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新型コロナ 新規感染者数が再増加に転じる 第7波の規模を抑えるためにできることは?

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

2月上旬をピークに新規感染者数は緩徐に減少していましたが、年度を挟んで再増加に向かいつつあります。

第7波の規模を抑えるために、今後私たちが気をつけるべきことについてまとめました。

全国の新規感染者数が再増加に転じる

全国の新規感染者数の推移(第78回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より)
全国の新規感染者数の推移(第78回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より)

全国の新規感染者数は、直近の1週間では10万人あたり約240人で、今週先週比が1.04となり、増加傾向となっています。

首都圏、関西圏、中京圏、その他の地域のいずれでも同様の傾向となっており、今後のさらなる増加が懸念されるところです。

東京での検査陽性率のの推移(東京都 モニタリング項目の分析 令和4年3月31日公表)
東京での検査陽性率のの推移(東京都 モニタリング項目の分析 令和4年3月31日公表)

なにかの間違いで増えたわけではなく、実際の流行状況を反映する指標である検査陽性率や接触歴等不明者数・増加比といった指標も東京都や大阪府で再増加しており、リバウンドの可能性が高そうです。

大阪府の年代別の新規感染者数の推移(大阪府資料より)
大阪府の年代別の新規感染者数の推移(大阪府資料より)

また各地域で20代・30代といった世代の新規感染者に占める割合が増加していることも、これまでの流行開始の状況と同様です。

第7波への備え」という記事でも書きましたが、第6波はピークを過ぎた後も、第5波の後のようには急激には減りきらず、減少速度は非常に緩慢です。

これは、オミクロン株に対してはワクチンによる感染予防効果が落ちており感染の連鎖を断つことが難しいこと、第6波では10代以下の若い世代での感染者が多く感染伝播が維持されていることなどが原因と考えられます。

そこに、

・まん延防止等重点措置の解除

・年度末・年度始めのイベントに関連した感染

・オミクロン株BA.2の拡大

といった要因が加わることで再増加に向かっているものと考えられ、このまま第7波の流行が始まってしまう可能性が高そうです。

第7波の規模を小さくするためにできることは?

「おいおい、第6波が終わったと思ったらもう第7波とか言ってんのかよ・・・もう限界なんだけど!」と思われている方も多いと思います。

実際に、第6波の致死率はこれまでと比較して最も低くなっており、個人個人にとっての重症化リスクは低くなってきています。

いつまでも「会食ダメ!Stay Home!」とか言ってる段階でなくなってきていることは明らかです。

一方で、第6波の死亡者数は過去最大となりました。

亡くなる人の割合が減ったものの、母数となる感染者の数が圧倒的に増えすぎたため、このような結果となってしまいました。

特に高齢者における死亡者が増えたことから、今後はこれらの重症化リスクの高い方々への対策に重点が置かれることになります。

第7波に備えて各地域では高齢者・基礎疾患のある方のブースター接種や、高齢者施設の対策も進んではいますが、やはり感染者数がどこまでも増え続けることを許容できる状況にはまだ至っていません。

問題は、やはり新規感染者数が十分減りきらないまま再増加に転じていることです。

今の1日40000人以上という新規感染者数は、2021年8月の第5波のピークであった約25000人よりも多いところから増加に向かっていることになります。

ちょうどBA.1からBA.2への置き換わりと同じタイミングで再増加に向かっており、第6波以上の流行が起こる可能性が懸念されます。

典型的な新型コロナ感染の連鎖(Furuse et al. J Infect . 2022 Feb;84(2):248-288.)
典型的な新型コロナ感染の連鎖(Furuse et al. J Infect . 2022 Feb;84(2):248-288.)

できる限り社会機能を維持しながら今後の流行の規模を小さくするためには、メリハリのある感染対策を今のうちから継続的に行っていくことが重要です。

ほとんどの感染者は誰にも感染させずに回復している一方で、一部の人がたくさんの人に感染させてクラスターを生じさせているのが、この新型コロナの特徴です。

この「1人からたくさんの人」への連鎖が生じることで、感染者の急激な増加に繋がります。

特にマスクを外して長時間、たくさんの人が飲食を行うような歓迎会のような場はこうした状況が発生しやすくなります。

各自治体によってルールが異なりますが、例えば大阪府は以下のような感染対策をお願いしています。

特に、歓送迎会、謝恩会、宴会をともなう花見、などの感染リスクの高い会食では感染防止対策を徹底すること

・同一テーブル4人以内

・2時間程度以内での飲食

・マスク会食の徹底

感染防止対策(3密の回避、マスク着用、手洗い、こまめな換気等)の徹底

このように今後は、人数・時間をある程度制限した上で会食を楽しむ、など持続可能な日頃からの基本的な感染対策を行っていきながら、まん延防止等重点措置などの強い対策を講じずになんとか社会機能を維持していくことが重要になります。

また、新型コロナワクチンのブースター接種によって感染予防効果を再び高めることができますので、対象となる方はぜひ接種をご検討ください。ただし、ワクチンだけで感染を防ぎ切ることは困難であり、ワクチン接種後もこれまで通りの感染対策は続けるようにしましょう。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生)

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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