アフガニスタン情勢が市場のリスク要因に、バイデン米政権への圧力にも
アフガニスタンで政府軍と戦闘を続けてきた反政府武装勢力、タリバンの幹部は、日本時間の16日朝早く、勝利を宣言。ガニ大統領は出国し、政権は事実上、崩壊した(16日付NHK)。
米国のバイデン大統領は7月8日に、ホワイトハウスで記者会見し「次の世代のアメリカ国民をアフガニスタンとの戦争に送り込むわけにはいかない」と述べて、8月末をもって撤退を完了させると発表した。
米国は2001年の同時テロを受け、首謀者らをかくまっているとして当時、タリバンが支配していたアフガニスタンに軍事介入した。その後20年を経て発表通り、アフガニスタンから撤退を決定したのである。米軍が今月末までに撤退を進める中、反政府武装勢力タリバンが予想以上に攻勢を強め、支配下地域を拡大させて、首都カブールまで進攻し、政権が崩壊した。
バイデン大統領は記者団からの、タリバンが国を制圧することは避けられないのではないかという質問に対し、「アフガニスタンには世界中のどの軍にもひけをとらない、30万人の軍がいる。これに対して反政府武装勢力タリバンは7万5000人であり、国を制圧されることはない」と答えていた(7月9日付NHK)。
30万人の軍というが現実には軍として機能していなかった面もあろう。それでも想定以上の速さのタリバンの進攻によって、中東情勢が一気に緊迫化した。それだけではない。米軍を撤退させた米国のバイデン政権に対する批判が強まることも予想される。
16日の東京株式市場は大幅な下落となったが、アフガン情勢が市場のリスク要因になったことも予想される。東京時間での米株価指数先物も下落していた。
13日の米長期金利はミシガン大学が13日発表した8月の消費者態度指数が約10年ぶりの低水準になったことなどから大きく低下し、1.3%割れとなった。この米債高もあり、16日の債券先物も買い戻されたが、アフガン情勢を受けたリスク回避の動きも加わってきたように思われる。外為市場では円高が進み、ドル円は109円40銭台に。これもリスク回避の動きかとみられる。