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こち亀の日暮熟睡男(ねるお)さんより長く眠る金融機関の「休眠預金」は誰のもの?

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

新聞紙面やネットで「休眠預金」という言葉がたくさん使われています。

そもそも「休眠預金」とは何でしょうか。

おカネを出したり入れたり全くしないまま10年以上、過ぎてしまった口座のことを、休眠口座と呼んでいます。残っているおカネが1万円以上の場合は、一度、銀行から預金者に通知がきます。それでも連絡がない場合、会計上は、銀行の利益となります。1万円未満の場合は、連絡をとらないまま、休眠口座として利益計上してしまうことも多くあります。

出典:NHK解説アーカイブス

休眠預金は毎年全国で800億円以上発生しているとみられる。その後、預金者からの返還請求があっても500億円ほどが残るという。今、残った分は会計上、金融機関の利益金として処理されている。

出典:日本経済新聞

こち亀日暮熟睡男(ねるお)さんですら、4年間しか眠りません。

それよりも6年長く、金融機関の口座に預けられたまま10年以上経ったお金のことです。これが毎年全国で800億円となり、返還請求分を除いても500億円が残り、金融機関の利益になっています。

休眠預金は日本だけではなく、海外でもあります。しかし、アイルランド、英国、韓国などでは金融機関の利益ではなく、社会的な事業に投資されたりしています。休眠口座の海外での活用例

このあまり知られていなかった休眠預金について、遂に日本でも動きが出てきたところで各メディアが取り上げるようになりました。

金融機関の口座から10年間出し入れがない「休眠預金」の社会的活用を検討する超党派の議員連盟「休眠預金活用推進議員連盟」が24日、発足した。社会的弱者に対する支援などへの民間資金活用の呼び水とするのが狙い。議員立法で今国会中の法案提出を目指すが、使途や配分方法をめぐり調整は難航も予想される。

出典:時事ドットコム

自分が預けていた預金が休眠預金になっても、申請により払戻しができるような仕組みを前提に、金融機関に眠る休眠預金を政府から独立した管理運用機関に資金移動をして活用していくという案です。

具体化はまだこれからだ。最大の課題は、この資金の使い道について広く国民の理解を得ることができるかどうかだろう。

元はといえば不特定多数の民間のお金。官の事業の穴埋めや、一部の団体の利益にしかつながらないような使い方では到底納得されない。

福祉や環境、震災復興など地域社会全体に役立つような分野にきちんとお金が回る仕組みにしたい。全国一律にばらまくようなことをしても効果は見込めない。地域の実情に詳しい人や各分野の専門家に行政なども加え、開かれた場所でどこにどれだけのお金を配るのが適切かを議論できる仕組みをつくってほしい。

出典:日本経済新聞

日経の記事にあるよう、もともとは不特定多数の民間のお金です。現在の状況はともかく持ち主がいます。その資金を運用するのは本当によいことでしょうか?そんな勝手なことは許さないという意見もあるかと思います。ただ現状では金融機関が利益として計上しています。それはどう思われるでしょうか。

休眠預金をどう社会的に活かしていくのか。本当に社会のために活用されるためにはどのような仕組みが必要なのか。これは国民の理解を得ることはもちろんんこと、それ以前に多様な意見が出され、議論されるべきトピックです。もちろん、そのためには休眠預金ってそもそも何?という具体的な内容がわからないと踏み込めません。

この休眠預金を知るため、議連創設のためのフォーラムが開催されるそうです。最初は迷いましたが、僕も出席することにしました。実は休眠預金についての知識が乏しく、表面的なことは知っていましたが、何か議論ができる状態ではないからです。情報提供までに以下、フォーラム概要を付記します。

事務局にお聞きしたら、だいぶ埋まりかけているそうですのでお早めに!

フォーラム概要は以下----

休眠預金活用推進議連 創設記念フォーラム

~休眠預金が創造する新たな共助社会~

年間800億円に及ぶ休眠預金を活用し、社会の課題を解決していこうというムーブメントが高まっています。その象徴として、4月下旬に超党派の議員連盟が結成されました。我々、民間ソーシャルセクター有志によって結成された「休眠口座国民会議」は、この議連結成を祝いつつ、ここから国民的議論を全国的に広げていき、真に国民のためになる法案になるよう、後押ししていきたいと思っています。

そのため、今回「休眠預金活用推進議連創設フォーラム」と称し、広くNPOセクター、金融セクター、ソーシャルファイナンスコミュニティ、メディアの方々と、そして議連参加議員の皆さんと共に議論できる場を設けました。

このお金で「どんな人達を助けていくのか」「どのようなことを大切にするのか」等、話し合っていきたいと思っています。こうした議論の積み重ねが、これから生まれる、世界最大の休眠預金を活用したソーシャルファンドのより良き姿に繋がっていくことを、心から願って。

== 詳細はこちら ==

日時:5月21日(水) 18時~19時半 (19時半から希望者のみの立食懇親会あり)

場所:日本財団(東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル)

費用:無料(懇親会は1人1,000円予定)

定員数:100名程度

■こちらからお申し込みください■http://goo.gl/iSWcXR

内容:

・司会

・ 坂之上 洋子(作家・経営ストラテジスト)

・基調講演

・「休眠預金の社会的活用の構想(仮)」 衆議院議員 山本ともひろ

・パネルディスカッション

・コーディネーター: 鵜尾 雅隆(日本ファンドレイジング協会)

・パネリスト:駒崎弘樹(フローレンス)・ 深尾 昌峰 氏(京都地域創造基金)・ 谷合 正明 議員(公明党)・民主党議員(調整中)・柿沢未途議員(結いの党)・みんなの党議員(調整中)・他

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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