日本は2週連続で世界最多の新型コロナ新規感染者数を記録しています。

これだけマスクを着けている日本で感染者数が増えていることに関連して、マスクの効果に疑問を抱いている方もいるようです。

今、日本で新規感染者数が世界で最も多いのは、マスクの効果がないためでしょうか?

日本の新規感染者数は世界最多

日本国内における新型コロナ新規感染者数および死亡者数の推移(Yahoo!JAPANより)
日本国内における新型コロナ新規感染者数および死亡者数の推移(Yahoo!JAPANより)

現在、日本国内では1日20万人を超えるペースで新規感染者数が報告されています。

日本、2週連続で世界最多 コロナ新規感染者数、全体の2割占める

世界各国の新型コロナ新規感染者数の推移(Our World In Dataより)
世界各国の新型コロナ新規感染者数の推移(Our World In Dataより)

確かに7月以降、日本の新型コロナ新規感染者数は急激に増加しており、欧米や東アジア諸国と比べても多くなっています。

これまで新規感染者数・死亡者数を低く抑えてきた日本でここまで新型コロナが拡大しているのはなぜでしょうか?

厚生労働省のアドバイザリーボードの資料では、現在の流行の要因について、

・ワクチン接種からの時間経過による感染予防効果の低下

・人流の増加

・オミクロン株亜系統BA.5の拡大

・エアコン使用による換気の低下

などが挙げられています。

しかし、感染力が強いBA.5が広がっているのは海外も同じはずです。

それなのに日本でここまで感染者数が増え、海外では日本ほどは増えていないのはなぜでしょうか。

アメリカではオミクロン株に対して80%以上が免疫を持っている

2022年2月までのアメリカ国民のN抗体陽性率の推移(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:606-608.より)
2022年2月までのアメリカ国民のN抗体陽性率の推移(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:606-608.より)

人口3.3億人のアメリカではこれまでに9000万人以上が新型コロナの感染者として報告されていますが、これは検査によって診断された症例のみが含まれています。

オミクロンの流行の最中である2022年2月に行われたアメリカ全土の調査では、アメリカ国民の57.7%が過去に新型コロナに感染した証拠となるN抗体が陽性でした。特に0〜17歳の世代では7割を超えていました。

特にオミクロン株が広がって以降、急激に上昇しており、現在アメリカ国民の8割がオミクロン株に対する免疫を持っているという試算もあります。

2022年2月に日本全国で実施されたN抗体保有率調査(第82回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より)
2022年2月に日本全国で実施されたN抗体保有率調査(第82回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より)

ちなみに同じくオミクロン株による第6波のピークを超えた2022年2月に日本で行われた調査では、日本人のN抗体陽性率は4.27%と報告されており、この時点でアメリカは国民の大部分がオミクロン株に感染し、日本ではオミクロン株を主流とした第6波でも感染者数はそれほど多くは増えなかったことが分かります。

オミクロン株前の変異株、オミクロン株BA.1/BA.2に感染した人の、BA.5/BA.5に対する効果(doi: https://doi.org/10.1101/2022.07.11.22277448)
オミクロン株前の変異株、オミクロン株BA.1/BA.2に感染した人の、BA.5/BA.5に対する効果(doi: https://doi.org/10.1101/2022.07.11.22277448)

BA.5に対してはワクチンによる感染予防効果ももちろん重要な要素ですが、従来の変異株と比べると効果が低下しており、また時間経過とともにさらに低下していきます。つまりワクチン接種をしている人は、重症化はしにくいものの感染することはあるということになります。

一方、同じオミクロン株であるBA.1やBA.2に感染した人は、同じオミクロン株であるBA.5に対しては8割近い感染予防効果があり、感染リスクは約5分の1となります。

アメリカでは多くの人がすでにオミクロン株(BA.1/BA.2/BA.2.12.1)に感染していることから、現在は爆発的な感染には至っておらず、一方で日本は第7波の前までにオミクロン株に感染した人がアメリカよりも多くなかったことから、感染が広がる余地が大きかったということになります(ただし過去の感染による免疫も時間経過とともに減衰しますし、新しい変異株が出現した場合にはアメリカでも再び多数の感染者が出ることになり得ます)。

そんな中に、感染力の極めて強いBA.5が拡大したため今これだけ感染者が増えてしまっていると考えられます。

これに加え、オミクロン株の拡大以降、世界的に検査数の減少が指摘されています。 

実際には報告されていない感染者が多く存在し、過小評価になっている可能性が指摘されています。

マスクは新型コロナの感染対策に効果がないのか?

以上のことから、日本での感染者数が他国と比べて多いことの要因の一つとして、これまでのオミクロン株に感染した人の多さの違いがあると考えられます。

ではマスク着用の遵守率は感染者の増加にどれくらい寄与しているのでしょうか?

ユニバーサルマスキングによる感染リスクの低減(DOI: 10.1126/science.abc6197より)
ユニバーサルマスキングによる感染リスクの低減(DOI: 10.1126/science.abc6197より)

新型コロナウイルス感染症では、咳などの症状がある人だけでなく、症状のない感染者からも感染が広がります。

このため、症状のない人も含めてマスクを着用する「ユニバーサルマスキング」という概念が新型コロナ以降の感染対策として定着しました。

マスクの種類と感染予防効果(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:212–216.より )
マスクの種類と感染予防効果(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:212–216.より )

お互いが不織布マスクを装着することで、非感染者が感染者から浴びるウイルスの量が7割減ったという実験結果があります。

実際のマスク装着の効果を検証したアメリカのカリフォルニア州での研究では、屋内でのマスク着用の遵守状況と感染しやすさを比較していますが、布マスクでは56%、不織布マスクでは66%、N95/KN95マスクでは83%感染が減ったと報告されています。

屋内でマスクを装着することで感染リスクが低下することは、エビデンスレベルが高い複数の研究のメタ解析でも示されており、科学的に信頼性が高いと言えます。

前述の通り、感染者が増える要因には流行している変異株の性質、ワクチン接種率、過去に感染した人の多さ、人流などさまざまな要素があります。

したがって、今の流行状況だけを見て「マスク着用に効果はない」という事はできませんし、むしろ屋内でのマスク着用は感染予防策として有効である、と科学的には証明されています。

マスクだけでなく、他の予防策と組み合わせた感染対策を

ただし、マスクを装着していても飛ぶ飛沫や浴びる飛沫がゼロになるわけではないですし、普段マスクを着けている人も食事の時にはマスクを外しますので、感染対策についてもマスクだけしていれば良い、というものではなく、マスク着用はあくまで複数ある感染対策の一つとして考えるべきです。

こまめな手洗い、テレワーク、そしてワクチン接種など複数の対策を組み合わせるのこで、より感染リスクを下げることができます。

流行状況が悪化している今、一人ひとりの感染対策を徹底することでなんとかこの流行を乗り越えていきましょう。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)