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12月と1月の日銀金融政策決定会合後の植田日銀総裁会見の違いにも注意したい

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 12月19日の金融政策決定会合後の記者会見で、植田総裁は次のように述べていた。

 「基調的な物価上昇率が、2025 年度にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まってきているとは思いますが、先行き、賃金と物価の好循環が強まっていくか、なお見極めていく必要があると判断しています。」

 1月23日の金融政策決定会合後の記者会見で、植田総裁は次のように述べていた。

 「先行き、賃金と物価の好循環が強まり、基調的な物価上昇率が 2%に向けて徐々に高まっていく確度は、引き続き、少しずつ高まっていると判断しました。」

 「基調的な物価上昇率が 2%に向けて徐々に高まっていく確度は、引き続き、少しずつ高まっている」との表現はすでに12月の会見の時点で使われていた。

 しかし、12月の会見では、そのあとに「なお見極めていく必要があると判断している」と慎重な見方を示していた。

 これに対して1月の会見では、下記のように続けている。

 「もう少し具体的には、物価から賃金への波及の面では、春季労使交渉に向けて労働組合側からは昨年を上回る賃上げを要求する方針が示されています。また、大企業を中心に、経営者から賃上げに前向きな発言もみられています。更に、賃金から販売価格への波及も、サービスを含む価格が緩やかな上昇傾向にあるということや、先日の支店長会議での報告などを踏まえると、賃金から販売価格への波及も少しずつ広がっていると考えました。この先も、春季労使交渉の動向を含め、各種のデータ、情報を丹念に分析し、賃金と物価の好循環が強まっていくか確認していきたいと思います」

 春季労使交渉の動き、大企業経営者などの発言、そして支店長会議での報告などを踏まえて、賃金から販売価格への波及も少しずつ広がっていると判断するなど、12月に比べて前向きの判断をしていたといえる。

 1月23日に発表された展望レポートでは下記の表現が加わったことで、日銀が政策修正に前向きとなったとの見方が強まった。

 「先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。」

 上記でみてきたように、この表現はすでに12月の総裁会見でも使われていた。しかし、そのあとの慎重な表現によって、政策修正の可能性が打ち消されていた格好となった。

 それに対して、1月の総裁会見では、その確度が高まったことを説明するなど、こちらはむしろ政策修正の可能性を意識させる発言となっていた。

 これにより、12月と1月の会見の内容の微妙な違いは、1月の日銀支店長会議などで確度を高めるあらたな材料が出てきたためとも捉えることができるかと思う。

 しかし、現実には総裁会見や議事要旨、展望レポートには決して記載されないようなプレッシャーが12月には働いていた可能性も否定はできない。12月の会合には新藤義孝経済財政政策担当大臣が出席していた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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