「バンクシーの商標権認めず ”正体不明”あだに―EU機関」というニュースがありました。

欧州知的財産庁(EUIPO)に登録されていたバンクシーの「花束を投げる人」(タイトル画像参照)(Flower Thrower, Flower Bomber)のイラストの登録商標が第三者からの無効審判により無効になったという話です。問題の商標は012575155号、権利者はPest Control Office Ltd(という名前の会社)です(実質的にバンクシーの版権管理会社と考えてよいでしょう)。区分は、2(塗料関連)、9(コンピューター関連)、16(印刷物)、18(かばん類)、19(建築材料)、24(織物)、25(衣類)、27(絨毯)、28(玩具)、41(教育娯楽サービス)、42(デジタルサービス)と広範に指定されています。無効審判の請求人は、Full Colour Black Ltdというロンドンのグリーティングカード販売会社です。

この商標の情報はEUIPOのサイトで閲覧可能です。審判書類のダウンロードもできますが無料ユーザー登録が必要です。

上記の報道記事のタイトルを見るとバンクシーが正体不明であることが無効の理由のように見えますがそうではありません。無効になった条文上の根拠は「不正目的(bad faith)の出願」です。「バンクシーが正体不明」であることは間接的に関係しています。

無効審判の請求人の主張は、「バンクシーは匿名を維持しなければいけないため著作権を行使することができない(裁判になれば身元を公開しないわけにはいかないから)。そこで、著作権の代わりに商標権により他者によるイラストの使用をコントロールしようとし、商標をまったく使用する意図がないのに出願したので不正目的の出願に相当する」というものであり、EUIPOの無効審判担当部門はこれを認め、全区分を無効にしたというのが大まかな流れです。

バンクシー側にとってはちょっと厳しい結果です。なお、不服審判により争う(および、取消訴訟を提起する)機会は残っていますので、この結論が確定したわけではありません。

個人的な感覚ですが、バンクシーは常日頃より”copyright is for losers”といったような発言をして知的財産権なんか知ったこっちゃないといったポジションを取ってきたので、EUIPOの審判官が商標権で権利押さえるのはダブスタじゃないかと考え、心証に影響した可能性もあると思います(実際、この点は審判請求人も強く主張し、審判官も入念に分析しています)。

なお、EUIPOにはPest Control Office Ltdによるバンクシー関連の登録商標が18件あるのですが、そのうち以下の5件には同じ請求人から無効審判が請求されて現在無効審判係属中となっていますので、同じ結果になる可能性が高いです。また、今回の無効が確定すれば、その他の作品の商標登録(たとえば、オークション会場でリモコン操作でシュレッダーで切り刻まれたので有名なBalloon Girlなどがあります)にも同様の無効審判が請求される可能性もあるでしょう。

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