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収納付きソファによる子どもの窒息事故 「省スペース家具」に注意

倉原優呼吸器内科医
(写真:アフロ)

最近はいろいろな「省スペース家具」が登場しています。収納付きソファもその1つです。しかし、小さな子どもが一人でこれを開け閉めできる状況にある場合、今回紹介するような窒息事故に注意しましょう。

収納付きソファで窒息

日本小児科学会から、1歳8か月の男の子の収納付きソファによる窒息事故が報告されています(1)。

4歳の男の子と双子の1歳8か月の男の子の3人が、ソファのある部屋で遊んでいたところ、収納部分に頭を入れ、ソファの収納の蓋と収納部分の間に頚部が挟まっている1歳8か月の男の子を、隣の部屋にいた父親が発見しました(図1)。

図1. 窒息時の状況(参考資料1より引用)
図1. 窒息時の状況(参考資料1より引用)

発見時、すでに呼吸と体動がみられず、父親によって心肺蘇生が行われ、救急搬送されました。

収納の蓋は、完全に座面が開いていれば、容易には閉まらない仕組みになっていましたが、不完全に座面が上がっていたか、重いものが座面上に乗るなどの力がはたらいた可能性が指摘されています。

搬送された男の子は、頸椎を保護されつつ、人工呼吸管理等によって集中治療を受けることになりました。

子どもの回復力は素晴らしいもので、搬送から8日目に退院となっています。さらに、退院後2週間の時点で一人で歩けるほどの元気さを取り戻していました。

その他の家具による窒息にも注意

1歳児による死因として不慮の事故は重要ですが、その多くを占めている窒息は食べ物の誤嚥による窒息とされています。そのため、今回のような家具・インテリアでの窒息というのはまれと考えられます。

消費者庁は、その他の窒息原因としてブラインド、ロールスクリーン、ロール式網戸などの操作用のひもやチェーン、カーテンの留め具(タッセル)、大人用ベッドの隙間に挟まれること、などに注意すべきとしています(図2)(2,3)。

図2.ブラインドやカーテンのひも等、大人用ベッドによる窒息事故(参考資料2,3より使用)
図2.ブラインドやカーテンのひも等、大人用ベッドによる窒息事故(参考資料2,3より使用)

小さな子どもの窒息事故にいたるリスクが高い家具というのは、事前によくよく考えれば予測が可能です。そのため、家具を買う前に、「子どもに対しては安全だろうか?」と一歩立ち止まって考える必要があります。

「省スペース家具」の盲点

家具やインテリアでは「省スペース」というのは売れ行きのよいキャッチコピーの1つだそうです。今回の事故の原因となった商品と類似の製品は、現在たくさん販売されています。

収納付きソファに限った話ではなく、どのような家具であっても、子どもは身体の一部を挟まれるリスクがあることを認識する必要があるでしょう。

そのため、家具を購入する場合、小さな子どもが一人でそれを安易に開閉できないような対策を講じる必要があると思います。

(参考)

(1) 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert(傷害速報)No. 135 収納付きソファの蓋で頸部が挟まったことによる窒息疑い. (URL:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0135.pdf

(2) 消費者庁. 「子ども安全メール from 消費者庁」Vol.589 ブラインドやカーテンのひも等による窒息事故に注意しましょう!(URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20220428/

(3) 消費者庁. 「子ども安全メール from 消費者庁」Vol.607 就寝時の窒息事故に気を付けましょう. (URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20221028/

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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