたり、窓枠に立って手を振る姿が放映され、「だんじり」「ヤッターマンの出動」などと話題だ。

シートベルトはセーフ

 ただ、気になったのは、番組内で「選挙期間中とはいえ、あそこまでいっていいもんなんですね?」という問いが出たのに対し、プレゼンテーションを行った出演者が「いいんですよ」と断言していた点だ。

 選挙カーも道路交通法が規制する「自動車」だから、本来、ドライバーは自らシートベルトを装着し、同乗者にも装着させなければ運転できない。罰則はないが、運転席や助手席だと違反点数は1点になる。

 もっとも、道交法やその施行令には、装着義務に対する様々な免除規定がある。郵便集配中の集配車、緊急時のパトカーや消防車、救急車などのほか、選挙運動中の選挙カーもその一つだ。

 候補者や選挙運動員は、選挙運動のために選挙カーを運転したり同乗したりする場合、シートベルトを装着しなくても構わない。顔を出して有権者に手を振ったり、握手するために頻繁に乗り降りするからだ。その意味で、シートベルト非装着の限度では番組の内容は正しい。

箱乗りはアウト

 しかし、上半身全てを窓から乗り出し、窓枠に腰掛けるような箱乗りはアウトだし、それこそ助手席の窓枠に立つといった危険な乗り方は論外だ。道交法は、原則として運転席や助手席など乗車のために設備された場所以外のところに乗ることを禁止しているし、ドライバーの視野やハンドル操作を妨げ、車両の安定を害する乗り方も許していない。違反したら最高で罰金5万円だ。

 また、道交法は、道路における交通の危険を生じさせたり、著しく交通の妨害となるおそれがある行為も禁止している。その具体的な内容は都道府県の道路交通規則に委ねられているが、東京都や大阪府、北海道など、進行中の車両からみだりに身体を出すことをその1つとしている自治体も多い。これも5万円以下の罰金だ。

 さらに、道交法は、ドライバーに対し、道路や交通、車両の状況などに応じ、他人に危害を及ぼさないような方法で運転する義務を課している。箱乗りや「だんじり」のような乗り方だと、同乗者が振り落とされたり、周囲の市民らに衝突させるおそれもある。最高刑は懲役3ヶ月であり、先ほどの罰則よりも重い。

実際は見て見ぬふり

 選挙管理委員会も、立候補予定者説明会などの際、箱乗りは交通違反だからやらないようにといった注意喚起をしている模様だ。それでも、選挙戦が白熱してくると、窓から身体を大きく乗り出し、箱乗りに至るような候補者も現にみられる。

 とはいえ、警察はそうした違反行為があれば適切な取締りを実施すると述べているものの、実際には見て見ぬふりをしており、検挙するようなことはない。せいぜい指導を行う程度だ。選挙妨害だといった批判を避けるためだろう。

 冒頭で挙げた鈴木議員の件も、3年以上前の古い選挙の際の映像であり、すでに時効となっている。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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