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債券先物は将来の日銀のYCC修正も意識した動きに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 3月9日に債券先物の中心限月が3月限から6月限に実質的に移行した。正式には当日とナイトセッションの出来高が逆転した翌日から正式な中心限月移行となる。しかし、商い上は出来高が逆転したタイミングで中心限月が移行したとみなされる。

 昨年12月限の実質的な中心限月の後退もそうであったが、今回も取引最終日の2営業日前となっていた。それまでは前営業日が多く、2営業日前となっていたのはかなり遡る必要があったはずである。

 今回は9日、10日に日銀の金融政策決定会合を控えていることもあって、10日に中心限月移行となれば先物がやや使いづらくナルト予想された。特に海外投資家は日銀の今後の政策調整を睨んだ動きをしていたこともあり、9日以前での中心限月移行の可能性が高いとみていた。

 13日に最終売買日を迎える3月物から6月物の価格を引いた限月間スプレッド(較差)は9日、一時1円50銭と前日から16銭拡大した。スプレッドの拡大は限月交代に向け3月物を買い戻し、6月を売り建てる取引の増加を示す(9日付ブルームバーグ)。

 これはショートロールとも呼ばれるものであり、3月限の先物のショート(空売り)の建玉を6月限に移すものであり、3月限買い戻し、6月限新規ショートの商いが膨らんだ。その結果、3月限と6月限の価格差が拡大した。

 理論値からみれば、やや6月限が売られ過ぎとの見方ができるかもしれないが、これは今後の日銀の政策調整、つまりイールドカーブコントロールの修正を見込んだ動きでもある。

 修正案としては長期金利コントロールのレンジを0.75%なり、1%に拡大するとの見方がある。0.75%ではいずれ0.5%に拡大した際と同様のことが起きる可能性が高い。1%でも起きる可能性はないとはいえない。

 対象を10年から5年、2年にするという案もある。それはつまり10年債の利回りが正常化することとなり、また日銀の指値オペもこれでなくなる(はずである)。これによって債券先物も下落する可能性が高くなる。

 そのようなワンクッションを置くより、さっさとYCCそのものを撤廃してほしい。しかし、どうも新しい執行部の顔ぶれをみても、それをすんなり決断できないようにも思われる。審議委員もしかりである。

 ということで、債券先物はその政策修正を意識しての動きとなっていたのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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