家計資産「1000万円超」に驚くのは正しい=世間はそんなに金持ちではない

家計資産の実情はどうなっているのか。(ペイレスイメージズ/アフロ)

先週末、新聞やネットなどを通じて家計資産が「1078万円」になった、との記事をご覧になった方が多いだろう。記事では、この金額が前年からいくら減ったと解説されているが、それより読者は「世の中はそんなに金持ちが多いのか」と驚いたのではなかろうか。その反応は正しい。現実に近いとみられる金額は、はるかに少ない「400万円」だからだ。世間はそんなに金持ちではない、と考えられる。

「平均」という計算がくせ者、一般の感覚との乖離が大きい

報道の元ネタは、日銀が事務局を務める「金融中央広報委員会」の『家計の金融行動に関する世論調査』というアンケートだ。平成28年度の調査分が4日に公表されて、各メディアを通じて報道された。「1078万円」は、2人以上の世帯が保有する金融資産の平均金額である。この「平均」がくせ者であり、一般的な感覚に比べて資産額が随分と大きくなってしまう原因となっている。

なぜ「平均」が実勢から離れた金額になるのか。これは保有資産に偏りがあるためだ。例えば、5世帯のうち、4世帯は100万円、1世帯が1000万円を持っていたとする。合計1400万円を5世帯で割ると、平均資産は280万円。一部が多額の資産を保有するため、単純平均すると、大半の世帯には多過ぎる金額が導き出されるわけだ。その意味で、「1078万円」は計算として正しいが、実感からかけ離れた数字と言える。

では、実感に近い数字はどのぐらいだろう。これを導くには、各世帯の保有金額を少ない方(あるいは多い方)から並べて真ん中を「中央値」として採用するのが一つの方法だ。上記の例でいけば、いずれにせよ「100万円」が選ばれる。大方の世帯には納得のいく金額となる。金融中央広報委員会の調査でも、「中央値」が紹介されており、今回は「400万円」となった。かなり実感に近い金額だと言えるだろう(下の図を参照・金融中央広報委員会調査資料より抜粋)。

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資産ゼロとの回答が3分の1近くも

ただし、それでもなお「400万円は多過ぎる」と思う人はたくさんいるかもしれない。同調査では、保有金額ごとに回答者数が分類されている。それによると、保有資産「ゼロ」との回答が1081人に達しているからだ。回答総数は3497人で、3分の1近い人は自らを「無産状態(=金融資産を保有していない)」と認識しているのだ。しかも、資産ゼロとの回答は2007年以降、20%に近い水準から漸増傾向をたどっている(下の図を参照・同)。

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資産の平均値と中央値が恒常的にかい離する中、無産状態との回答がじりじりと高まっていることから推測するに、日本の世帯は貧富格差が大きく、しかも無産状態の層が少しずつ拡大することによって格差が広がりつつある、と考えられる。なお、ほとんど報道されていないが、1人世帯の調査をみると、平均資産は「822万円」に対し、実感に近い中央値はわずか「20万円」。恐るべき格差が生じている格好だ。

1989年入社、外国経済部、ロンドン特派員、経済部などを経て現職。1997年から日銀記者クラブに所属して金融政策や市場動向、金融経済の動きを取材しています。金融政策、市場動向の背景などをなるべくわかりやすく解説していきます。言うまでもなく、こちらで書く内容は個人的な見解に基づくものです。よろしくお願いします。

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