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新型コロナ 流行状況をどのように把握すれば良い?

忽那賢志感染症専門医
(提供:イメージマート)

新型コロナが5類感染症になってから、流行状況をリアルタイムに把握することが難しくなっています。

どのような情報源から流行状況を知れば良いのか、知っておきましょう。

定点報告になってからは前週の報告数が木曜日に発表される

5類感染症になる前までは毎日夕方にその日の新型コロナの感染者数と死亡者数が報告されており、この新規感染者数数が毎日ニュースに流れていました。

私もときどき夕方のテレビ番組に出た際に、夕方の決まった時間に毎日発表される東京都の感染者数ついて、アナウンサーの方に「忽那先生・・・今日のこの数値をどう見ますか?」と聞かれては、「はい、昨日より多いですよね(キリッ)」とか誰でも言えるコメントを言ったりしていました。

定点報告の集計対象の日と報告される日(筆者作成)
定点報告の集計対象の日と報告される日(筆者作成)

新型コロナが5類感染症となった5月8日以降は、定点報告と呼ばれる報告体制に移行しています。

定点報告数とは、定点医療機関と呼ばれる各都道府県で指定されている医療機関で、ある週の月曜日から日曜日に報告された新型コロナの平均報告数のことであり、翌週の木曜日に発表されます。

したがって、これまで即日に把握できていた流行状況が、約1週間遅れるということになります。

新型コロナウイルス感染症定点当たり報告数推移(7月10日〜16日の週まで. 内閣官房ホームページより)
新型コロナウイルス感染症定点当たり報告数推移(7月10日〜16日の週まで. 内閣官房ホームページより)

日本全国の定点報告数の推移は内閣官房のホームページなどに掲載されています。

現在の最新の報告数は7月10日〜16日で週で11.04となっています。

また、各都道府県も同様に定点報告数を発表しており、例えば大阪府の定点報告数はこちらから知ることができます。

単純に比較することはできませんが、インフルエンザであれば10を超えれば「注意報レベル」、30を超えれば「警報レベル」となっています。第8波の時期はまだ定点報告ではありませんでしたが、さかのぼって同じ算出方法で計算すると、第8波のピーク時には約30であったことが分かっています。

私の勤務している大阪府でも10を超えていますが、すでに医療機関や高齢者施設のクラスターが続発している状況です。

また新型コロナが5類感染症になってから大きな流行を迎えた沖縄県の定点報告数はピーク時に48.39となっており、30を大幅に上回っています。沖縄県における今回の流行における医療の逼迫については皆さんご存知のことと思います。

例えば定点報告数が10を超えるなど流行が悪化してくると、よりリアルタイムに流行状況を把握し、感染対策強化の目安にするのが望ましいと考えられます。

それでは、5類感染症になった現在、新型コロナの流行状況をリアルタイムに把握するにはどうしたら良いのでしょうか?

流行状況をリアルタイムに把握する方法は?

札幌市における下水サーベイランスの推移(札幌市ホームページより)
札幌市における下水サーベイランスの推移(札幌市ホームページより)

まず最も参考になると考えられるデータは、下水サーベイランスです。

下水サーベイランスとは、新型コロナ感染者から便などに排出されるSARS-CoV-2を検出することにより地域の流行状況を知る、という手法です。

集団レベルでの感染状況をリアルタイムで監視でき、これにより感染が拡大しているかどうかを早期に予測し、対策を講じることが可能となります。

下水サーベイランスの有用性については、すでに多くの知見が得られており、新型コロナの流行状況を鋭敏に把握することができることが分かっています。

欠点としては、下水サーベイランスを行っている地域が限られており、それ以外の地域における流行状況については分からない、ということです。

また数値にバラつきもありますので1回の測定では流行を判断することは難しく、何回か測定された結果を総合的に判断する必要があります。

現在も札幌市神奈川県などの自治体が行っており、これらの下水サーベイランスを行っている地域ではぜひ流行状況の参考にしてください。

https://moderna-epi-report.jp/
https://moderna-epi-report.jp/

もう一つ流行状況を把握するための情報源として、モデルナ・ジャパンが作成している「新型コロナ・季節性インフルエンザ リアルタイム流行・疫学情報」があります。

これはJAMDAS(日本臨床実態調査)という医療データの傷病名を元に感染者数を推計したものであり、流行状況を早期に知るために非常に有用なツールとなっています。

特定の地域ではなく全国各地の流行状況の推計値を知ることができます。

流行状況に合わせてメリハリのある感染対策を

5類感染症になっても新型コロナという感染症そのものは変わっておらず、今もまだ社会の中で流行を起こしています。

「5類になったから感染対策は一切不要」とか「これからもマスクはいつでもずっと着けっぱなし」という極端なものよりも、流行が落ち着いている時期には感染対策を緩め、流行状況が悪化している時期には屋内でのマスク着用など感染対策を強化する、といったメリハリのある感染対策が重要です。

そのためには、ご自身の地域における新型コロナの流行状況を把握するための情報源を知っておきましょう。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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