むかし、ミシシッピー川の水位低下で日本国債が売られた理由
むかし、むかし、日本の債券市場関係者が米国ミシシッピー川の水位を気にしているときがあった。どうしてミシシッピー川の水位を気にしていたのか。
当時も物価動向が債券市場にとり大きな材料となっていた。その物価動向を知る上で、市場参加者がチェックしていたものにCRBインデックスがあった。CRBインデックスとは米国のNYFEで取引されている代表的な商品先物指数のひとつである。
つまり商品価格が上昇し、それにより物価が上がることで米債が売られ、円債も売られるという相場が続いていたのである。
そのためにCRBインデックスの動きが注目された。そのCRBインデックスでは穀物の比重が高く、米国の穀倉地帯であるミシシッピー地方の穀物の生育状況が気になった。それに大きな影響を与えるミシシッピー川の水量が気になったのである。つまり干ばつによる影響が気にされた。
これにより風が吹けば桶屋が儲かる的な発想となり、ミシシッピー川の水位が低い、干ばつの恐れ、穀物収穫減少かとなり、CRBインデックスが上昇し、米債が売られ、円債も売られるという流れとなっていた。
そんな話は物価が良く動いていた大昔の話かと思いきや、ここにきて再び米国の穀倉地帯の動向が気になり始めているようである。
ラニーニャ現象の長期化が世界の食品市場を揺らしている。米国では中西部の長雨や西部・南部の干ばつをもたらし、トウモロコシなどの作付けに影響している(26日付日本経済新聞)。
インドでは熱波で小麦が不作になるとの観測もあるが、ロシアによるウクライナ侵攻もウクライナが穀倉地帯にあることで大きな影響を与えうる。
その上にエネルギー価格の上昇による運送費などのコスト増なども加わり、今後の穀物価格が世界情勢に大きな影響を与えかねない。
いまでもCRBインデックスは存在しているが、当時ほど債券市場関係者による注目度は高くはない。しかし、日本でも今後の物価の動向は非常に気になるところである。この穀物価格の動向も日本の物価に当然ながら影響を与えうることで注意が必要となろう。