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大型連休とお金の流れを考察=データで読み解く紙幣循環

窪園博俊時事通信社 解説委員
大型連休に備え、ATMなどへの紙幣備蓄は着々と進展(写真:アフロ)

 来週からの大型連休を控えて各業界で対応が進んでいる。金融機関の場合は10日間も休みとなるが、一般的な関心は現金自動預払機(ATM)などの現金は十分かどうかという点であろう。実は連休対応の現金確保は恒例行事で、特に不安に思う必要はない。ちょうどよい機会なので、連休前後のお金の流れを考察しつつ、紙幣循環の様子をデータで読み解いてみたい。

現金大国の日本では、二大連休を軸に大量のお金が世の中を還流

 まず、わが国の「祝日(連休)」と「お金」に関する特徴を簡単に説明したい。お金がたくさん流通すると同時に、祝日が多い。わが国の祝日は先進国では最も多いとされ、4月末から5月上旬の「ゴールデンウィーク」と「年末年始」という大型連休がある。この二大連休を軸に大量のお金が波打ちながら世の中を還流するイメージである。

 世界ではキャッシュレス化が進み、日本も追随するが、それでもなお現金決済の比重は大きい。また、金融機関に預けず自宅で現金を保持するいわゆる“タンス預金”も増加しており、わが国は「世界的に突出した現金大国」(日銀OB)となっている。ちなみに、今月20日時点の発行銀行券の残高(市中にある紙幣総額)は108兆8705億4155万3千円に達し、なお増大傾向をたどっている。

連休前の銀行券は「発行超」、連休後は「還収超」に

 この膨大なお金は、「ゴールデンウィーク」と「年末年始」の連休前後にどう動くのか。連休前はATMなどへの紙幣備蓄でいったん世の中にお金が出回り、連休後は旅行・買い物などで使われたお金が民間銀行を経由して日銀に戻ってくる。専門用語としては、世の中に出回る紙幣の増加を「(銀行券の)発行超」、戻る紙幣が多いことを「還収超」と称している(以下、紙幣、お金を銀行券と表記)。

 毎年、二大連休の銀行券の出入りをこなしても「10連休は大変ではないか」と思うだろう。もちろん、大変だが、想像を絶するほどではない。実は、今回の大型連休に匹敵する出入りを最近こなしている。昨年末から今年初めの「年末年始」だ。昨年12月29日(土)から6連休となり、1月4日(金)の営業日を経て土日を迎えた。6連休の後、1日置いて2連休だ。

現金需要は「ゴールデンウィーク」より「年末年始」が圧倒的に多い

 

 ここで銀行券需要の推移を細かく見てみよう(下図参照、日銀のリポートより)。近年、銀行券残高は周期的に鋭角の波を発生させながら累増している。高い波は「ゴールデンウィーク」と「年末年始」で、後者の波が圧倒的に高いのは一目瞭然。年末商戦や新春セールなどで現金需要が非常に強いのだ。来週の10連休も「現金需要は年末年始ほどではないだろう」(日銀関係者)とみられる。

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 今週の銀行券動向を「日銀当座預金増減要因と金融調節」で確認すると、22日は4000億円、23日は5400億円、24日は5500億円(以上は確報)、25日は6800億円(速報)の「発行超」となった。累計で2兆円強が世の中に出た計算だ。26日も4700億円の「発行超」が予想され、累計は2兆6400億円に達する可能性が高い。

大型連休に向けて「4兆円」規模の銀行券が市中へ

 銀行券は先週から「発行超」が増えており、15日から19日の累計は1兆2300億円。今週分も含めると、4兆円近い銀行券が世の中に出回り、大型連休の決済に備えて待機する構図だ。「4兆円」は年末年始に匹敵する規模で、長めのゴールデンウィーク対応としては十分過ぎるほど備蓄されていると言えるだろう。

時事通信社 解説委員

1989年入社、外国経済部、ロンドン特派員、経済部などを経て現職。1997年から日銀記者クラブに所属して金融政策や市場動向、金融経済の動きを取材しています。金融政策、市場動向の背景などをなるべくわかりやすく解説していきます。言うまでもなく、こちらで書く内容は個人的な見解に基づくものです。よろしくお願いします。

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