2014年3月にもあったウクライナ情勢の緊迫化
ウクライナ情勢が緊迫の度を強めている。歴史は繰り返されるとも言われるが、今回と同様の事態は2014年3月にも起きていた。2014年3月4日に私は次のようなコラムを書いていた。
「短期筋にとって仕掛けやすい地合に」
ウクライナ情勢が緊迫化している。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのロシア系住民を保護するための軍事介入について上院に承認を求め、1日に上院はこれを承認した。これ受け、ウクライナのヤツェニュク首相は「これは脅しではない。わが国への宣戦布告だ」と語り、ウクライナは2日に戦闘準備態勢に入った。ロシア軍はすでに、戦闘はしていないものの海軍基地のあるウクライナ南端のクリミア半島に部隊を展開し、事実上支配下に治めている(以上ロイターの記事より)。
こうしたなか、米国のケリー国務長官(当時)は、ウクライナの主権や領土の保全を支持する姿勢を強調するため、4日に首都キエフを訪れ、暫定政権の幹部らと会談することになった。さらに欧州連合は3日に緊急の外相理事会を開くと伝えられた。加えて、欧米諸国は、6月にソチで開かれる主要8か国(G8)首脳会議のボイコットを検討する方向となった。日本もとりあえず欧米諸国に同調はするようである。
ウクライナ情勢が緊迫化している最中にあり、1日には中国雲南省昆明市の昆明駅でテロ事件が発生し、北朝鮮は短距離ミサイル2発を発射した。さらには米国の首都ワシントンは大寒波に襲われ、米政府はこの悪天候を理由に首都ワシントンの政府機関を閉鎖するそうである。もちろんこれらとウクライナ情勢には直接の関係性はないと思われるが、リスク回避の動きを強めそうな要因が次々に出ていることは気になるところ。
先週末の米国市場でも多少なり影響は出ていたが、週明けの東京市場ではリスク回避の動きがさらに強まりつつある。3日の外為市場では安全資産として円が買われ、ドル円は101円30銭近辺、ユーロ円は140円割れとなった。日経平均は下落してのスタートとなり、債券先物は買い戻しが先行した。東京時間で米国債は買われ、ウクライナ情勢の緊迫化により天然ガスや原油価格が上昇してきている。
ウクライナの地政学的リスクが金融市場に影響を与えつつあり、この問題がさらに深刻化する懸念もある。ロシアの出方次第では、ウクライナの分裂を招く懸念があるとともに、ロシアとその動きを支持する中国に対し、欧米諸国との関係に亀裂が走ることもありうる。このように政治を巡るパワーバランスの変化に日本はどう対処するのか。やや及び腰ともいえる日本政府の対応如何では、これも市場に大きな影響を与えかねないものとなる(以上、2014年3月4日の「短期筋にとって仕掛けやすい地合に」より)。
結果としてこの際の金融市場への影響はそれほど大きなものではなかった。従って今回も同様に短期筋にとって仕掛けやすい地合とはなっているが、これによって金融市場がパニック的な動きとなることは現状、考えづらい。
2014年3月といえば日銀の量的・質的緩和政策を決定してから約1年後でもあり、この月の消費者物価指数(除く生鮮)はいろいろな条件が重なり、前年同月比プラス1.3%に上昇していた。