日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)の正常化すら慎重か
日銀の金融政策決定会合を控え、様子見気分も強まり、債券市場、株式市場ともに値動きが比較的小さくなっている。しかし、これは嵐の前の静けさなのかもしれない。
外為市場ではじわりじわりと円安が進行している。ドル円は135円が目先の壁となっているが、ユーロ円をみると24日に一時148円47銭と2014年12月以来の高値を更新した。
27日、28日の日銀の金融政策決定会合は、植田体制となって初の会合となる。黒田体制から何かしらの変更点はあるのか。
これについてはすでにメディアがいろいろと報じており、植田日銀は慎重なスタートとなるのではとの見方が強まっている。
「日銀の植田和男総裁は24日、衆院・決算行政監視委員会第1分科会で、基調的な物価見通しが改善しイールドカーブ・コントロール(YCC)の正常化が可能になるためには、物価見通しが2%前後となるだけでなく、見通し実現の確度が必要との認識を示した」
この2%が何の2%なのかは良くわからない。日銀の物価目標の全国消費者物価指数(除く生鮮)の前年同月比2%の伸びならば、数値上はすでに達成している。しかも一時4%台に乗せたばかりでなく、この1年あまり、前年比2%を超す伸びが続いている。
ただし、2%はグローバルスタンダードというが、日本では1%あたりが適正との見方もある。現在は世界的な物価上昇もあり、遅ればせながら賃金も上昇しつつあるが、日銀は現在の足下の数値は無視し、このまま永続的な2%という物価の維持を望んでいるとしたら、国内物価がかなりの高水準となることを望んでいるということにもなりかねない。
つまり、植田総裁の衆院での発言をそのまま鵜呑みにすれば、イールドカーブ・コントロールの正常化は半永久的にできないという可能性まで秘めている。
むろん、イールドカーブ・コントロールの正常化は市場へのインパクトが大きいので前もってその可能性を示唆することは考えづらいため、上記の発言はその可能性を意識させないためとみれなくもない。しかし、本音はどうも、イールドカーブ・コントロールの正常化を含めて行いたくないようにすら見受けられる。
これが今回の金融政策決定会合でも明らかになれば、円安があらためて進行してくる可能性がある。
欧米の長期金利もFRBやECBの利上げ継続の可能性を意識して再び上昇基調にあり、日本の10年債利回りが0.5%に張り付く可能性も当然ある。10年370回債も日銀がすべて買い切ってしまうような事態となれば、債券市場の機能の低下が継続することになる。日本の長期金利が再び正常に形成されない事態となる懸念が強まることも予想されるのである。