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ドクター中松による「ワクワクイベント」の商標登録出願に拒絶理由通知

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:特許情報プラットフォーム

もう記憶のかなたに行っている方も多いと思いますが、経産省がワクワクイベントなる事業を検討していたところ、ドクター中松(中松義郎氏)が昨年の9月に同名称を商標登録出願していたことがわかったというニュースがありました。その商標登録出願(商願2021-122032)に7月29日付けで拒絶理由通知書(暫定的拒絶)が出ていたので内容をご紹介します。

何点か拒絶理由が挙がっていますが理由4(不明確な指定商品・役務)から見ていきます。

たとえば、出願書類では、35類に「ワクワクイベントのキャンペーンによるイベント促進,その他35類」と指定してあったのですが、「ワクワクイベントのキャンペーンによるイベント促進」は「商品の販売促進及び役務の提供促進のためのイベントの企画」に修正、「その他35類」は削除してはどうですかと審査官に示唆されています(これって、特許庁がこういう指定は不明確で認められませんと例示している典型例です)。ドクター中松は今までも結構な数の商標登録出願を行っているのですがこういうミスをしてしまうんですね。

理由1は、35類で指定された範囲が広すぎ、出願人の使用意思に疑義があるので、使用証拠、または、使用意思を表す書類(事業計画書等)を提出せよというものです。これは、上記の「その他35類」を削除すれば解消しますのであまり大きな問題ではありません。

理由2は、ワクワクイベントなる名称が既に様々なイベントの宣伝文句等で使用されているので識別力がない(商標法3条1項6号)というものです。

理由3は、おそらく最も重要で、経産省が予定している「イベントワクワク割」という施策と類似する(公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似)というものです(4条1項16号)。経産省は元々「ワクワクイベント」という名称を想定していたところ、商標登録出願の話が出たので「イベントワクワク割」に名称変更したのではという説もありましたが、結果的にはこうなってしまいました。

全体的に厳しめという印象ですが、ドクター中松がどのような意見書を提出するのか楽しみです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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