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ペロシ米下院議長の台湾訪問で地政学的リスクが高まる。なぜこのタイミングなのか、そしてペロシ氏とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ペロシ米下院議長は台湾を訪問。現職の下院議長としては1997年のギングリッチ氏(共和)以来25年ぶりとなる。

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)がペロシ氏の訪台計画を報じたのは7月18日。FTによると、中国は米国に対し水面下でこれまでより強い態度で反対の意向を伝達してきた。

 バイデン米大統領は20日、記者団にペロシ氏の訪台について「米軍はいい考えだと思っていない」と表明した。公の場で計画を認めたことで政権内の足並みの乱れが露呈し、予想された中国の激しい反発を招いた面があるとこちらは26日の日本経済新聞が報じていた。

 中国国防省の報道官は26日の記者会見で「米国側が独断で強行すれば、中国軍は決して座視せず、必ず強力な措置を講じる。国家主権と領土を断固として守る」と明言、中止を迫っていた。

 ペロシ氏の訪台を受けて、米中の緊張が高まることが予想され、2日の東京市場では地政学的リスクを意識したリスク回避の動きが強まった。3日の米国株式市場も下落したが、米債はFRB高官が相次いでインフレを強く警戒する発言をしたことで価格は急落し、利回りが急上昇した。これを受けドル円は2日の130円台から133円台に上昇し、リスク回避の動きは一時的なものとなっていた。

 現状、ペロシ米下院議長による台湾訪問の目的ははっきりしていない。タイミングとしては最悪との見方があるが、あえてこのタイミングを狙ったかのような台湾訪問でもある。ただし、米議会の夏休みに合わせただけとの見方もある。

 ナンシー・パトリシア・ペロシ氏は民主党所属でカリフォルニア州第8区から選出。米国史上最初の女性の下院議長である。ペロシ氏は中国政府の人権抑圧政策に厳しい態度をとっており、天安門事件やチベット動乱における中国政府の行為を強く批判してきた。1991年には北京の天安門広場を電撃訪問し、民主化を訴える横断幕を掲げていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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