苦情報告相次ぐ「仕組み債」、個人が買ってはいけない理由
金融庁と証券取引等監視委員会は苦情が相次ぐ「仕組み債」について、メガバンクや地域銀行、証券会社などの販売実態を総点検する。安全なイメージの強い債券にもかかわらず、デリバティブ(金融派生商品)を組み込んだハイリスク商品で、数千万円単位で含み損が発生する個人投資家もでている。監視委は地銀子会社を中心に重点的に立ち入り検査へ入り、金融庁も金融商品取引法上、問題があれば銀行検査に入る方針だ(24日付日本経済新聞)。
個人向けの仕組み債については、一般の社債に比べ、高格付け・高利回りであることが多く、大変魅力的に見える。ただし、利回りの高さだけで購入を判断するのは大変危険である。
仕組み債は何かしらの条件付きで利子が高めに設定されている。その何かしらの条件をしっかり確認することが重要で、利率の高さもそのリスクに見合ったものであるのかを確認することが必要となる。そのリスクそのものが理解できれば問題ないが、よく分からないのであれば、仕組み債には手を出すのはやめるべきである。現在の超低金利時代にあり、極端に有利な金融商品というものはない。
仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたオプションなどのデリバティブにある。デリバティブに仕掛けられた時限装置が働かなければ、それなりに高い利子を享受できるが、何かがあった時には損失が桁違いに膨らむことがある。そのリスクを完全に理解するには、オプションなどへの理解とともにリスクに見合った条件設定なのかも見分ける必要があるが、これはプロですら、なかなか難しい判断となる。難しいだけでなく、大きな損失を被る危険性があるため、特に個人にはあまり推奨はできない。
仕組み債のリスクそのものが理解できれば問題ないがと書いたが、このリスクを販売者が完全に理解していることも考えづらいものもある。それだけ仕組み債が複雑怪奇となっており、その分、制作サイドや販売サイドは手数料相当分を享受できる仕組みとなっている。
購入者側としては、そのリスクはさておき、利回り水準が魅力であるため、つい購入してしまうこともあろう。しかし、その利回りの高さこそがリスクの高さを示しており、少なくとも個人はリスクが理解できないのであれば仕組み債を購入してはいけない。
ただし、法人が購入する場合には、投資の配分先として債券での運用、しかも一定の利回り水準が必要で、仕組み債に投資せざるを得ないケースもあるかもしれない。しかし、これもハイリスクハイリターンの運用とならざるを得ない。