ペルーで最初に見つかった「ラムダ型」と呼ばれる変異ウイルスが南米を中心に徐々に拡大しています。

ラムダ型変異ウイルスについて現時点でどんなことが分かっているのでしょうか。

ラムダ型変異ウイルスの検出状況は?

それぞれの変異ウイルスの検出状況(2021年7月31日現在の情報に基づき筆者作成)
それぞれの変異ウイルスの検出状況(2021年7月31日現在の情報に基づき筆者作成)

ラムダ型変異ウイルス(C.37)は2020年8月にペルーで最初に見つかりました

その後、南米を中心に拡大し、7月31日時点で31カ国で見つかっています。

中でもペルー、チリ、エクアドル、アルゼンチンなどの南米の多くの国で見つかっており、特にペルーでは新規感染者の9割以上がラムダ型によるものと言われています。

世界的な拡大を受けて、WHOは2021年6月14日にこの変異ウイルスを「ラムダ」と名付け「注目すべき変異ウイルス(VOIs; Variant of Interest)」に指定しました。

7月31日現在、日本ではまだラムダ型変異ウイルスは見つかっていません(※本記事を投稿後、国立感染症研究所よりGISAIDに本邦1例目のラムダ型変異ウイルス感染事例が報告されました)。

ラムダ型変異ウイルスの特徴は?

これまでの変異ウイルスには、感染性が強くなると考えられている「N501Y」、ワクチン効果の低下や再感染のリスクが高くなると考えられている「E484K」などの変異が知られています。

ラムダ型変異ウイルスにはこれらの変異はありませんが、スパイク蛋白の特徴的な変異として、G75V、T76I、del247/253、L452Q, F490S, D614G, T859Nという7つの遺伝子変異があります。

しかし、これらの変異がウイルスにどのような変化をもたらすのか、現時点では情報が限られています。

ラムダ型の感染力は?

チリにおけるそれぞれの変異株の占める割合の推移(GISAIDより)
チリにおけるそれぞれの変異株の占める割合の推移(GISAIDより)

武漢から世界中に広がった従来のウイルスと比べると、感染力が増強しているのではないか、という実験室レベルの研究が報告されてきていますが、まだデータは限られています。

日本の研究チームからは、前述の7つの遺伝子変異のうち「T76I」「L452Q」という2つの変異によって感染力が強くなっている、とする査読前の研究が掲載されています。

ペルーの隣国であるチリでは、2021年1月頃からラムダ型変異ウイルスが侵入し、拡大しており2021年7月現在チリ国内で報告されている新型コロナウイルスの約3割を占めています。なお、残りの約7割は同様に2021年1月頃からチリ国内で拡大してきたブラジル由来のガンマ型変異ウイルスとなっています。

これまでのところ、感染力が非常に強いことが分かっているデルタ型がすでに広がっている国や地域にラムダ型が侵入し広がった事例は確認されていません。

ラムダ型の重症度は?

新型コロナ流行下のペルー
新型コロナ流行下のペルー写真:ロイター/アフロ

これまでにアルファ型変異ウイルスやデルタ型変異ウイルスでは、従来のウイルスと比較して感染した場合に重症度が高くなるとされていました。

ラムダ型変異ウイルスに感染した場合にも従来よりも重症度が高くなるのかについてはまだよく分かっていません。

世界で最初にラムダ型変異ウイルスが見つかり、現在検出される新型コロナウイルスの9割以上がラムダ型変異ウイルスになっていると言われるペルーでは、これまでに人口3300万人のうち、0.57%にあたる約19万人が新型コロナウイルス感染症で亡くなっていますが、これがラムダ型変異ウイルスによるものかは不明です。

医療へのアクセス、診療体制など様々な要因が影響しているものと考えられます。

ラムダ型のワクチンへの影響は?

ベータ型、ガンマ型、デルタ型のそれぞれの変異ウイルスは、ワクチンの効果が低下することが分かってきています。

ラムダ型変異ウイルスについても、中和抗体に対する抵抗力が強くなっているとする実験室での研究があり、またベータ型よりもさらにワクチン効果が落ちるのではないかとする研究もあり、多少なりともワクチンの効果が落ちる可能性はあるようです。

ただし、リアルワールドにおいてワクチン効果がどの程度落ちるのかは現時点ではっきりと分かっていません。

チリで行われたSinovac社の新型コロナワクチンCoronaVacの有効性を検証した臨床研究では、CoronaVacの発症予防効果は65.9%、重症化予防(入院の予防)効果は87.5%と報告されていますが、チリではこの期間ガンマ型変異ウイルスが28%、ラムダ型変異ウイルスは27%を占めていた(※ゲノム解析が行われたウイルスのみ)とのことです。

変異ウイルスが出現する前に行われたトルコのCoronaVacの第3相試験では、発症予防効果が83.5%であったとのことであり、ガンマ型とラムダ型が広がっていたことがチリでのワクチン効果低下に影響した可能性はありそうです。

ラムダ型変異ウイルスは現時点でどれくらい脅威なのか?

アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、ラムダ型変異ウイルスの感染力、重症度、ワクチン効果低下の比較(筆者作成)
アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、ラムダ型変異ウイルスの感染力、重症度、ワクチン効果低下の比較(筆者作成)

以上のように、ラムダ型変異ウイルスについてはまだ分かっていないことが多く、現時点ではどれくらいの脅威であるのか判断することは難しい状況です。

現在ラムダ型変異ウイルスが広がっているペルーやチリでの、今後のさらなる情報が待たれます。

また、世界中で問題になっているデルタ型変異ウイルスと、このラムダ型変異ウイルスが同時に広がっている国はまだなく、今後そういった国が出てくれば相対的な感染力、重症度、ワクチン効果への影響などが明らかになってくると考えられます。

日本国内では2021年7月31日現在、まだラムダ型変異ウイルスの報告はありません(※本記事を投稿後、国立感染症研究所よりGISAIDに本邦1例目のラムダ型変異ウイルス感染事例が報告されました)が、国内での拡大を防ぐためにはゲノム解析のサーベイランスによって早期検出と拡大防止が重要です。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】