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個人スマホが授業でOKなら、校内SNS相談ができる体制も作ってほしい

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長
匿名性の高い相談から始めることで面談につながりやすくなる(ペイレスイメージズ/アフロ)

都立高校でスマホを使って授業ができるようにしていくようです。

東京都は都立高校の生徒が個人で所有するスマートフォン(スマホ)を授業で活用できるようにする方針を固めた。2018年度からWi―Fi(ワイファイ)環境の整備を始める。

出典:日本経済新聞

現状では学習面での活用が検討されていくようですが、ひとつの提案として校内SNS相談ができる体制整備も進めていただきたいと考えます。いま、学校にはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、先生とは別に生徒の課題解決のため専門性の高い人材が配置されています。

生活指導や進路指導を先生だけで行うには十分な時間が確保できず、また生徒が抱える課題も学校内だけで解決できないものも多くあるからこそ、多様な人材が学校という場に集い、チームとなって生徒を支えています。

育て上げネットでも、多くの高校と連携して先生とともに生徒にかかわらせていただいています。もはや在学中は学校、中退や卒業した後は学校外で、という話ではなくなってきています。

就職でも進学でもない、高校卒業時の進路決定を認めた東京都立秋留台高校(工藤啓) - Y!ニュース

生徒が何か不安や悩みがあれば、先生でも、カウンセラーでも、話しやすい人間を選んで相談することができる。そしてそれを真摯に受け止め、寄り添いながら支えていく。その内容は学業や進路から、部活や恋愛、人間関係など多岐に渡ります。しかしながら、学生に限らず、自らの悩みを他者に相談するということは簡単ではありません。

身近にいる先生だからこそ話しづらいこともあれば、日常的に時間や空間をともにすることが少ないカウンセラーに話していいのかどうか判断がつかないこともあると思います。人生経験豊富なひとや、相談することで楽になったり、問題を解決できた経験が少なければ少ないほど、誰かに心中を打ち明けることに躊躇してしまう。

昨年、長野県教育委員会とLINE社、関西カウンセリングセンターが中学生、高校生にLINEを使った相談事業を行いました。

SNS相談、その裏舞台で見えた課題(ハフポスト)

長野県教育委員会が9月、通信アプリ「LINE」を使って中高生の悩み相談を受け付けたところ、2週間で1579件のアクセスがあり、このうち547件の相談に乗れたことが分かった。県教委が10日、発表した。2016年度の1年間に電話で寄せられた相談は計259件で、LINEの方がはるかに多かった。

出典:朝日新聞

この取り組みは、中学生や高校生にとって、SNSを活用した相談の窓口が、電話相談や対面相談への入り口になり得ることを示唆したのではないでしょうか。もちろん、自分のことが相手にわからないからこそ思い切って相談をしてみられる側面はあると思います。その一方で、誰に相談していいのかわからない。そもそも相談していいことかも悩むとき、「とりあえず、LINE相談で聞いてみる」という相談行動は対面や電話に比べて非常にハードルが低いようでした。

非常に重い相談もあり、その場合は専門の窓口情報を紹介したりしますが、LINEでの簡単なやりとりでスッキリしたという旨のコメントもありました(SNS相談における相談員の疲労度は非常に高いです)。

このハードルの低さは、不安や悩みが大きくなってしまう前に解決することが期待できます。また、SNS相談は誰にでもオープンにすることもできますが、QRコードを作って対象を限定して窓口を開くこともできます。今回、東京都がスマホで指導方法の改善や苦手分野の克服を目指すとともに、モデル校のなかで学校内や学校外のカウンセラーなどに相談ができる在学生限定のSNS相談窓口の設置も行うことで、これまで相談したくでもできなかった生徒を支えることができます。

いきなり対面相談から始めるのではなく、教室や自室からゆるやかにカウンセラーと関係性、信頼を作り相談室の扉をノックすることができれば、いま以上に「悩みがあればいつでもいってほしい」という想いの実現につながるように思います。ひとりでも多くの生徒が気軽に職員室や相談室に足を運ぶことができるよう、スマホ活用の範囲拡張を検討してください。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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