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台風・洪水の後に気をつけるべき感染症とその対策

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

過去最大規模の台風19号は東日本や北日本に記録的な大雨や暴風をもたらし、地域によっては洪水なども見られています。

台風や洪水などの災害の後には特定の感染症が流行することがあります。特に洪水に浸かってしまった方、避難所で生活されている方、今後復旧作業のボランティアに参加される予定の方は感染症にも注意しましょう。

災害後に問題となる感染症と発生時期 日本環境感染学会 大規模自然災害の被災地における感染制御マネージメントの手引きより引用
災害後に問題となる感染症と発生時期 日本環境感染学会 大規模自然災害の被災地における感染制御マネージメントの手引きより引用

避難所での感染対策

台風19号による避難勧告のため避難所にいる方も大勢いらっしゃるかと思います。

避難所では特定の感染症が流行することがあります。東日本大震災のときには避難所でノロウイルス感染症やインフルエンザが流行しました。

日本感染症学会は避難所における感染対策マニュアルを策定しており、避難場所での「感染予防のための8ヵ条」として、

1. 食事は可能な限り加熱したものをとるようにしましょう

2. 安心して飲める水だけを飲用とし、きれいなコップで 飲みましょう

3. ごはんの前、トイレの後には手を洗いましょう (水やアルコール手指消毒薬で洗ってください)

4. おむつは所定の場所に捨てて、よく手を洗いましょう

5. 咳が出るときには、周りに飛ばさないようにクチを手でおおいましょう(マスクがあるときはマスクをつけてください)

6. 熱っぽい、のどが痛い、咳、けが、嘔吐、下痢などがあるとき、 特にまわりに同じような症状が増えているときには、医師や 看護師、代表の方に相談してください。

7. 熱や咳が出ている人、介護する人はなるべくマスクをしてください。

8. 次の症状がある場合には、早めに医療機関での治療が必要かもしれません。医師や看護師、代表の方に相談してください。

・咳がひどいとき、黄色い痰が多くなっている場合

・息苦しい場合、呼吸が荒い場合

・ぐったりしている、顔色が悪い場合

の8つを挙げています。これらの感染症を予防するために、手洗い、咳エチケットなどを心がけ、何か症状が出るようであれば早めに病院を受診しましょう。

咳エチケットに関する厚生労働省のポスター
咳エチケットに関する厚生労働省のポスター

これらの感染症の他、昨年の平成30年7月豪雨の後、岡山県ではレジオネラ肺炎の報告が増えています。これはレジオネラ菌で汚染された雨水を誤飲したり、粉塵(土埃)と共にレジオネラ菌を吸引することによって起こる肺炎であり、重症化する恐れのある感染症です。

また2004年に愛媛県、2005年に宮崎県、2011年には三重県で台風とそれに伴う洪水の後にレプトスピラ症患者が発生しています。レプトスピラ症は発熱、眼球結膜充血、全身の筋肉痛などを特徴とする感染症です。

復旧作業中に注意が必要な感染症

今後、被災地に入りボランティア活動を行われる方もいらっしゃると思います。洪水後のがれき、土砂などに潜む細菌によって感染症を起こすことがあります。

前述のレジオネラ症以外に、作業中にはケガをすることで破傷風に感染することがあります。破傷風は口が開けにくくなったり、筋肉が硬直し呼吸が止まることもある怖い病気です。予防接種で予防可能な感染症であり、1968年以降に生まれた方は定期接種として接種している方が多いですが、ご自身の母子手帳を見て免疫状態を確認しておきましょう。

また日本紅斑熱などマダニが媒介する感染症にも注意が必要です。

復旧作業のボランティアに参加される方は、できるだけ肌の露出の少ない服装で、ケガをしないように長靴、ゴム手袋を付け、粉塵を吸い込まないようにマスクを着用するようにしましょう。

参考情報:

大規模自然災害の被災地における感染制御マネージメントの手引き. 日本環境感染学会.

避難所における感染対策マニュアル. 日本感染症学会

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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