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FRBのテーパリング加速観測の背景にバイデン政権の支持率低下も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米労働省が3日に発表した11月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月より21万人増加した。11か月連続で増加したものの、市場予想の55万人増は下回った。10月分は53.1万人増から54.6万人増に上方修正された。

 11月の失業率は4.2%と10月の4.6%から改善し、2020年2月以来の低水準となった。時間当たり平均賃金は前月比0.3%増、前年同月比4.8%増となった。平均時給の伸びは鈍化した格好ながら高い水準にあることも確かである。

 非農業雇用者数だけをみると雇用は予想されているほど改善を示していないようにみえる。しかし失業率は低下しており、労働参加率も上昇したことで、FRBの考え方を変えさせるほどのものではない。

 それではFRBはどのような考え方をしているのか。次回のFOMCは12月14、15日に開催される。

 パウエル議長は11月30日の上院銀行委員会での証言で、経済が堅調でインフレ高進が来年半ばまで持続すると予想される中、次回のFOMCで大規模な債券買い入れプログラムの縮小加速を検討すべきと述べた。

 ただし、注意すべきはこの証言があったタイミングで、オミクロン株の感染が確認されていたことである。12月1日にファウチ国立アレルギー感染症研究所長がオミクロン型の感染者が米国で初めて確認されたと明らかにしていた。

 パウエル議長は物価上昇要因に関し、一時的との文言を撤回する時期に来ているとも述べた。これについては実行される可能性は高いとみている。

 今回のパウエル議長の物価上昇に関する発言の修正の背景には、バイデン政権の意向を意識した可能性も高い。ここにきてのバイデン政権の支持率の低下はインフレへの不満が背景の一因となっていた。

 パウエル議長による急転直下の政策転換は、ジョー・バイデン米大統領が再任を発表した直後のタイミングで起こったとの指摘もあった(ウォールストリートジャーナル)。

 このためインフレ退治にFRBが早めに動くことが期待された可能性もある。ちなみに現在のイエレン財務長官は前FRB議長である。

 とはいえ、オミクロン株の世界的な感染拡大とそれによる経済への影響も無視はできない。来週のFOMCまでの間に仮に米国内の感染拡大が経済や物価に影響を及ぼす可能性が出てきた際には、テーパリングの加速については検討に止める可能性もありうるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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