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「キリンラーメン」の新名称総選挙について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
商標公報:5966748号

今年の5月に「『キリンラーメン』に関する大人の事情について」という記事を書いています。おそらくは飲料大手「キリン」との商標権の問題により、愛知・三河のソウルフード「キリンラーメン」が名称変更を余儀なくされているという話です。

その新名称をネット投票で決める「総選挙」が始まったようです(投票は特設サイトで7月31日まで)(参照記事)。

最終候補案は「ヘキナン」(メーカーの本拠地碧南市より)、「キリマル」(良い意味の「○」を付けたそうです)、「オガサワラ」(メーカーである小笠原製粉の社名より)だそうです。私見ですが何となく結果は見えている気がします。

最初にこの話が出たときにはツイッター等で「キリソラーメン」、「ジラフラーメン」等の案が提案されました。半分ジョークで言っているのだと思いますが、商標権は類似範囲にも及びますので「キリン」と紛らわしい名称は使用できません。私見ですが、メーカー側は「キリマルラーメン」を正式な商標としておいて、ネット等でユーザーが勝手に「キリ○ラーメン」と呼ぶのは許容範囲だと思います。

なお、小笠原製粉は、キリンのイラスト(タイトル画像参照)についてはしっかり商標登録を行なっています。新名称がどうなろうともこのイラストは強い識別力と顧客吸引力があると思いますので商標登録しておくのは賢明です。本来であれば早めに「キリンラーメン」を商標登録しておくべきでした(今言ってもしょうがないですが)が、やるべきことはちゃんとやっているということです。

また、この機会に書いておくと、前述の記事に反応して「キリンラーメン」側から「キリン」側に先に不使用取消審判を仕掛けたと解釈しているツイート等が見られましたが、通常、不使用取消審判は(1)審査で類似先登録があるとの拒絶理由を通知されたのでその先登録を消滅させる、または、(2)他者から商標権を行使されたのでその商標権を消滅させる、ために行なわれますので、やはり先にキリン側から何らかの「働きかけ」があったと考えるのが自然です。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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