以前に米国のミシシッピー川の水位をみて、日本の債券市場が動いた例を紹介したことがあった。

 昔の話になるが、ミシシッピー川の水位が低下しているというだけで、日本の債券が売られたということが実際にあった。当時、円債は米国債の動向と非常に連動性が高かった。その米国債は非常にインフレに敏感になっており、インフレを示す代表的な指標としてCRBインデックスという指標が注目されていた。

 CRBインデックスは穀物相場に比重が大きくかけられていた。穀物相場は当然、天候等に左右されやすい。アメリカの穀倉地帯はミシシッピー沿岸となる。そのミシシッピー川の水位が低下しているということは、雨が降らずに水不足ということを示すことになる。そのために穀物の収穫量が落ちる、そしてCRBインデックスが上昇、米国債が売られ、日本の債券も売られるといった、まさに風が吹けば桶屋が儲かる的な発想であった。

 これと同様のことが、29日の日本の債券市場で起きたのである。ドイツの、とある州の消費者物価指数が日本の債券を動かしたのである。

 ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州の消費者物価指数が日本時間の29日の13時半に発表された。この数字が前回からかなり鈍化した。

 何故、ドイツの一部の州の消費者物価指数が注目されていたのか。この日はドイツ全体の消費者物価指数速報値の発表が予定されていた。それの先行指標とされていたとみられる。日本で言えば東京都区部の消費者物価という立ち位置か。

 ドイツの消費者物価の上昇が鈍化となれば、ユーロ圏の物価も鈍化が予想され、その結果としてECBの金融政策の正常化を加速するとの観測が和らぐ。

 東京時間の13時半頃は欧州の国債の取引はほとんどない。しかし、米国債の取引は行われている。その米国債が、欧州の国債の利回り低下を先取りして、東京時間に利回りが低下したのである。

 28日の米10年債利回りの引けは3.17%あたりだったのが、29日の東京時間の午後に3.13%に低下した。これをみて日本の債券先物も買い戻しの動きを強めたのである。

 ちなみに29日に発表された6月のドイツ消費者物価指数速報値は、EU基準では前年同月比プラス8.2%に鈍化していた(5月は同プラス8.7%)。