経営者・働く人がコロナ時代を生き抜くために意識すべき3つのこと【吉村慎吾×倉重公太朗】最終回

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コロナ禍により働き方は変わりつつありますが、その前から仕事の多くがAIやロボットに代替されてきており、大企業であっても将来安泰とは言えません。吉村慎吾さんは「企業の平均寿命は20年。社員の定年はおそらく75歳以上。平均的な勤め人は3~4回勤め先を変える必要があります」と話します。終身雇用が崩壊し、一社依存の考え方のリスクが大きくなっている今、どのようなマインドを持って働くべきなのでしょうか。

<ポイント>

・テレワークでクビになる人が増える?

・メンタル不調の人をどのように元気づけるべきか

・従業員は安心させるのではなく、適度な緊張感を持たせる

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■会社以外に「依存先」を増やしておく

倉重:非常に変化が激しい時代です。コロナもいつ収束するか分からないし、価値観も非常に変わってきている中で、これから活躍するのはどういう人だと思いますか。

吉村:一言で言うと個人事業主マインドの人です。テレワークになると社員をデリートするのが簡単になります。マネジャーが「こいつは気に入らないな」と思ったら、プロジェクトに呼ばなければいいのです。オフィスワークであれば、嫌な雰囲気を出していると、課長も放っておけないので、「最近どうなの?」と、気にかけていたと思います。ところがテレワークになると、その人が画面に現れなければ忘れ去られてしまうのです。「そんなやつ、いたっけ?」と。

倉重:オフィスであれば、そういう人も会議にしかめっ面で参加していたかもしれませんが、テレワークにおいては構っている暇もないですし、そういう人は自然と会議に呼ばれなくなってしまいますね。

吉村:暇もないし、周囲に悪影響がなくなれば、構う必要がなくなります。実質的に戦力外にしてしまって、「君は半年にわたって何のアウトプットも出ていないよ」ということになります。オフィスワークでは毎日出社したり、会議に出たりしていればクビにはしづらかったと思いますが、テレワークではアウトプットを出し続けなければならないのです。世の中は良い管理職ばかりではないので、「あなたのことは嫌いだ」とか「彼女を取り合ったから気に入らない」という意地悪で呼ばれなくなったりする可能性があります。だから自分から仕事をつくりにいく、奪いにいく精神がないと厳しいです。個人事業主の人は会社の不満を言ったり上司の不満を言ったりしないで、自分で一生懸命仕事を取りにいきますよね。

倉重:待っているだけでもないですし、人を責めたって自分の業績にはなりませんからね。

吉村:そういうマインドを持っている人は孤独にも耐えられます。個人事業主の人はクライアント1社に依存せず、いろいろなところの仕事を受注して、家族もいて、地域コミュニティーにも根ざしています。自立とは何かというと、依存先が多いことなのです。

倉重:確かに、そうですね。1個倒れても大丈夫だよと。

吉村:日本のサラリーマンは、会社に依存し過ぎです。地域コミュニティーや、他のサークルにも属していません。個人事業主のように、家族、地域コミュニティー、サークル、そして仕事というように、たくさんのものに依存している状態にしないと不安定になるのです。

倉重:そうですね。この時代に終身雇用の幻想にしがみつくというのは、何より不安ですよね。

吉村:そういう土台を支えているのは、「私の人生のミッションはこれだ」という使命感です。例えば私だったら、「出会った人を元気にする」というのが人生のミッションだと思っています。私生活でも心がけていますし、仕事でも「出会った人を元気にする」ことで利益が出る会社になるように一生懸命努力しています。YouTubeでもブログでも発信し続けて、自分の運命を自分で切り開く元気な人を増やしたいと思っています。

倉重:いいですね。私も新時代の日本的な雇用社会をつくりたいと思っていますけれども、自分のミッションがあって、しっかりと立って歩いている人は、中腰ではなく立っているので遠くに早く行けると夏目漱石も言っていました。

吉村:三種の神器が経営者と従業員の相互依存体質をつくってしまいました。

倉重:日本型雇用慣行の三種の神器。終身雇用、年功序列、企業内組合ですね。

吉村:「一生面倒を見てやるのだから、あまり余計なことを考えないで言ったとおりに転勤しろ」「指示、命令を待って、そのとおりにイエス・サーと言ってアフリカでもどこでも行け」という経営陣に対して、従業員は「僕たちはキャリアの主体性を失ったのだから、面倒を見てくださいね」と要求していました。

倉重:一種のトレードオフですね。

吉村:経営者のほうは、ロイヤリティーが高い社員がいるから、あまり細かい説明をしない。ミッション、ビジョン、戦略、コアバリューなどを一切示さず、「周囲をおもんばかってうまくやってくれ」という、何かミステリアスなマネジメントが生まれたわけです。これはお互いをスポイルする仕組みでした。企業は今回のコロナによって余裕もなくなったので、きちんとミッション、ビジョン、戦略、コアバリューを示す経営をしなければいけません。従業員も自分のキャリアは自己責任で考える。個人事業主マインドを持って、「人生のミッションは何なのか」ということを知らなければなりません。

■やりたいことは「死ぬ前に」ではなく、今やる

倉重:最後の質問になります。吉村さんのこれからの夢を教えてください。

吉村:僕は特にいつまでに何かを成し遂げたいという願望はありません。少し前に「死ぬまでにやりたい100のこと」というのがはやりましたよね。そのリスト作成にトライしたのですが、1個も書けなかったんですよ。「ヨーロッパ諸国を回りたい」と思ったら、すぐに行ってしまうし、YouTubeをやりたいと思ったらすぐに配信します。だからミッションは、今もこれからもずっと元気に、楽しく、前向きな人生を送ることです。何があっても自分で乗り越えるし、自ら運命を切り開けばいいし、「何か起きてから対処すればいい、なんとかなる」というマインドを持った人間を育てていきたいと思います。

倉重:生き生き、楽しく働く人が増えれば日本は強くなりますからね。

吉村:「人生でやりたい100のこと」のリストが書ける人生って、最悪ではないですか。

倉重:その時にしていないということですからね。

吉村:死の間際にそんなことをしても楽しくないじゃないですか。

倉重:私も、今日死ぬ、明日死ぬというときでも今の仕事をやるだろうと思います。

吉村:スティーブ・ジョブズの精神で、「今晩死ぬと分かっても今日それをやるのか?」ということです。

倉重:そういうことですね。私からの質問は以上にしたいと思います。

では、ご参加の方から質問を募りたいと思いますけれども、Aさん、いいですか。

A:貴重なお話をありがとうございました。1つ気になったのが、吉村さんはどうしてそんなに物事をよく知られているのかということです。どのように情報収集しているのかが気になりました。

吉村:最近はそうでもありませんが、20年間、1日3冊ぐらいの本を読んでいました。

倉重:毎日ですか?

吉村:毎日です。会社などは本の山です。速読もできるので、1時間に1冊ぐらい読みます。「忙しいんでしょう?」と言われますが、日々の学習や運動のような「緊急じゃないけど重要なこと」にはしっかり時間を確保します。「重要じゃないこと」を断る勇気もあります。これまで自分が「知りたいな」「興味があるな」という仕事しかしてこなかったので、ジャンルもどんどん変えてきました。製造業の経営戦略やビジョンの策定にも関わってきました。イノベーションのテーマやシェアリングエコノミーなど、今の技術がどこまでいっているのかも研究しています。だから「同じことを絶対に繰り返さない」というのが、52歳までの人生なのです。公認会計士になってからも、ずっと新しいことをして、監査業務を早めに卒業して最後はM&AやIPO関連の仕事ばかりしていました。常に成長できる、全く未知の分野でない限りはやらないという選択をしてきたのです。

「自分のコアバリューは探求と創造だ」ということに気づいてつくったワークハピネスに関しては、とにかく新しいことをし続けてきたので、みんなすごく成長しました。

倉重:今サラッとおっしゃいましたが、52歳でその肌つやということは、よほどストレスがなく生きてこられたのですね。

吉村:毎晩浴びるほど酒を飲んでいるのに健康診断では毎年オールAです。

倉重:よく太らないですね。

吉村:毎日7~8キロ走っていますし、週に2回、パーソナルトレーナーで筋トレをしています。さらに、なるべく理想をもたないようにしているので本当にストレスは少ないですね。

倉重:最高ですね。ありがとうございます。ではBさん、お願いします。

B:産業医をしていますBです。今日はありがとうございました。私はメンタル不調の方を診ることが多いのです。休職をして復帰する方が多いのですが、そういう方に対して、吉村さんはどのように声を掛けたり、元気づけたりしているのかなというのが気になったので、ぜひ教えてほしいです。

吉村:絶対に元気づけないです。「そういうときもあるから、それでいいよ」と言っています。「治らなければいけない」と思っているのが勘違いです。「治らなくていいんだよ。立派に生きているじゃん。人生に価値などないし、どうせいつか死ぬだけだから、本当につらくなったら、死んじゃえばいいよ」と話しています。

倉重:そこまで言うのですか。

吉村:「最後は死んじゃえばいいじゃん。こんな楽なことはないよ」と言います。「死んじゃダメだよ」と言うから死んでしまうのです。

倉重:なるほど。そう言われると逆に死なないものだと。

吉村:そう。人間は生きているだけで十分なのです。だって生まれてすぐに隣で爆弾が爆発して死んでしまう人もいます。「その人の人生は価値がなかった」と言ったらあんまりですよね。だから「死の寸前まで生きているだけが人間の価値だよ」と言っています。

B:ありがとうございます。私もそのように言いたいところですが、職業柄そうは言えなくて、結構悩んでいます。

吉村:産業医が「死んじゃえばいいよ」とは言えないですよね。

倉重:追加で聞きたいのですが、「やりたいこと」というのは、どのように見つけたらいいのですか。やりたいことがない人もたくさんいるわけです。

吉村:「悩む必要がない」というのが最初のアドバイスです。「やりたいことがないといけない」と思っているから苦しみます。でも、好きなものや欲しいものがあれば、それでいいのです。「みんなが認めるような、カッコイイ夢がなければいけない」と思っているのがおかしいのです。「そんなの俺だってなかったよ。俺はやりたいことなど特になかったから、ヘリコプターから降りてくる写真を見て公認会計士になってしまったよ」と言っています。

ただ、欲しいものはありました。それは何かというと、スーパーカー世代のご多分に漏れず

フェラーリです。「フェラーリが買える職業」という漠然とした目標がありました。三井物産などに入っても買えるかもしれないけれども、サラリーマンには似合わないではないですか。結局買いませんでしたが。

だから欲しいもの、好きなものがあればそれでいいのです。直感だけ大事にして生きていれば、ある日やりたいことで社会に役に立つことが見つかります。それが一番すっきり、座りがいいわけです。

倉重:ありがとうございます。最後にCさん、お願いします。

C:主に制度設計などをしているコンサルタントです。「個人事業主マインド」というのは、天性で持っているものなのか、作ったり育てたりできるものなのか伺いたいです。

吉村:アメリカ人などを見ていると、そもそもキャリアは自己責任だと思っているので、結構個人事業主マインドを持っています。ですから作っていくものではないでしょうか。従業員もそういう気持ちを持つべきだし、企業の経営者も、「うちの会社は大丈夫だから」と安心させてしまうより、「いつでもなくなってしまうよ。自分の人生を守れるのは自分だけだよ」と言い続けているほうがいいのです。僕も社員にはすごく言っています。

倉重:適度な危機感ですね。

吉村:そうです。「会社なんて本当にすぐなくなるからね。自分の人生を守れるのは自分だけだから、しっかり勉強してね。俺だって責任は取れないからね」と言い聞かせるのです。日本には安心させたがる経営者が多いですよね。労働組合にも「会社は大丈夫ですから」と言っています。大丈夫ではありません。大嘘つきです。経営者は適度に無責任になったほうがいいのです。「俺がなんとかしてやる」と言ったら、従業員は安心しきってしまいます。お互い適度な緊張感を持つことによって、個人事業主マインドというのは育っていくのです。

特に今回の新しい統計だと企業の寿命は二十数年です。アメリカだと十数年と言われています。定年はたぶん75歳ぐらいになっていくと思うので、平気で3~4回転職するようになります。働く人の勤め上げる年数よりも企業の寿命のほうが短い時代だというのをよく理解して、経営者も安易に「大丈夫です」と言ってはいけません。「会社などいつでもつぶれる」と言わないと、不誠実ですよね。

倉重:「1社に終身雇用される」と考えると、会社にしがみつくし、おかしなことになるわけです。従業員にとっても、どう雇われ力を高めていくかという話ですね。

吉村:そうです。統計から見たら、絶対3~4社に行かないといけないわけですから。そういう真実をきちんとお互いが知るべきです。

倉重:それでは、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

吉村:ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:吉村 慎吾(よしむら しんご)

株式会社ワークハピネス 代表取締役会長

https://www.telework.workhappiness.co.jp/?fbclid=IwAR2FCIMYrPGQMzvOpN7rRj6ZbxcIaauIfWDvvVdEvBKwyWk8yZL3tboaOj8

プライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。

株式会社エスプール(東証1部上場)を創業

その後、老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを成功させる。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。

2020年4月には自社のオフィスを捨て、全ての管理職を撤廃。

フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラット、No オフィスな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

自社の成功や失敗の体験を生かし、大企業の働き方改革や事業変革で多くの実績を持つ。

イノベーションに関する著書多数。多くの企業で次世代幹部育成の課題図書となっている。