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英国でVISAのクレジットカードが、アマゾンで使えなくなるのはどうしてか。日本では大丈夫か。

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 17日の米国株式市場は下落し、ダウ工業株30種平均は前日比211ドル17セント安となったが、その下落要因のひとつがクレジットカードのビザ(VISA)が大幅安となったことによる。VISAだけでダウ平均を70ドル近く押し下げた格好となった。いったいVISAに何かあったのか。

 米アマゾン・ドット・コムは17日、英国のサービスで米VISAのクレジットカードでの支払いをできなくすると明らかにした。英国の利用者に対して2022年1月19日に取り扱いを停止すると通知した。理由について「VISAのクレジット決済手数料が高いため」と説明している(18日付日経新聞電子版)。

 アマゾンでの決済は、通常はクレジットカードが使われている。その大手であるVISAに対して、アマゾンが挑戦状を叩きつけた格好ながら、特にVISAカードを利用している英国在住者にとっては困った事態ともなりかねない。

 取り扱い停止の対象はあくまで英国内で発行されたVISAのクレジットカードとなる。マスターカードなど他社のクレジットカードや、VISAを含むデビットカードは引き続き利用できる。アマゾンは該当する顧客には支払手段の登録情報を変更するよう呼びかけたそうである。

 クレジットカードを複数持っている人も多いが、管理上、ひとつに絞っている人も多いはず。アマゾンでの購入にはそのメインのカードを使っていることが多いとみられ、今回の措置は混乱を招きかねない。

 小売業の決済助言会社CMSイメンツ・インテリジェンスと英国小売協会(BRC)によれば、英国が欧州連合(EU)を離脱したことにより双方間で取り決められていた手数料上限が撤廃され、カード会社は国境を越えた取引の手数料を引き上げられるようになった(18日付ブルームバーグ)。

 アマゾンの広報担当者は「最高の価格を顧客に提供しようと努力している企業にとって、カード決済のコストは障害であり続けている。技術の進歩につれて下がるべきなのに高止まりし、上がってさえいる」と述べていたが、英国ではVISAのクレジット決済手数料が引き上げられ、それがアマゾンとの衝突を招いた可能性がある。

 いまのところ、同様の動きがすぐに日本にも波及するようなことはないと思われる。しかし、今後の動向には注意する必要はある。

 アマゾンはVISAとの関係悪化を背景に、人気が高い共同ブランドのクレジットカード提携先をマスターカードに切り替えることを検討しているとの報道もあった。アマゾンは既にシンガポールとオーストラリアで、VISA経由の決済に小幅な追加課金を始めた。こうした対立の背景にあるのは、VISAのカード受け入れによる支払いを減らしたいというアマゾンの意向だとか(18日付ブルームバーグ)。

 VISAの広報担当は「当社はアマゾンと長年の関係があり、解決に向けた努力を続けていく」とコメントしている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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