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この冬、どの感染症が流行するのか?

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

「一体新型コロナはどこにいったのか」というくらい、現在インフルエンザの感染が流行しています。私の子どもの学校でも学級閉鎖が相次いでいます。さらに、季節外れの咽頭結膜熱(プール熱)や溶連菌感染症が記録的流行となっており、海外ではマイコプラズマなどの流行も懸念されています。一体、この冬の感染症の流行はどうなるのでしょうか。

現在のインフルエンザと新型コロナ

厚労省が毎週発表している定点医療機関あたりのインフルエンザと新型コロナの患者数は、図1のようになっています。20~30人を超えてくるとかなり多いです。

インフルエンザは現在20台と高止まりしていますが、新型コロナは過去の流行期よりもはるかに低い水準で推移しています。

図1. インフルエンザと新型コロナの定点医療機関あたりの患者数(人)(筆者作成)
図1. インフルエンザと新型コロナの定点医療機関あたりの患者数(人)(筆者作成)

少し気になる点としては、定点医療機関あたりの新型コロナ患者数がじわじわと増加している点です。過去、底ばいから増加に転じた場合は例外なく流行期に入っているので、この冬にふたたび新型コロナの波がやってくるかもしれません。シンガポールでは、11月末から急速に新型コロナの感染者数が増加し、直近第48週は今年の最多感染者数を記録しています(1)。

とはいえ、アルファ株やデルタ株のときのように「肺炎が多くて困る」というほどではないため過度に懸念しなくてよいでしょう。しかし、ワクチン接種を続けている人は次第に減っているため、感染が学校や職場などの生活に与えるインパクトはまだ大きいと思います。

この冬の流行は?

インフルエンザや新型コロナだけでなく、国内では子どもを中心に咽頭結膜熱(プール熱)溶連菌感染症が流行しています(2)。ここにRSウイルス感染症ノロウイルスの流行がからんでくると混乱は必至です。

さらに、韓国や中国ではこれまで流行が低く抑えられていたマイコプラズマが流行しており、イギリスでは百日咳の報告数が増えているという報道もあります(3)。

いずれも子どもに多い感染症ですが、大人にもうつることがあるため家庭内感染に注意が必要です。

強いのどの痛みがあれば咽頭結膜熱や溶連菌感染症を疑いますが、新型コロナやインフルエンザでものどの痛みが出ることもあるため、症状で確実に区別することは困難です(図2)。学校や園など、地域で何が流行しているのかを把握することが重要になります。

図2.この冬、注意すべき感染症(筆者作成、イラストはイラストACより使用)
図2.この冬、注意すべき感染症(筆者作成、イラストはイラストACより使用)

周囲への感染性の強さから考察すると、この冬ふたたび流行しやすいのは新型コロナと考えられますが、未来のことは神のみぞ知るです。

色々な病原微生物が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)し、咽頭結膜熱(プール熱)にいたっては完全に季節外れの流行です。

もはや、コロナ禍前の「感染症流行の常識」が破綻しつつあるので、1か月後・2か月後に何が流行するのか予想が難しい状況です。

まとめ

いろいろな病原微生物による感染症が増加していますが、コロナ禍で培ってきた個々の感染対策が有効です。

しかし、アルコールが効きにくい病原体があるので注意が必要です。たとえば、ノロウイルスと咽頭結膜熱の原因であるアデノウイルスはアルコールでは十分な消毒が難しいと言われています。

そのため、こまめな手洗いを心がけましょう。また、冬休みを楽しむためにも、流行に応じて、密な環境ではマスク着用を検討してよいと考えます。

(参考)

(1) More hospitalisations as Singapore’s Covid-19 cases hit record high for 2023(URL:https://www.straitstimes.com/singapore/more-people-in-hospital-with-covid-19-as-infections-climb-to-highest-number-in-singapore-in-2023

(2) IDWR 2023年第47週(第47号) 2023年12月08日(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-latest/2620-2023/12393-idwr-2023-47.html

(3) What is whooping cough and why are cases rising in England and Wales?(URL:https://www.theguardian.com/society/2023/dec/09/what-is-whooping-cough-and-why-are-cases-rising-in-england-and-wales

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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