途中で再び風向きが変わったような日銀
9月17日付読売新聞の「日銀 金利動向点検へ」と言う記事のなかで気になる箇所があった。
「日銀は市場参加者による取引で、より自立的に金利が決まる環境に移行したい考えだ」
この金利とは長期金利を指している。日本の長期金利は0.7%台に上昇しているが、日銀としては、金利形成を市場に委ねるとしている。あくまで1%以内であればということにはなるが。
7月の金融政策決定会合での声明文では「長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していく」ともなっており、それに即したものともいえる。
さらに9月17日の読売の記事では、次のような記述があった。
「現状、急激な金利上昇がない限り、金利を抑え込むために計画外に国債を買い入れる臨時オペは行わない方針だ」
これにはやや意外感があった。昨年はあれほど強力に、ある意味意地になって指値オペなどを駆使して長期金利上昇を抑制していたが、まさに様変わりである。
この場合の「急激な金利上昇」とはどのような状況を指すのか。
大昔、一日で長期金利が1%近く跳ねたことがあったように記憶しているが、そんな状況はさすがに現状は起きづらい。0.05%とか0.10%程度跳ねれば臨時オペをオファーするのであろうか。
為替介入についても、その目的は為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることにあると日銀はサイトでコメントしている。
「為替介入(外国為替市場介入)とは何ですか? 誰が為替介入の実施を決定し、誰が為替介入を行うのですか?」
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/intl/g19.htm
その急激な変動は、言葉通り大きくドル高円安が一気に進んだ場合なのか、それとも水準も意識されているのかは、長期金利にしてもドル円にしても、実のところははっきりしない。
金利に戻ろう。日銀は9月の会合では、大方の予想通りの現状維持としたが、9日の読売新聞による日銀総裁の単独インタビュー記事の内容からみて違和感があった。
西村康稔経済産業相は19日の閣議後会見で、日銀の金融緩和は「時間を買う政策」だとの見解を改めて示した上で、世界的に物価が上昇する中で緩和は「どこかで終了し平常化していく」と述べていた。
どうもどこか途中で再び風向きが変わったようにも感じた。これには岸田首相が経済対策を打ちだしたことや「減税」と言う言葉を使い出したことにも無縁ではない気がする。
西村経済産業相は、日銀の金融緩和は「時間を買う政策」だといったが、時間を引き延ばすほど、見えない副作用が膨れ上がる懸念もある。政策は金融にしろ財政にしろ、経済や物価の実体に合ったものとしないと矛盾が拡がりかねない。