商標登録出願と商標登録をちゃんと区別しましょう

(写真::長田洋平/アフロスポーツ)

「五輪エンブレム審査映像など公開へ、ガラス張り化」という記事を読みました。佐野エンブレム審査における不透明性に対する批判に応えるということで方向性としては正しいと思います。

ただし、一点「商標登録前に作品が世間に知れ渡ることは厳禁」という表現が気になりました。佐野エンブレムも招致エンブレムも、そして、東京のブランディング戦略ロゴの&TOKYOもまだ商標登録前に公開されています。たぶん、「商標登録」と「商標登録出願」の区別がついてないのではないかと思います。

商標権を取るためにはまず願書を作成して特許庁に提出します。これが「商標登録出願」です。それにより特許庁で審査が始まり登録要件を満足していれば、半年後くらいを目安に「商標登録」が行なわれ、(登録料を払えば)商標権が発生します。登録要件が満たされていないと特許庁に判断されれば拒絶査定となり「商標登録」は行なわれません。

なお、「商標登録出願」のことを「商標出願」ということがたまにありますが正確な言い方ではありません。少なくとも商標法上は「商標出願」という言い方はありません。個人的には「商標出願」と言った方が「商標登録」との聞き間違いが少なくてよいとは思うのですが。

さて、日本の商標制度は先願主義なので同じ商標が複数「商標登録出願」されると先に出願した人が優先されます。「商標登録出願」前に、商標を一般公開してしまうと、不正の目的を持った人(いわゆる商標ゴロ)に勝手に先に出願されてしまうリスクが生じます。なので、重要な商標であれば公開前に「商標登録出願」を行なっておくことが不可欠です。実際、佐野エンブレムも&TOKYOも(商標登録前ではありますが)「商標登録出願」後に公開されています。ところで、&TOKYOについては、一部記事で舛添知事が「きちんと商標登録した」と話したとされていますが、これも正しくは「きちんと商標登録出願した」であって、知事の言い間違いか記者の聞き間違いでしょう。

もちろん、商標登録を待ってから公開すればより確実ですが、五輪エンブレムのように最大限の広範囲で権利取得しようとすると審査期間もかかります(招致ロゴの場合8ヶ月かかっています)し、どれほど待てば良いのかも読みにくいので、あまり現実的ではありません。商標調査→商標登録出願→公開→特許庁の審査→商標登録というのが現実的な流れです。

ついでに書いておくと商標申請や特許申請という言い方もよく聞かれますが正確ではありません(法律上は、「出願」は審査官による審査を経る手続、「申請」はそうでない手続と分けられています)。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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