所定の料金を払っても演奏を許諾しないJASRACについて

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「自分の曲の使用許諾『拒まれた』 JASRACを提訴」というニュースがありました。「訴えたのは、シンガー・ソングライターの、のぶよしじゅんこさんら3人」ということですが、この記事だけだとなぜ「拒まれた」のかよくわかりません。(追記:その後、Y!ニュースの記事も更新されて朝日新聞本体サイトと同じ内容になりました。)

しかし、朝日新聞本体サイトの記事(要登録)を読むと、もう少し詳しい事情がわかります。元記事のタイトルだけ見て、(自分の曲であることを理由に)利用料を払わないので拒まれたと誤解する人がいるかもしれませんが、そんなことはありませんでした。

のぶよしさんらは2016年4~5月、都内のライブハウスで演奏するため、のぶよしさんが作詞作曲した曲など複数の曲の使用許諾をJASRACに求めたが、「店側が著作物の使用料を支払っていない」として拒まれた。店は当時、使用料をめぐってJASRACと係争中だった。

ということのようです。さらに調べると、このライブハウスとは、JASRACと裁判中だったファンキー末吉氏経営のお店であるようです。

包括契約でもめている店には個別契約の許諾も出さない(自分の曲か他人の曲かは関係ありません)というのがJASRACの運用なのだと思いますが、この運用はおかしい(応諾義務の精神に反する)のではないかと思います。演奏者側も個別契約については所定の料金を払うと言っているのですから、それを拒否するのは嫌がらせであると言われてもしょうがないでしょう(包括契約の方のもめ事は別途争えばよい話です)。

追記:よく思い出して見ると、本事件の時点(2016年4~5月)で、当該ライブハウスに対するJASRAC管理楽曲の演奏差止めを命じる地裁判決が出ていましたね。カラオケ法理により、演奏の主体は(演奏者ではなく)ライブハウスとされますので、差止め命令が出ている以上、ミュージシャン側が直接個別許諾を求めても許諾は出せないというのは、法律的なつじつまは一応合ってます。ただ、この時点では差止め判決が確定しているわけではなかった(知財高裁で控訴審進行中)ので、権利濫用等で争う余地はあると思いますが。

追記^2:訴状にアクセスできていないので推測するしかないのですが、有名なディサフィナード事件高裁判決において、傍論とは言え「包括契約の清算をしていない当事者による個別許諾要求を拒否しても応諾義務違反にはならないが第三者の個別許諾要求を拒否すると応諾義務違反」とされていることから、今回、許諾を求めている人はのぶよしじゅんこさんら第三者なので許諾を拒否するのは違法というのが原告側のロジックなのではと思います。