「新型ブニヤウイルス感染症」は日本国内でも SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは

マダニ(筆者がゲット&撮影)

先日「中国から新型ブニヤウイルスで7人死亡」というニュースが報道されました。

中国で「新型ブニヤウイルス」7人死亡…60人が感染

新型コロナに続き、中国からどんどん新しい感染症が見つかって大変なことになっている・・・と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、どうやらこの「新布尼亞病毒(新型ブニヤウイルス)」はSFTSウイルスのことのようであり、そうだとすると既知の感染症ということになります。

SFTSのことだとすれば、日本でも西日本を中心に今も年間100人の方が感染し、27%の方が亡くなられている感染症です。

SFTSとはいったいどのような感染症なのでしょうか。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは

SFTS ウイルスのヒトへの感染経路(重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) 診療の手引き2019より)
SFTS ウイルスのヒトへの感染経路(重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) 診療の手引き2019より)

SFTSという感染症は2011年に中国で見つかった感染症です。

2013年1月には山口県でも国内初症例が報告され、日本でもSFTSに感染しうることが分かりました。

SFTSはSFTSウイルスによって起こるウイルス感染症であり、主にマダニに吸血されることによって起こります。

マダニの中でもフタトゲチマダニ、タカサゴキララマダニというマダニからの吸血によってSFTSに感染すると考えられています。

筆者がゲットし瓶詰めにしたフタトゲチマダニたち
筆者がゲットし瓶詰めにしたフタトゲチマダニたち

このマダニに吸血されて感染する以外に、SFTSウイルスに感染したイヌやネコなどのペットから感染する事例も報告されています。

日本でのSFTSの発生状況は?

SFTS患者の推定感染地域(国立感染症研究所 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要より)
SFTS患者の推定感染地域(国立感染症研究所 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要より)

日本では、西日本を中心に年間約100例の患者が報告されています。

このように西日本に明らかに偏っている理由として、マダニがSFTSウイルスを保有している頻度が高いためと考えられています(東日本のマダニからSFTSウイルスが見つかることはあります)。

シカやイノシシなどの野生動物でも同様に西日本の方がSFTS抗体の陽性率が高い傾向にあります。

最も東側でSFTSが報告されている都道府県は、石川県、滋賀県、三重県です。

しかし、近年徐々に発生地域が東側に移動してきています。

なお、西日本で感染しても東日本で発症するというパターンもあり(筆者も東京で1例経験しています)、東日本でも国内旅行歴がある患者では注意が必要です。

2013年以降に国内で報告されているSFTS症例の発生時期(国立感染症研究所 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要より)
2013年以降に国内で報告されているSFTS症例の発生時期(国立感染症研究所 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要より)

発生時期には季節性の変動があり、5月から9月くらいまでの温かい時期に多く報告されていることが分かりますが、これはマダニの活動性によるものです。

今の真夏の時期はSFTSが最も多く報告される時期です。

SFTSの症状は?

SFTSでよくみられる症状 発熱、頭痛、下痢、倦怠感など(いらすとやより)
SFTSでよくみられる症状 発熱、頭痛、下痢、倦怠感など(いらすとやより)

SFTSの潜伏期は6~14日程度であり、発熱、倦怠感、頭痛などの症状で発症することが多く、これに加えて、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が見られることが多いとされます。

日本紅斑熱など他のマダニ感染症ではマダニ刺咬の痕が痂皮として見られることがありますが、SFTSで痂皮が見られることはむしろ少ないです。

名前の通り血小板が減少するのが特徴的であり、これに加えて白血球も減少するのが特徴です。

SFTSの致死率は?

国立感染症研究所に届け出られたSFTSの致死率の推移(国立感染症研究所のデータより筆者作成)
国立感染症研究所に届け出られたSFTSの致死率の推移(国立感染症研究所のデータより筆者作成)

SFTSは27%と非常に致死率の高い感染症です。

この図は2013年から2019年の間に国立感染症研究所に届け出られたSFTS症例の致死率の推移を見たものです。

これを見ると、経時的に致死率は低下しており、一瞬「SFTS恐れるに足りずッ!」と思いがちですが、実はこれは届け出が出された時点での情報に基づいた致死率であり、届け出の後に亡くなられた方が含まれていません。

実際に、2013年から2017年までの国内のSFTS患者を追跡調査したところ、致死率は27%と依然として高く、経時的に減少するといった傾向は見られなかったとのことです。

見た目上、致死率が低下しているように見えるのは、SFTSという疾患が広く知られるようになり、早期に診断がつくようになったことから、患者が重症化する前に届け出が出されるようになってきたことが一因と考えられます。

感染者の約3割が亡くなられる疾患が日本国内で流行しているという事実は、広く知られるべきでしょう。

亡くなられる方は高齢者に多く、小児では感染例自体が少なく5歳女児の1例だけであることから、高齢者で重症化しやすく、小児では軽症例が多いと考えられます。

SFTSの治療は?

現時点でSFTSに有効性が示された治療薬はありません。

ファビピラビル(アビガン)がSFTSウイルスに活性があることが知られており多施設臨床研究が行われていましたが、現時点では保険診療としての使用はできません。

発熱に対して解熱薬、吐き気に対して制吐薬など、対症療法が中心となります。

SFTSの予防のためにはマダニに刺されないようにしよう

マダニによる感染症として国内ではSFTS以外にも日本紅斑熱、ライム病、Borrelia miyamotoi感染症、ヒト顆粒球アナプラズマ症、ダニ媒介性脳炎、バベシア症などの報告があります。またダニの仲間であるツツガムシによるツツガムシ病は北海道を除く日本全国で報告があります。

これらのマダニによる感染症を防ぐ最も大事なことは、マダニに刺されないことです。

ハイキング、農作業など、山や草むらで活動する際にはマダニに刺されない服装をすることが重要です。

山や草むらでの野外活動時のマダニから身を守る服装 厚生労働省ポスターより引用
山や草むらでの野外活動時のマダニから身を守る服装 厚生労働省ポスターより引用

また露出した部分には虫よけ剤を使用しましょう。DEETまたはイカリジンという成分を含む虫よけ剤がマダニに有効です。

野外活動後にはマダニに刺されていないかお風呂に入ったときなどに体の隅々まで確認しましょう。

もしマダニに刺されたら

もしマダニに刺されたからといってすぐに慌てる必要はありません。マダニがSFTSの病原体であるSFTSウイルスを保有している頻度は一般的に非常に低く、マダニに刺されてもSFTSにならない人の方が圧倒的に多いのです。

ただし、マダニは自分で引っこ抜こうとするとクチバシが残ってしまうことが多いので、病院を受診してキレイに取ってもらうようにしましょう。クチバシが残ってしまうと、私のように肉芽ができてしまいます(涙)。

左:筆者を吸血するマダニ 右:強引に取った後しばらくしてできた肉芽(筆者撮影)
左:筆者を吸血するマダニ 右:強引に取った後しばらくしてできた肉芽(筆者撮影)

もしマダニに刺されて2週間以内に熱が出たらすぐに病院を受診してマダニに刺されたことを伝えましょう。

マダニによる感染症、SFTSは国内でも流行している致死率の高い感染症です。

正しい知識を持って、適切な予防を心がけましょう。