ステマは何が悪いのか - ネット時代の消費者が知っておくべき法律のことを弁護士に聞いた

利用者を最優先に考え、広告表記の徹底を他社に先駆け発表したスマートニュース社

「ステマ」という言葉はよく知られています。それがいけないことであるのもよく知られているでしょう。

過去に社会問題になった例を挙げておくと、有名人がブログでお気に入りとして紹介した商品が、実はお金を貰って宣伝したものだったことがありました。

ステマ、つまりステルスマーケティングとは、消費者に宣伝であることを伝えずに宣伝することです。ある意味で消費者を騙すようなこの行為は、主にモラル上よくないとされてきました。

では、ここしばらくウェブを中心にメディアを賑わす「ネイティブアド」という言葉はご存知でしょうか。さらにホットなのは「ネイティブアドのPR表記なし」という言葉ですが、なにか呪文のようで一部の関係者以外はあまり興味をお持ちでないと思います。

ネイティブアドというのは、要するにウェブメディアのいつもの記事と見た目が同じの宣伝の記事のことです。よく見るメディアがオススメする商品が実は広告なのに、そこにもし広告(PR)という表記がなければ、それはステマになってしまうのはご理解いただけるでしょう。

ネイティブアドはウェブメディアで収益を上げる手法のひとつとして大きく注目されており、実際に多数の広告記事が、通常記事と同じ体裁で、あちこちのメディアに掲載されています。

ネイティブアドは、例えばスポンサー企業による専門的な知識が記事に提供されること、予算が増えるためにより大掛かりな企画ができることなどにより、消費者にも利益をもたらすように制作されるべきものです。

つまり、広告である旨の表記があれば、ネイティブアド自体に問題があるわけではないのですが、広告表記がないことで、ステマまがいの宣伝になってしまう、あるいはそう受け止められてしまうことがあり得ます。

このような問題について業界の内外からの指摘を受け、ネットで広告事業を展開する企業は、より消費者に信頼される自主規制および統一ルールの制定、その運用に取り組むことが急務になったというのが、最近のウェブメディアの内部事情でした。

ここでおそらく疑問に思われるのが、そもそもどうしてステマをするのか、ということではないでしょうか。ひと言で表現するなら、宣伝だと言わない方が宣伝効果が高い(と思われている)から、ということになり、そこに消費者の目線はありません。

ステマに代表される、モラルを逸脱したネット広告がはびこれば、消費者の利益を損なう可能性があります。その場合は、モラルの問題ではなく、法律上の問題も生じます。

そこで、現在のネット広告の問題と、問題のあるネット広告に消費者が騙されないために注意するべきことについて、法律の観点から、インターネット関連法務に詳しいGVA法律事務所所属弁護士の橘大地(以下橘)氏にお伺いしました。

――そもそも、ステマを規制する法律はあるのでしょうか

橘:景品表示法(以下「景表法」という)があります。これは不当な表示や顧客誘引を防止することにより、一般消費者を保護するための法律です。

景表法第1条では、以下のように定められています。

商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択 を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること

ちなみに、景表法は広告という定義自体を定めるものではなく、「表示」について定めています。みなさんが一般的に想像するいわゆる広告は、この「表示」に該当するため、広告にはこの景表法の適用があるのです。

ここで、表示に関しては、次のように定められています。

顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの

そして、最後の“内閣総理大臣が指定するもの”として「情報処理の用に供する機器による広告その他の表示」があり、ここにインターネット上の広告が含まれます。

――では、どんな表示が違法になるのでしょうか。

橘:景表法には大きく分けて、「不当な表示の禁止」と「過大な景品の提供の禁止」があります。

このうち「不当な表示の禁止」は、ウソや大げさな表現から消費者を保護するためのもので、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他、誤解されるおそれのある表示」の禁止があります。

優良誤認表示で禁止されているのは「品質・企画・その他の内容について、誤解を招く、または虚偽の表記」です。根拠となる調査結果がないのに、例えば「満足度○○」「リピート率○○」など数字を表記するのは景表法に違反するおそれがあります。

有利誤認表示で禁止されているのは「価格や取引条件に関して誤解を招く、または虚偽の表記」です。特定の企業や商品に有利なランキングサイトを勝手に制作し、他社に有利な情報を一切掲載しないのは景表法に違反するおそれがあります。

また、「その他」には不動産サイトのおとり物件の掲載など、消費者を誤解させるような行為が含まれます。消費者目線の法律なので、もし意図したものでなくても、結果として誤解を招いたら違反になることに注意してください。

商品の内容が定期的に更新されるような場合は、更新時に正確な情報に変更・修正がなされているか、とにかく消費者に誤解を与えないようにチェックを徹底する必要があります。

――景表法に違反するとどうなるのでしょうか。

橘:主に、指導、勧告、公表、措置命令という処分が下ります。また、昨年11月に景表法が改正され、課徴金という制度が導入され、施行後は、売上額の3%が課徴金として課される可能性があります。

――今のウェブメディアが抱える法律上の問題について教えてください。

橘:最も抵触可能性が高い法律は、著作権だと思います。確かにSNS上などでは、テレビ画像やキャラクターをアイコンにするなど、厳密に言えば著作権に違反するとも思える実態があります。

画像・動画コンテンツの価値が高まった時流であるからこそ、事業運営において、他者のコンテンツを利用するときは著作権法上の「引用」のルールを知ることが重要です。

他には、当然ながら景表法です。広告メディアであれば主にこの2つの法律です。特定の商品を取り扱うときには、薬事法などの知識も必要でしょう。課金型メディアであれば、特商法の表記なども必要になります。

――より信頼されるメディアになるために、ウェブメディアはどのように法律、そして消費者と向き合うべきでしょうか。

橘:情報が氾濫している時代であるからこそ、「誰が」勧めているかというところに価値がより置かれてきています。その「誰が」というのが「ブランド」であったり、「信頼」の実績だったりするのだと思います。

広告の価値とは、消費者に対して商品の訴求をし、その訴求効果があることに起因すると考えます。その訴求効果の本来的な財産はその商品への信頼であり、信頼の積み重ねが「ブランド」となります。

この本来的な財産である信頼を損なうものは、適法か違法かを置いておいて、そもそも広告価値ですら乏しいと考えられます。法律のルールが重要なのは勿論ですが、それよりも重要なのは消費者に信頼されることだと思います。

――最後になりましたが、消費者がステマに騙されないためにはどんなことに注意すればいいでしょうか。

橘:広告の性質上、自社の商品・サービスを宣伝し、広告効果を最大化させたいという心理自体は理解できますが、不当な表示やありもしない事実の表記などが一部で行われていることも事実です。

このような現状では、自分で店頭で商品を確認してみることが何より大切です。また、友人や家族の評価も聞いてみること、口コミ情報を公平に見てみることなども大切です。

――ありがとうございました。

前述したメディア業界で消費者保護のための統一ルールの制定をしている任意団体は、一般社団法人『インターネット広告推進協議会(JIAA)』です。

JIAAとはそもそも“インターネットが信頼される広告メディアとして健全に発展”するための任意団体であり、法律の枠内か否かに関わらず、自ら信頼されるメディアになるための取り組みがなされています。

参考:

ネイティブ広告に関する推奨規定 - JIAA

「ネイティブ広告」定義の真意 JIAAが語るこれからのメディアの在り方 - CNET Japan

今後、それぞれのメディアの特性・制限に即した適切な明示方法の実例が今後積み上がる中で、その運用方法にこそ着目している、と橘氏。他方、ウェブメディア側の自助努力もさることながら、本当にいいものを選択するという消費者側の姿勢も望まれそうです。

今回お話をお伺いした橘氏が所属する法律事務所はこちら