「パン・パイナッポーアッポー・パン」なるパンが売り出されたようです。ベタではありますが、オリジナル同様に口に出して言った時の脱力感がたまりませんね。

この件でで思いついたので、PPAP、「ペン・パイナッポーアッポー・ペン」、ピコ太郎等々の商標登録出願状況を調べてみましたが、いずれも出願が確認できません。出願するとしたら、おそらく、出願人はエイベックスだと思うのですが、それで調べても該当はありません。

出願から公開までは1ヶ月ほどタイムラグがありますので、既に出願済で公開前ということも考えられますが、出願するとしたら、「仕掛ける」前の今年8月くらいだと思うのでたぶん出願はしていないのでしょう。

今出願しても登録されるのは半年後くらいです。その頃にはPPAPは賞味期限切れになっている可能性がきわめて高いので商標登録してもほとんど意味はないでしょう。商標権の価値は商標それ自身にあるというよりは、商標によって守られるビジネス上の価値にあるので、そのビジネス上の価値がほとんどない状態で商標権だけ持っていてもしょうがありません。

例として、現時点で「ラッスンゴレライ」という商標権を持っていても、それによって守られる「ラッスンゴレライ」グッズのビジネスの可能性がどれくらいあるかを考えてみれば商標権だけ持っていても意味がないことは容易にわかります。

また、そもそもPPAPは作品の性質から言っていじってもらってなんぼなので、上記のパンのような”便乗商品”はむしろ大歓迎でしょう。

議論のついでにちょっと一般論に立ち返って考えますが、そもそもなぜ商標登録は必要なのでしょうか?大きく2つの理由があります。

第一は言う間でもなく他人による模倣を防ぐということです。PPAPのように模倣していただいても結構という状況であれば、この理由はあまり重要ではありません。

第二は他人に登録されないようにするということです。商標は先願主義なので、他人に先に登録されてしまうと、先に使っていたにもかかわらず、他人によって差止め・損害賠償請求等されてるしまうという理不尽な状況になりかねません(周知性を確保していれば先使用権を象徴できますがそうでない時はちょっとやっかいです)。偶然の一致というケースもありますが、故意に他人が使用している商標を登録して、買取りを迫る商標ゴロ的なケースもあり得ます。他人に真似されても品質で勝負できるから商標登録は不要と考えていた会社が他人に勝手出願されてあわてるなどという事例はたまにあります。

しかし、PPAPやピコ太郎のように既に周知性を確保しているケースでは、それを理由に他人の商標登録を阻止できますので、これまた無理に商標登録出願しておくことはありません(まあエイベックスの予算から言えば商標登録出願の費用はわずかなものでしょうから念のために出願しておくという考えもあってもよいと思いますが)。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

有料ニュースの定期購読

栗原潔のIT特許分析レポートサンプル記事
月額880円(初月無料)
週1回程度
日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。

Yahoo! JAPAN 特設ページ

  1. 1
    『鬼滅の刃』はなぜ現代人をここまで惹きつけるのか。「失っても戦う物語」のもつ圧倒的魅力 堀井憲一郎2/28(金) 16:32
  2. 2
    「将棋界の一番長い日」A級最終局は深夜1時過ぎ終了 佐藤康光九段(50)が羽生善治九段(49)に勝利 松本博文2/28(金) 1:34
  3. 3
    渡辺明三冠(35)史上4人目のA級全勝達成! 順位戦通算21連勝! はずみをつけて4月から名人に挑戦 松本博文2/27(木) 20:35
  4. 4
    百折不撓の現役タイトルホルダー・木村一基王位(46)A級順位戦で無念の陥落決定 松本博文2/28(金) 0:13
  5. 5
    映画館へ行くのは怖い。でも観たい。その葛藤が若い世代にあふれる、『ミッドサマー』の静かな社会現象 斉藤博昭2/28(金) 10:56
  6. 6
    天衣無縫・佐藤康光九段(50)宿敵・羽生善治九段(49)とのA級最終戦も独創的な序盤戦術で戦う 松本博文2/27(木) 18:30
  7. 7
    騒動の核心、相方への思い。徳井義実「何もかもお話しします」 中西正男2/24(月) 10:00
  8. 8
    愛する人々の生きた証を残すため、戦火のシリア・アレッポで母はカメラを手にする…『娘は戦場で生まれた』 紀平照幸2/28(金) 0:01
  9. 9
    『パラサイト』美人奥さまを演じたチョ・ヨジョンはどんな女優なのか 慎武宏2/21(金) 7:02
  10. 10
    講談師「松之丞」改メ「神田伯山」の披露興行は、あきらかに事件である 堀井憲一郎2/26(水) 12:20