TOKYO2021そしてTOKYO2022が商標登録出願される
東京五輪大会の延期決定に伴いネット上では「”TOKYO 2021”を商標登録しなきゃ」というジョークが聞かれました。しかし、本当に出願する人が出たようです。多くの人が想像するであろうあの人ではなく、3月15日に別の個人が出願し(ビール、酒を指定)、3月25日に法人が出願しています(かばん類を指定)。さらに、両出願人は”TOKYO 2022”も出願しています。法人の方の出願は、出願料金を支払っていません。リンクを張ってさらすのも憚られるので、興味のある方は特許情報プラットフォームで調べてください。なお、五輪延期の正式発表がなされたのが3月24日なので、個人の方は機を見るに敏とは言えそうです。
加えて、これは予想外でしたが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会も3月25日に”TOKYO 2021”を出願しています(全類指定)。さすがに、”TOKYO 2022”は出願していません。
では、個人が出願した”TOKYO 2021”(組織委員会より先の出願です)はどう扱われるでしょうか?拒絶の理由があり過ぎるほどあります。第一に、組織委員会が既に登録済の”TOKYO 2020”と類似として拒絶されるでしょう。第二に、地名と数字の組み合わせでは識別力がないとして拒絶されるでしょう。使用により識別力を獲得すれば良いのですが(そもそも”TOKYO 2020”が地名と数字の組み合わせであるにもかかかわらず登録されたのは、それが東京五輪大会を表すものとして誰もが知っている状態になっているからです)、個人の方や一般企業がその状態に持っていくのは非現実的です。さらに、他人の商品や役務と混同を招く物として拒絶になるでしょう。ということで、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会以外の人や企業が”TOKYO 2021”および”TOKYO 2022”を出願して登録できる可能性はゼロに誓いです(もちろん、”TOKYO 2023”、”TOKYO 2024”等でも同じです)。
法人の方は組織委員会と同日出願なので(仮に出願料金が支払われたとすると)、特許庁から協議命令が出され、協議が成立しないとくじ引き(特許庁に置いてあるガラガラポン)で決定されることになります。しかし、仮に、組織委員会がくじで負けても、法人の勝手出願は上記の理由により拒絶される可能性がきわめて大であり、組織委員会は(かばん類)についてのみ再出願すればよいのでさしたるダメージはありません(追記:再出願するまでもなく登録可能となる運用でした)。
では、なぜ、組織委員会は、”TOKYO 2021”を出願したのでしょうか?これは「念のため」とか言いようがありません。五輪の総予算の中で見れば、商標登録出願の費用(全類指定しているので200万円くらいかかると思いますが)など知れているからです。