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「マスク会食」の効果は? 会食における新型コロナの感染リスクが最も高い行動は

倉原優呼吸器内科医
内閣官房:感染拡大防止特設サイト(参考資料1より)

会食時の注意点

東京都などでは、10月25日から認証を得ている飲食店において、酒類提供の制限や営業時間の短縮要請などを全面的に解除することが正式決定されました。これにより、多くの飲食店で約1年ぶりに制限なしの営業が可能となります。

とはいえ、会食時の感染対策まで制限なしに撤廃というわけにはいきませんので、これまで通り継続が必要です。

現在、内閣官房の「感染拡大防止特設サイト」によれば、会食をする場合、以下のようなことに注意が必要とされています(1)。

■ポイントをおさえた会食

①換気が良く、座席間の距離も十分で、適切な大きさのパーティションも設置され、混雑していない店を選択する

②食事は短時間で、深酒をせず、大声を出さず、会話の時はマスクを着用する

③人数が増えるほどリスクが高まるため、できるだけ、家族か、4人までにする(※)

※たとえば、東京都では10月25日から4人以下としている人数制限も撤廃するが、5人以上で来店する場合はワクチン接種証明の掲示を求める方針。ワクチン接種証明は11月1日に配布が開始される接種記録を確認できる専用アプリを活用する予定。

■会食時に注意したいポイント

・飲酒をするのであれば、

①少人数・短時間で

②なるべく普段一緒にいる人と

③深酒・はしご酒などはひかえ、適度な酒量で

・箸やコップは使いまわさず、一人ひとりで

・座る時は、お互いの正面や真横を避け、斜め向かいに座る

・飲食する時だけマスクを外し、会話の際にはマスクを着用する

・換気が適切になされているなどの工夫をしている、ガイドラインを遵守したお店にする

・体調が悪い人は参加しない

とはいえ、これら全てを厳守しつつ会食するというのはなかなか大変なことです。その場で可能な最大限の感染対策を講じることが重要ですが、飲食・飲み会に行った時点で一蓮托生の部分が少なからずあると私は思っています。極限にリスクを回避する方法はもちろん外に出ないことなのですが、ずっと会食ゼロというのは確かに現実的ではありません。

飲食店側としては、アクリル板等の設置、座席間の距離の確保、手指消毒の徹底啓発、換気の徹底、1テーブル4人以内、などの策を講じる必要があります。ただ、これらが形骸化してしまって、アクリル板がきれいでないままの店もあります。フードコートは、小さな子どもがベタベタとアクリル板を触ってしまうことがあるため、注意が必要です(2)。

「マスク会食」の継続

さて、「マスク会食」の方法としては、耳ひも部分を触ってマスクを外し飲食物を口に運び、会話をする場合は耳ひも部分を触って再びマスクをつける、という方法が最も主流です(写真)。ウレタン・布・ガーゼマスクは感染リスクを低減させる効果が乏しいため、着用するマスクは不織布マスク一択です。

写真. マスク会食:神奈川県の啓発資料より(URL:https://www.pref.kanagawa.jp/documents/69206/poster_mask_20210629.pdf)
写真. マスク会食:神奈川県の啓発資料より(URL:https://www.pref.kanagawa.jp/documents/69206/poster_mask_20210629.pdf)

1回の食事でずっとこれをやり続けるにはそれなりの意志と慣れが必要です。マスクが適切に着脱できなかったり、ひも以外の部分を触ったりすることもあり、逆に感染リスクが上昇する可能性もあります。マスクの表面を持って顎マスクにして会食している人がいますが、あれは適切ではありません。

会食における新型コロナの感染リスクが高くなる行為

2021年6月9日~7月31日に、東京都内の発熱外来を受診した新型コロナワクチン未接種の成人753人が、受診前2週間にどういった行動を取っていたかを調べた研究結果が、10月6日の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告されました(3)。

飲み会・会食に参加していない感染リスクを1とすると、マスクを着用していなかったり席についた途端マスクを外したりした場合、約4倍近くにリスクが上昇することが示されました()。反面、「マスク会食」を遵守している場合、リスクは上昇しませんでした。

表. 会食・飲み会での自身(上)・相手(下)のマスク着用状況ごとの感染リスク(参考資料3を参考に筆者作成)
表. 会食・飲み会での自身(上)・相手(下)のマスク着用状況ごとの感染リスク(参考資料3を参考に筆者作成)

また、飲み会・会食に1回参加するたびに感染リスクが上昇し、この期間に3回以上参加すると約2倍のリスクになることが分かりました。飲み会・会食が2時間以上に及んだ場合、最大同席人数が5人以上になった場合、最大滞在時間が2時間以上になった場合も、感染リスクが大きく上昇しました。

以上のことから、「長時間かつ大人数で、マスクなし会食」というのが一番リスクが高い行為であることが分かります。まさにこれは、1年前に新型コロナウイルス感染症対策分科会から提言された、感染リスクが高まる「5つの場面」そのものです(1)。

ただ、上記データは新型コロナワクチン未接種者におけるリスクであって、上述したように、ワクチン接種者においては会食が緩和される方向にすでに舵が切られています

とはいえ、今後再び流行期に入るような場合、こういった場面を減らす必要があることには変わりありません。

「マスク会食」も重要ですが、これが感染予防の全てではありません。新型コロナワクチン接種、屋内でのマスク着用、アルコールや手洗いによる手指衛生、3密回避など、総合的な対策が重要になります。

(参考資料)

(1) 内閣官房:感染拡大防止特設サイト(URL:https://corona.go.jp/proposal/

(2) 気を付けたいフードコートでの新型コロナ感染リスク(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210817-00253648

(3) 第54回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年10月6日)(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00294.html

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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