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電気料金の上昇が止まらない、どうして?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 世界で電気料金の上昇が止まらない。火力発電に使う液化天然ガス(LNG)などの価格高騰が主因だ。2021年度のエネルギー白書によると22年3月の電気代は19年1月比で欧州連合(EU)で4割増、米国は1割増となった。日本も1割増で価格転嫁が進み始めている(8日付日本経済新聞)。

 現在の日本の電力は、火力発電が72.9%、水力発電が11.6%、原子力発電が11.6%、新エネルギーが6.3%となっている(関西電力のサイトより)。

「2022年最新 火力発電に使用される燃料の種類について解説」(関西電力グループ)

 火力発電の燃料別の割合としては石炭が47.2%、液化天然ガスが41.2%となっている。石油が2.0%と少なく、ほぼ石炭と液化天然ガスで9割程度を占めている(2021年9月時点)。

 関電のサイトによると、前年(2020年)は石炭より液化天然ガスの発電量が多かったが、近年、世界の各地域でLNGの価格が高騰していることで、国内での需要が安価な石炭に傾いているとか。

 石炭の主な輸入先はオーストラリアが65.4%を占めている。液化天然ガスもオーストラリアが32.6%とトップとなっているが、こちらはロシアが7.8%を占めている。

 世界の石炭火力発電所の2021年の発電量が20年比9%増の10兆422億キロワット時と過去最大になったことがわかったとこちらは3日付で日本経済新聞が報じていた。

 日本だけでなく世界的に需要が増加している。

 電気料金は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻前から上昇傾向が続いていたが、侵攻を背景に火力発電の燃料となる液化天然ガスや石炭の価格がさらに高騰した。

 中部電力は1か月ごとに一般家庭の電気料金の平均価格を出していて、6月は8256円となっていた。去年6月は6628円だったため1年前に比べて1600円あまりの上昇となってた(6日付NHK)。

 電気料金の上昇は物価全体に影響を与えることとなる。ロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー価格をさらに上昇させることとなり、日本でも物価の高騰は予想以上に続く可能性を意識する必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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