料理レシピを知財として保護するにはどうすればよいのか?

(写真:アフロ)

「クックパッド、著名人レシピの“真似”横行で批判の声も なぜ著作権侵害ではない?」という記事を読みました。結論は、記事中の「運営元がこれ(他人のレシピを勝手に投稿する行為)を放置しても、モラルの問題は別として、法律違反を問われる可能性は低いと思われます」という弁護士先生のコメントどおりです。著作権法の大原則は「表現は保護するがアイデアそのものは保護しない」なので、レシピというアイデアそのものが保護されないのはいたしかたありません。

では、著作権法を改正して、レシピというアイデアそのものも保護できるようにすればよいかというとそういうわけにもいきません。たとえば、カツカレーの起源は諸説ありますが、プロ野球選手の千葉茂氏が1948年に発案した説があります(参考Wilkipediaエントリー)。この説が正しいとすると、千葉氏は2002年に亡くなっていますので、もし著作権法でレシピそのものが保護されるとするならば、2052年まではカツカレーの作り方を公開したり、カツカレーを販売したりするために千葉氏の遺族の許可が必要となってしまいます。さすがにこれは問題でしょう。

法律によるアイデアそのものの保護はかなり限定的に行なうことが必要ですが著作権による保護は強力すぎます。一方、特許法はアイデアそのものを保護する法律ですが、対象を技術的アイデア(発明)に絞り、(著作権法とは異なり)審査により新規性・進歩性等の要件が満足されていると判断された場合のみに権利を付与し、保護期間も20年にするという限定的保護になっています。

では、料理レシピを特許で保護することは可能でしょうか?反復可能で明確に定義された技術的方法であり、かつ、進歩性・新規性が満足されれば特許で保護され得ます。食品会社が工場で大量生産するようなレベルでなく、料理人がキッチンで作るような料理でも特許化できます。

この例としては、渋谷にもあるカレー屋いんでぃらによる(私もたまに急に食べたくなる)「えびめし」のソースの製法特許(第2894982号)(現在は年金不能により権利消滅)、おからこんにゃくの製法特許(第3498087号)等があります。おからこんにゃく特許のクレームは以下のようになっています(これくらいシンプルでも新規性・進歩性があれば特許化は可能です)。

【請求項1】 こんにゃく粉を湯でゼリー状にまで混和し、これに生卵とおからを混和し、水酸化カルシウムをぬるま湯に溶解したアルカリ液を上記混和物に混和し凝固成型し、これを適宜に切り分け、加熱して残余のアルカリ分を除去し食肉感を与えたことを特徴とする食材の製法。

ただし、特許権は実施を専有できる権利なので、レシピの公開には権利は及びません(むしろ、アイデアの公開を促進することが特許制度の本質です。)したがって、冒頭記事にあるような他人のレシピを勝手に投稿するというケースに対しては特許権は無力です。また、特許権の効力は「業として」の実施にしか及びませんので、家庭で作る行為は差し止められません(家でおからこんにゃんくを自作する分には特許権を侵害することはありません)。あくまでも他のレストランや食品工場での調理(生産)や料理の販売等を差し止められるだけです。いろいろ限界はありますがレシピを他人(他社)に絶対真似されたくない場合には、特許取得も検討に値するケースはあるでしょう。