新型コロナ・インフル同時検査キットが販売開始 「発症直後は検査を避けて」 使用上の注意点
現在新型コロナの検査キットが市販されていますが、新型コロナとインフルエンザの同時検査キットも一部で販売されています。どのようなときに使えばよいのか、また使用上の注意点について書きたいと思います。
同時検査キットが市販開始
インフルエンザと新型コロナの同時検査キットはこれまで医療機関で使用されてきました。市販向けは、富士レビオの製品が先駆けて承認を受けていましたが、その後、年末年始の医療逼迫を避けるため、特例的な対応として医療用の同時検査キットも薬局等で販売することが許可されました。
実際に、日本調剤グループでは、12月16日から同時検査キットの市販が開始されています。同グループで取り扱う製品の価格は1回分2,970円で、1人あたり5回分まで購入できるとのことです。
同時検査キット購入時の重要なポイントは、厚労省の承認を受けた製品を買うということです。
医療用の場合「体外診断用医薬品」、一般用の場合「第一類医薬品」と必ず記載されています。これら2つは厚労省の承認を受けた製品です。
一方、「研究用」と書かれたものは、検査精度が保証されていない未承認の製品なので注意してください(図1)。
同時検査キットの購入に際して、原則、薬剤師による使用上の注意などの説明が必要ですが、チェックリスト等を活用したネット販売も許可されており、現在の新型コロナ単独の検査キットのように入手しやすい製品になっていくかもしれません。
同時検査キットは誰に使用する?
同時検査キットの対象は、現在も自己検査がすすめられている重症化リスクが低い軽症者です。
つまり、「小学生以下・65歳以上の高齢者・基礎疾患がある人・妊婦など重症化リスクの高い人」以外が対象となります(1)(図2)。
年末年始の医療逼迫に備え、厚労省は事前に検査キットの確保を推奨しています。しかし、同時検査キットの流通は十分とは言えないため、新型コロナ単独の検査キットを手元に置いておくとよいでしょう。
検体の採取法
基本的には新型コロナの検査キットと同じ採取法です。スワブを2センチメートルほど入れて、5回転します。合言葉は、「2センチ・5回転」です(図3)。きっちり2センチメートルでなくてもよいです。むしろ少し奥に入れてもらったほうが、検査精度が上がります。
そして、検体をしぼりとるようにして調整してください。このしぼりとるフェーズが大事です。
検査キットの種類によりますが、15~20分で結果が判明します。キットによっては、3滴ずつ2か所・合計6滴が必要な場合もあるため、初回の滴下時に「ドバッ」と出し過ぎないよう注意しましょう。
発症直後の検査は避ける
うまく検査できているかの判断は、コントロールと呼ばれる確認用ラインが出ているかどうかで判断します。キットによって使われているアルファベット等が異なるので注意してください。図4のようなキットの場合、「C」が確認用ラインです。このラインが出ることが判定に必要な条件です。
その後の判定はいたってシンプルで、新型コロナのラインが出ていれば新型コロナ陽性、インフルエンザのラインが出ていればインフルエンザ陽性、ということになります(図4)。両方出ていたら、重複感染かもしれません。
ここで知っていただきたい重要なポイントがあります。特にインフルエンザの場合、発症して間もない時期に検査すると、まだ陽性が検出されない可能性があり、誤って陰性と表示されることがあります(偽陰性)(2,3)(図5)。
そのため、可能であれば、発症12時間以降~翌日に検体を採取するほうがよいでしょう。また、もし検査が陰性であったとしても、感度が高い検査とは言えないことから、引き続き感染予防策を講じる必要があります。
まとめ
家族など身近な人が新型コロナと分かっていて、自分も同じような症状が出てきた場合、敢えて「同時検査キット」を使う必要はありません。この場合は、新型コロナのみの検査キットで十分です。
もし新型コロナとインフルエンザの同時流行時に発熱し、同時検査キットを使用する場合、発症12時間以降~翌日に検体をとるようにしましょう。
そして、購入する場合、厚労省の承認を受けた「体外診断用医薬品」「第一類医薬品」を選びましょう。すでに、「研究用」の同時検査キットがネットなどで出回っているので、ご注意ください。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症・季節性インフルエンザ同時期流行下における一般用新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス抗原定性検査キットの販売時における留意事項について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001022692.pdf)
(2) Kwon D, et al. Journal of clinical microbiology 2011; 49:437-8.
(3) Chu VT, et al. JAMA Intern Med. 2022; 182(7): 701-709.