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過去に新型コロナに感染した人はワクチンを接種すべきか?

忽那賢志感染症専門医
(写真:つのだよしお/アフロ)

日本国内には2021年3月28日時点で新型コロナ感染者数が46万人を超えています。

これらの過去に新型コロナに感染した方々はワクチンを接種すべきなのでしょうか?

一般的に感染症に罹ると免疫ができる

感染症に感染すると免疫ができます。

例えば、麻しん(はしか)や風しん、水痘(水ぼうそう)などに感染すると、多くの人では生涯これらの感染症に罹らなくなります。

これは、感染によって作られた免疫が長期間持続するためです。

一方、性感染症である梅毒のように、一度感染しても何度でも感染する感染症もあります。

新型コロナに再感染は起こり得るのか?

一度新型コロナに感染した人が一度PCR検査が陰性になった後、再びPCR検査が陽性になることがあります。

しかし、この2回目のPCR陽性は必ずしも再感染を意味するものではありません。

新型コロナの症状がよくなり、PCR検査で陰性を確認してから退院した後(※現在は変異株の患者以外はPCR陰性を確認する必要はありません)、PCRが再び陽性となることはしばしば経験されます。

しかし、多くの場合はPCR検査によって「ウイルスの残骸」を検出したものであり、再感染を意味するものではありません。

再感染を証明するためには、1回目と2回目の感染で異なるゲノム配列を持つウイルスが証明されないといけないため、医療機関では証明が困難です。

海外では60例以上の再感染例と、16000例以上の再感染疑い例が報告されています。

日本国内でも再感染が疑われる事例はありますが、上記のように証明が難しいため、異なるゲノム配列の新型コロナウイルスによる感染が証明された症例は報告されていないようです。

一度新型コロナに感染した人は免疫ができるため2回目の感染では1回目の感染よりも軽症になることが期待されます。

実際に海外の再感染例では、多くが2回目の方が軽症のようです。

しかし、少なくとも免疫が弱っている人では2回目の方が重症化することがあるようです。

一度罹ったらどれくらいの期間罹りにくくなるのか?

これまでの再感染の報告からは、最初の感染から少なくとも90日くらいは再感染が起こりにくいことが分かっています。

では、1回目の感染によってどれくらいの期間、免疫が保護的に働くのでしょうか?

デンマークから、第1波(2020年6月以前)でPCR検査をして陽性だった人、陰性だった人を追跡調査し、第2波(2020年9月から12月)のPCR検査で陽性だった人、陰性だったを解析することで初回の感染が再感染を防ぐ効果を検証した研究が報告されました。

この研究では、過去の感染による保護効果は80.5%であり、感染したことがない人よりも感染するリスクが5分の1になる程度とのことです。

また65歳以上の高齢者では、この保護効果が47.1%にまで落ちるとのことです。

対象の集団、評価している期間、評価方法が異なるため単純な比較はできませんが、新型コロナワクチンの一つであるファイザー者のmRNAワクチンの発症予防効果が95%であることを考えると、特に高齢者においてはワクチンの方がより強く免疫を賦活できるのかもしれません。

過去に新型コロナに感染した人はワクチンを接種すべきか?

過去に新型コロナに感染した人も、特に高齢者においては再感染することがあるようです。

ではこのような過去に感染したことがある人が新型コロナワクチンを接種するとどうなるのでしょうか?

感染したことがない人とある人のmRNAワクチン1回接種後の抗体価の推移(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことがない人とある人のmRNAワクチン1回接種後の抗体価の推移(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

フランスで行われた、過去に新型コロナの既往のある人とない人それぞれに、mRNAワクチンを接種し、抗体価の推移をみた研究が報告されています。

過去に新型コロナの既往がある人は、初回の接種前から抗体価が高いのですが、初回の接種によってさらに抗体価が上昇し、過去に感染したことがない人よりも10〜45倍の抗体価を示しています。

また同様の研究で、1回目の感染が無症候性感染であった人も、1回のmRNAワクチン接種で十分な抗体価上昇がみられた、という研究も報告されています。

副反応については、過去に感染したことがない人よりも局所の疼痛や倦怠感、発熱などの頻度が高かったようです。

感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

これらの結果が意味することは、過去に新型コロナに感染した人もmRNAワクチンを接種することで、より強い免疫を獲得することができ、副反応の頻度は増えるものの安全に接種が可能である、ということです。

感染によってできた免疫が、ワクチン接種によって追加効果が得られる、ということになります。

今後のワクチンの供給状況によっては「過去に感染したことのある人は、他の人よりも接種開始を遅らせる」という選択肢もあるかもしれませんが、現時点では感染したことのない人と同様のスケジュールで良いと考えられます。

また、過去に感染した人は1回で十分な抗体価が得られるのであれば、2回の接種は不要であり1回で十分ではないか、と思われる方もいらっしゃるかと思います。

しかし、これについてはまだ統一された見解はなく、現時点では他の方と同様に2回の接種が推奨されています。

個別の事例については、かかりつけ医に相談するようにしましょう。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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